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「夫婦」って?もっといろいろな人の話を聞きたくなったから。

結婚をして驚いたのは、世の中には「妻/夫はこうあるべき」という「普通」が溢れていたこと。
「奥さんなんだから」「旦那さんなんだから」
うるさいなぁと耳を塞いでいるつもりだったけど、
一番自分を苦しめたのは、その考えが自分自身にもこびりついてしまっていくこと、いたことでした。

私の性格上、自分の中に「こうしたい」という意志はあるんだけれど、
他者からの言葉に気持ちが左右されてしまう。
自分の気持ちや意志を曲げることというより、その言葉に傷ついてしまう感じです。
(曲げたように見せても全然心が納得できていないことも。)

だから、良くも悪くも使われる「奥さんなのに」という言葉にいちいち傷ついたり抵抗を感じてしまう。
一応頑張ってみようかなと思ってみたこともあったけど、
「妻像」みたいなものをズボラな私はどうにも完璧に真似できないし(そもそも理想高すぎるし)、
それに対する不安も不満も「あるある」=「努力案件」みたいに処理されるのもなんだか解せなかった。
その結果自分を追い込んでしまったこともあったし、
逆に「私も頑張っているのだから」と相手に価値観を押し付けてしまうこともありました。

あの時の自分に、そしてこれから先苦しむことと出会うかもしれない自分に一番何が必要かと考えると、それはもっと多くの人の考えを知ることだと思うんです。
なぜなら、絶対に今身近にあるものだけがスタンダードであるはずがないとなんとなく気付いているから。
ただ、先述の通り他人の意見と受け止めがちな性分の私としては、それをしっかりと自分に落とし込むための材料として多様な考え方の存在が必要なのです。

この『多くの人の話を聞くこと』が、絡まった考えをいかに解いてくれるかを体感したのがこの本との出会いです。
数年前に「夫婦」について考えている時、偶然本屋さんで見つけて心が動きました。

ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす知恵
著:一田憲子 出版社:エムディエヌコーポレーション

この本は、「暮らしのおへそ」編集ディレクターの一田憲子さんが7人の女性にインタビューし、夫婦としてパートナーの夫への向き合い方や自分自身の気持ちのバランスの取り方などについて書かれたものです。

「密かに『夫婦』という言葉に対してコンプレックスを抱いていた」

「ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす知恵」より抜粋

一田さんの正直な言葉が目に飛び込んできたときの衝撃は今でも覚えています。
「自分が変なのかな」と自信が持てなくて、どこか不安で心細くて、なかなかオープンに人に共有しづらい感じ。
一田さんの言う「コンプレックス」という言葉がこの感覚にフィットしました。

「男」「女」というカテゴライズで書かれている箇所はややあるけれど
(この本に書かれていること云々というより、「男はこう、女はこう」って本当にそうなのかな?と個人的に思うところがあるので…)、
私がこの本からピックアップしたいのは
相手を夫だからと見るのではなく、「一人の人」として対話し寄り添うことに多くの方が注力していること。

「夫に限らず、そばにいる人に生き生きと生きてほしい、と願っても
 何がその人を輝かせるかはその人が選ぶしかありません。
 妻や母、夫や父という役割の一歩外に出て
 夫婦でそれぞれ懸命に生きる」

「夫婦になるのは、『男とは』『女とは』を定義し直すことなのかもしれません」

「ムカついても、やっぱり夫婦で生きていく 夫と機嫌よく暮らす知恵」より抜粋

インタビューに答える方々のそれぞれの経験から得たお話はとても力強く、説得力があります。
また、みなさん共働き、専業主婦、お子さんがいる・いない、離婚・再婚経験の有無など、環境は様々。
ここに書かれている考えを読者自身当てはめてみて!と誘導しようとする雰囲気がないのが読んでいて心地よく、
たくさんの考え方や向き合い方があることをこの本を通して知ることができるのがとても嬉しかったです。
自分の中にスッと自然に入ってくる言葉が見つかって、これまで抱えていた心細さが少しずつ解けていく感覚がありました。

今回の例としては婚姻関係に関する夫婦のことについて挙げましたが、
これに限らず、離婚、同性婚、子供を持つ・持たないことの選択、事実婚、選択的夫婦別姓…などなど、
様々な選択肢を考える上で、一つの考えに囚われ続けるのは苦しいことだと思っています。
限られた選択しかできないことの苦しさと、選択の自由の確保はしっかりと認められ尊重されるべきだと私は思うんです。
幸せのかたちをひとつに絞ることはできないと思うんです。(むしろ、されてたまるかと思う)

そして何より、これは苦しさや疑問を感じている当事者だけでなく、それ自体に今は疑問を感じていない人たちにとっても大事だと改めて思います。
これは、自省の念もこめて。
一つの環境にだけ囚われてしまうと、現実や自分自身の本当に居心地がいいと思えるものが見えなくなってしまう。
いろいろな選択肢があることを忘れてしまう。
私は、社会人になるまで社会がここまで男性優位な社会構造になっているとは気がつかなかったように、夫婦になるまで夫婦における性役割がここまで人を抑圧し自由な選択を奪う可能性を持つものだとは、ちゃんと認識できていませんでした。
もししっかりと考えられていたら、きっと当事者となった時の混乱は減っていたと思うし、
自分が当事者でない場合でも、苦しんでいる誰かに寄り添うことができたかもしれない。

私はいろいろな思いを抱えてしまう時、本に救われることが多くあります。そのときは何も考えていないようでも、ふと手に取ってしまう本がある。
本屋さんはまさに出会いの宝庫です。
だから私は多くの人に本を届けたいなぁと思っているのだと思います。
色々な人の心がもっと自由になったらいいな。
あの頃の私のように心細さを抱える人に届いたら嬉しい。
そんな気持ちを思い出させてくれたのがこちらの本です。
興味を持っていただけたら嬉しいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
みなさまも素敵な本に出会えますように。

凪の間



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