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冒頭小説「私は、イルカなの」

※これは冒頭のみの小説です。続きは気まぐれに書くか、書きたい人が人がいたら是非書いてあげてください。そして読ませてください。めちゃんこ続きが読みたいです。はい…


生まれた時からその子はずっと自分がイルカだと思って生きてきた。

水の中をずっと泳いで生きてきた。

彼女の名前は”ルリ”

日本人の父と日本人の母がいて、埼玉県草加市にある、古く白い塗装がハゲかけた鉄筋コンクリートの小さな産婦人科で生まれた。

どちらかと言えば安産で、陣痛もそこそこにするりと生まれた。響き渡る産声は健康そのもの、この世に出て来れた喜びを全身で表現しているようだと助産師に言われた母は、初産だったこともあり全てに安堵して眠りに着いたのを覚えている。

あと数日で生後6年目を迎えるルリ。

同世代の子たちと比べても流暢に日本語を話し、物分かりのとてもいい子に育った。お手伝いやプレゼントなどを率先して行う姿は、既に親孝行を完了させてしまっているかのようで、両親はそんな彼女を少し寂しいと思いつつも、その姿に感謝し、よく褒めよく愛し育てた。

それなのに父と母は彼女のことを心配してやまなかった事が1つあった。

それはルリは、生まれた時から泳いでいたからだ。

母のお腹の中では赤ちゃんはみな、温かい羊水に包まれ浮かぶように泳いでいる。しかし、ルリのそれはそういうことではなかった。

6歳に手の届くルリが言うには、母の産道から出る時に、自分はイルカになり海流に乗って回転しながら出てきたらしい。

生まれて外の光が見えた時は高いジャンプをしたとも言った。

よく子供には胎内記憶というものがあるというが、通常3歳くらいまでで消えてしまう。しかしルリの場合は、6歳になる今も全く忘れていないばかりか、記憶が少しおかしかった。

父も母も最初は「イルカですって。かわいいわね。」と聞いていていたが、日々本当にイルカとして生きようとする彼女が次第に心配になっていった。


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