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暑い日が続きますね。そんな季節に気をつけたいのが『熱中症』。毎年、メディアでも熱中症と思われる事故が報道されています。わかっていても注意するのが難しい熱中症ですが、今回は普段の対策に一隻を投じる提案をしたいと思います。


熱中症と自律神経系の関係とは?

さて、みなさんは普段どんな「熱中症対策」をしていますか?

・水分をこまめに取る

・塩分を含んだ飴や水分を持ち歩く

・凍らせたタオルを首に巻く

・日傘やサンバイザーを身につける

・暑さを我慢せず冷房をいれる

などなど

気をつけている方も多いのではないでしょうか。

これらの対策は非常に大切で「熱中症」を未然に防ぐには有効だと思います。

ですが、もっと大切なことがあるんです。

それは・・・

『熱順化』

です。


熱順化とは、少しずつ体を暑さに慣らせていくことです。
そうです。
そもそも「暑さ」や「気温変化」に対して体を強くしようという感じです。


ヒトの体には「ホメオスタシス」といって、外部環境の変化に対して体の内部の環境(体温や心拍数など)を一定に保つための自動化された調節プログラムが存在します。

この自動調節プログラムを統率しているのが、いわゆる「自律神経系」になります。

例えば、

外の気温が高くなる ➡ 体温を下げるために汗をかかせる
外の気温が低くなる ➡ 体を震えさせ熱を作る

このような反応がパッと思い浮かぶと思います。

ヒトの体は自律神経系の働きによって、外部環境の変化に即座に対応するようにプログラムされているんですねぇ。


すごいメカニズムです・・・

ただし、この調節プログラムが正しく機能するにはある条件があるんです。



筋膜が体温調節プログラムを管理している!?

外部環境に合わせて体温など自動的に調節してくれるプログラム

このプログラムが正しく機能するためのある条件とは・・・


それが

『筋膜』です。


厳密には『浅筋膜』とよばれる皮ふとその下にある皮下組織を含む組織すべてです。

熱中症と筋膜と聞いてもピンと来ないですよね?

すこし解説していきますね。

「外部環境の変化に自動的に調節する」ことは先ほどお伝えしましたが、これには「外部環境」の状況がどういう状況なのかを見極めることが必要になるんです。

冷静に考えるとそうですよね?

外が暑いのか寒いのかがわからないと、自動調節プログラムがうまく作動しません。

で、この外部環境の変化を感知するのが皮ふ・皮下組織を含む浅筋膜なのです。

実は、皮ふの中の表皮と呼ばれる部分に寒さを感じるセンサー(寒冷覚)があり、その下の真皮とよばれる層には暑さを感じるセンサー(温熱覚)がたくさんあるのです。

このセンサーが外部気温の変化を感知して、その情報を体の内部に伝えます。

「寒い」という情報を受け取った場合は、体の内部は熱を作るために必要な内臓を働かせます。

「暑い」という情報を受け取った場合は、体温を下げるために必要な内臓を働かせるのです。

体温調節などの自動プログラムは、皮ふやそのまわりにあるセンサーと、体の内部の反応によって調節されていたのです。



皮ふセンサーが熱中症対策のキーマン!

自動調節プログラムのメカニズムがわかったところで、「熱中症」との関係性についてですが

熱順化をして暑さに強い体にしよう!というのが大枠なのですが、もう一つ狙いがあって

外部環境を正しく感知してカラダ本来の反応を引き出そう!っていうのが今回の目玉です。


暑さを感じるセンサーを正しく機能させることで、カラダの本来の反応を引き出します。

言い換えると、「現代社会での生活スタイルでは、外部環境を感知するセンサーの働きが悪くなっているせいで、気候変化にカラダの反応が追いついていない」と言えます。

なぜそうなったのか?

これは良くも悪くもエアコンになると思います。

ようするに、夏でも涼しい、冬でも温かいというのが当り前になってしまっていることにあります。

夏場にエアコンでキンキンに冷えた室内にいつもいるとします。

そうするとどうですか?

熱を感じるセンサーは常に活動はオフになっています。

センサーの情報を元にカラダを冷やす体温調節プログラムも働きません。

そうなるとどうなっていくか。。。

どんどん、これらの機能は衰えていきます。

そりゃそうですよね?
だって、活躍する場面が無いんですから、宝の持ち腐れ状態のようなものです。

働きが悪くなった状態で急にめちゃくちゃ暑い環境に出てみましょう。

熱を感じるセンサーの反応はおそらく2つ

1つは、センサーとしての機能が悪くなっているので熱を感知できず、体温を下げるメカニズムが働きにくくなっている

もう1つは、急激な気温の変化に過剰に反応して、急激に熱を下げようと大量の汗をかかせたり、必要以上に体温を下げたりする

この2パターンが予想されます。

これはヒトに備わっている自動調節プログラミングとは大きくことなる反応ですので、カラダの内部、いわゆる自律神経系やそれに反応する内臓たちにはかなりのストレスになります。

皮ふセンサーがうまく働かないだけで、カラダの内部にも負担がかかってしまうんですね。



センサーの働きを左右するものとは・・・?

