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異 国「Kisikaの日記」13


   H16/03/22


いつもすでに
私は異国に
連れ去られている
異国のしとねで
ぐっすりと眠りこけている

田園地帯を訪れた驟雨を
やがてサンバーストが貫き
亡霊のようだった
遠くの都市の影が
ゆっくりと晴れてゆく

誰も私が
ここにいることなど
知らぬ存ぜぬと
若い父親は勤めに出かけ
若い母親は子供を学校に送る
遠くで都市の音が
幻聴のように鳴っている

淋しくなんかない
淋しくなんかないから
わたしは呆けて
異国のテレビを見ながら
いつの間にかまた
異国のしとねで
ぐっすりと眠りこけている

風に揺れる庭草が
夢の中で私を呼んでいる
透き通った庭草が
私に笑いかけている

夢の中で

いつか異国を後にして
故郷の家に帰ったら
また庭草とお話ができるから

だから私は
淋しくなんか
淋しくなんかない



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