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クリエイティブマネジメントのススメ8

CMには構造がある・・・何それ?

今日のお話は、自分として結構シリアスなのですが・・・
本当かいな?と信じてもらえないコトになるかもしれません。
このタイトルにある“構造がある”と言う事に気が付いたのは
クリエイティブマネジメントのススメ2と7で紹介した、休売現象を
起こしたTVCMを分析して見つけた、発見したモノでした。
その休売現象を起こしたCMのカットを30秒・15秒に分けて全部
並べて貼り付けて、そこにナレーションなどを書き加え、
クリエイティブ調査で行われた映像の好き嫌い指数を付き合わせ、
お客様がどの映像と言葉に反応しているのか分析に想像を
働かせたのです。

note8用写真

ちなみに、そのTVCMの最後の商品カットです。
(現在、この商品は終売しています)

その分析と想像を働かせて気が付いたコトをお話するのですが、
その前に、大前提として、このCMは新商品を紹介する広告です。
パウダードレッシングという、ドレッシングは液体であるという概念を
打ち壊す商品であった。(本当に驚くコトだし、当然誰も聞いたことも
見たことも無い未知の商品でした。)
パッケージの形態も三角パック(現在テトラクラシックと呼ばれる)容器で
スーパーマーケットの店頭では、正面が定まらず並べにくく、お客様には
探しにくい状況を生んでいた。(商品の中身に、パウダーの他に
トッピング用のクルトンやアーモンドがあり、その様な容器になった)
さらに、作り方、どんな味なのか、作るための他の材料は、
子供は食べられるか、などなど上げればたくさんの課題が出てきて、
容易に伝えることが難しい商品だったのです。

やったことは、お客様は何も知らないということに徹底したという
ことです。新製品なのだから当たり前なのですが、あまりにも
初めて過ぎたからその様にしたのです。
タレントがお客様と同じ立場で、この商品を知っていく、
理解していくプロセスを、頭に入りやすいように丁寧な言葉で、
落ち着いて語っていくというものです。
三角くん・・・これはパッケージの印象を象徴したものです。
商品の中身も、一つ一つ映像と合わせながら見せていきました。
作り方も、中身を野菜にかける、そしてトッシングする調理法も
映像でシンプルに見せる。
最後にタレントが食べて感じた味覚の言葉を語ります。
初めて出会う食品TV広告に必要な要素を、全部盛り込みました。
You Tubeでご覧になった方は、なんてことない淡々としたCMに
見えたのではないでしょうか?
前回のクリエイティブマネジメントのススメ7でも紹介しましたが
クリエイティブ調査も決して喜ばしい評価でもなかったのです。
むしろ、明るくないCMとして評価されていました。
以上のコトから言えるのは、TVCMがやらなければならないのは
目立つこと、面白いこと、楽しいことではありません。
その商品の価値を最大限にお伝えすることに集中することなのです。
お客様は、心の準備をしてTVCMを見ているわけではありません。
何気ない面持ちで、食品・自動車・化粧品・洗剤とめまぐるしく
入れ替わるTVCMを見ている?眺めているのです。
でも、価値があると感じた商品情報は、お客様は逃さないのです。
プランナーは、それを見つけ出し表現に昇華させるのが
クリエイティブとしての本懐ではないでしょうか?

私が構造と言っているのは、皆さんが求めがちな
“こうすれば大丈夫”という法則や方法ではありません。
そんなに都合の良いモノはありません。もしそれが発見されたら
世界の広告界が変わる?かも。
あくまでも、理解するプロセス、順番、流れのコトなので、
あえて構造と呼んでいいかな?と思いそう名付けました。
15秒、長くても30秒しかない、この時間内で商品が伝えたいコトを
理解してもらう・分かってもらう為には、
気持ちよく頭に入る様に物語を組み立てる必要があるのです。
もし、少しでも分からない!理解出来ない!となると頭の中は
混乱するか、拒否反応としてフリーズして動かなくなります。
つまりお客様の興味が失せてCMを見ることをやめてしまうのです。
伝える側が、ちゃんと分かるように誘導しなければならない
というのが伝わる伝え方の基本なのだろうと思います。
しかし、TV広告の世界は、無差別級のリングのようなもので
食品・自動車・化粧品・洗剤・金融・住宅・ゲーム・家電・・・と
あらゆるカテゴリーが数珠つなぎにオンエアされるため、
目立つ・際立つということがどうしても思考されます。
その手法として、面白い、楽しい、変化、繰り返しなどなど、
あらゆる表現方法が投入されます。
クリエイティブマネジメントのススメ3でも書いたのですが
メーカーと広告会社の「広告」に対する考え方・見方が違っているのは
広告会社は、広告の“広く告げる”と言う点に焦点が強く当てられる
からだとお話しました。
時として、その焦点が強すぎて、商品本来の価値を凌駕してしまう
ことが往々にして起こります。面白かったけど何の広告だったか
覚えていないというのが、それに当たります。
くれぐれもご注意ください。