ではセンサーの働きが悪くなるのはエアコンだけが原因なのでしょうか?

答えはNOです。

それ以外にもたくさんあります。

まずはエアコンによる乾燥です。乾燥によって皮ふや皮下組織が脱水を起こすと組織の動きが悪くなります。動きが悪くなると、血流やリンパの流れも悪くなるので、センサーに十分な栄養が行き届かなくなります。そうなるとセンサーの働きが悪くなるんです。

あとは、皮ふや皮下組織の動きを保障しているヒアルロン酸の粘性、細胞の入れ替え(代謝回転)などは温度に依存しています。だいたい35度〜40度でその働きが適切になると言われているので、夏に35度〜40度の例えばお風呂に浸かる、体温を37度弱に保つなどをしたほうがいいのですが、汗をかくことを懸念して冷房環境に依存したり、入浴はシャワーで間に合わせている方も多いと思います。

加えて、pHにも影響されます。pHは水素イオン濃度といって、体内の水溶液の性質を表します。ざっくりいうと酸性かアルカリ性かという感じです。
pHは弱酸性がベストで、酸性に行き過ぎてもアルカリ性に行き過ぎてもよくありません。先ほどの代謝回転が行われる適切なpHは7くらいで、それを下回ると代謝機能が落ちてしまいます。

このpHはいろんな要因で変動するのですが、代表的なものが食生活、精神的ストレス、睡眠不足などです。揚げ物ばかり食べている、解消されない慢性的なストレス下にいる、寝苦しくて十分な睡眠が取れていないなどが続けば、pHは変化していくのです。

まとめますと、センサーの働きは、脱水、低温、pHの変化によって悪くなります。

言い換えれば、水和をおこして、温度を上げて、pHを元の状態に戻すことができれば、センサーの働きを回復させることができるのです。



センサーの働きを回復させる方法

センサーの働きを回復させることでカラダの本来の反応を取り戻せます。

次に、センサーの機能を回復させる方法と解説していきましょう。

実は意外とシンプルです。

その方法とは、皮ふと皮下組織に軽く圧迫を加えてながら、タテ・ヨコ・ナナメの色んな方向に滑らせるのです。

カラダのいろんなところ(特に過剰に冷えや熱を感じる場所のまわり)で動きを調べていき、他の場所と比べて動きが硬かったり、変にくすぐったかったり(感覚過敏)、人によっては痛かったりする場所を重点的にほぐしていきます。

3〜4分続けると、局所に水分が集まり、かつ圧迫と摩擦による熱が生まれます。

局部に軽い炎症が起きることで代謝が促されpHの回復も促されます。

お風呂に浸かりながらや入浴後にほぐすのも良いでしょう。

これによって、センサーが働きやすい状況を意図的に作ってあげることで、現代生活で狂ってしまったセンサーをもう一度適切に働かせるようにするのです。



仕上げはコレ!

センサーの感知能力が整ってきたところでほんとうの意味での熱順化です。

冷房に当りっぱなしの状況から少し外に出てみて、熱を感じましょう。

最初は少しずつ。
一気にやりすぎないように(センサーやカラダの内部がびっくりします)

センサーを働かせる環境においてあげることで、より本来の機能を取り戻してくれるはずです。

熱中症対策として、

①まずは熱を感じるセンサーが働きやすい環境を整えるために皮ふや皮下をほぐす

②エアコンだらけの環境から一歩外に出て、熱センサーが働く状況に身を置く

この2段階の過程が重要です。



最後に

最初にもお伝えしましたが、水分・塩分の摂取、エアコンの使用は悪ではありません。必要です。

ですが、便利になりすぎて元々備わっている機能も衰えているのも確かなのです。

もう一度本来の自分を取り戻すには、一気に取り組んではいけません。

まずは皮ふや皮下組織をほぐしてセンサーを刺激しましょう。

それから、ゆっくりと暑さに慣れていきましょう。

最初は数十秒でもいいと思います。

水分や塩分の飴を片手に徐々にやりましょうね!



筋膜×自律神経系×運動の観点からヒトの回復力(レジリエンス)を探求する理学療法士
nakamu








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