仕事で疲れた日に、スーパーに立ち寄った。何かひとつ甘いものを買おう。普段は買わないもの、それをご褒美にすることにした。
　外国製のチョコやクッキー、フルーツが飾られたプリンやパフェ。どれも、ちょっと違う。粉砂糖で白くなったドーナツや、おつまみコーナーまで見て回ったけれど、欲しいものはなかった。
　ウロウロウロウロ。食品が隙間なく詰まった棚の間を縫い歩く。
　ナッツ類の横に、ドライフルーツのパッケージが並んでいた。定番のリンゴやパイナップル、レーズンやプルーンときて、わたしの目が留まった。
　デーツ、なつめやし。
　中東やアフリカで、甘味料で使われているのは知っていた。でも、たぶん食べたことはないはず。プルーンよりも小さく、飴色の楕円形をしたデーツ。
　どのくらい甘いのか知らないから、30粒ほど入ったパックを買うのは勇気が要った。美味しいといいのだけれど。ずっしりとした重さが、手のひらに伝わる。
　ブラックコーヒーを入れて、ひとつ手に取る。ねっとりとして、他の粒とくっついているのを振り払って、口に入れる。思ったほどの甘さはない。指に着いた蜜を舐めた。材料はなつめやしだけなのに、蜜の量がすごい。
　甘そうな見かけによらず、すっきりとした味のデーツ。なぜだか、砂漠の国に似合うと思った。