その構造を見つけたことは、30年以上、広告に関わってきて、
当たるも八卦当たらぬも八卦で、いつも心に不安を抱えていましたが
やっと企業内クリエーターとして、着実に販売に貢献する実感を
持てるようになりました。
まさに霧がかかっている状態から、クリアに晴れた感じを覚えました。
この構造に気づいてから行ったことは、この構造のコトは誰にも話さず
その後に企画・制作するたくさんのTV広告にこの構造を内緒で
埋め込むことに取り組みました。
なぜなら、気づいたこの構造が他のTV広告にも活用出来るのか?
分からなかったからです。
具体的な埋め込む作業として、広告会社のプランナーと企画を
している時に、絵コンテを纏める際に、このカットを入れて!とか、
演出家が構成した演出コンテに、このカットを挿入して欲しいとか、
絵と言葉の追加をお願いしたのです。
さらに、コンテだけで無く仮編集の際に見たCMの流れが、
どうもしっくり来ず理解が及ばないと感じると、
撮影したあのカットを入れること出来る?とか、
自分の頭の中で編集してみて、その様なお願いを何度もしました。
特に仮編集の際の、その様な発言は演出家、広告会社のCD・営業、
自分の部下も含め、一瞬凍りつかせてしまいます。
何故なら、その自分の部下含めたスタッフのみんなは、
既にこのCMの企画内容を理解し過ぎているので、
その仮編集を見ても疑問を感じていないのです。
まさに、作る側が落ち入りやすい状態で、お客様不在のCM制作は
CMの意味を持たなくなり、必ず避けなければならないのです。

構造を埋め込んだCMを、オンエアするとちゃんと販売の数字が
上がりだし、制作するCMすべてにおいて、前年対比の販売推移の
割合はそれぞれ異なりますが、外すコトなく売り上げを作りました。
これで、このCM構造が機能することが分かり、レポートに纏めて
社内・社外にお話しするようになりましたが、話だけを聞いた人から、
その構造でしばると、広告の企画内容がみんな同じになるんじゃない?
という疑問・質問を受けました。
しかし、商品のカテゴリーや成長度合いなどにより伝える内容が異なる
ので、食品であればキッチンとかテーブルといった設定環境は
そうでなくとも似てきますがトータルでは異なったCMに仕上がります。
またタレントも違いを作る役割を果たしますので、
心配することはありません。

私は、食品企業の広告を手がけましたので、食品における必要構造を
見つけたわけですが、おそらく他のカテゴリーでも、
お客様が重要視する項目に注意すれば、
そのカテゴリーなりの必要構造は見つけられると思います。
しかも、この構造は、新発売商品だけでなく、それなりの認知度の
商品・サービスでも活用が出来ます。
ただし、一つ課題としてあげるとすると、ロングラン商品には
この構造のままでは効き目が上がりきらないようです。
何故なら、お客様も充分に商品・サービスを知っていて、
さらに生活の中に溶け込んでいるので、広告の刺激によって
購買を動かすというより、使用している満足価値を
充足している方に結びついているからです。
例えば、自分が運転するロングランブランドの車の格好いい広告は、
すぐに購買に結びつきにくいですが(お金持ちは買い換える?)
自分が選んでその車に乗ることが素敵な事であるということを
感じさせてくれるのと近い効果と考えられます。
いわゆる、あなたの選択は素晴らしい、商品を忘れないでね!という
広告として充分に役に立ちますが市場刺激策としての効果を
期待するためには、新しい要素が必要になります。
つまり、商品を熟知しているのですから、その商品の機能価値から
情緒だけでもない、新しい商品ポジションの提案を行わないと
慣れから来る、興味・刺激が低下しているのです。
安住したら衰退の道に入るので、安住しない新しい商品価値の探索を
行い、果敢に提案しなければなりません。
これはCM構造でキャンペーン的に展開することも可能ですが、
あくまでもキャンペーンなので長続きしません。
商品機能価値・情緒に加え生活提案価値の増幅をマーケティングの視点から
作り出さなければ進みません。
ここがマーケティングと広告・・・TVCMとの役割の違いかもしれません。

CMには構造があるといった考え方は、いかがだったでしょうか?
この様に考えられるようになったのも、やはり海外赴任してASEANの
広告に関わりASEANのスタッフとTVCMを100本以上?作り、
販売を上向きにすることを何度も経験することにより、人種を越えて
普遍的なモノがあると感じたからに他なりません。
多様性の中でも本質的な事は見つけられる、そう思います。

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