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三角屋根のてっぺん星


月明かりが そっと一筋の雲を照らし出すと
小さな影が 地上をのぞき込んでいる。


柔らかく微笑む一人の女性は
浮かぶ雲の上でその欠片を 少しづつ 涼む風に流していた。
ちぎった雲にそっと何かを囁いて
クスリと笑みを浮かべながら それを放っては また
手の中で温めた他の雲の欠片に 言葉をかける。


じっと彼女を見つめていた月に
辺り一面の星々が 輝く瞳を向け そっとお願い事をする。

いいでしょう?いいでしょう?


飛ばされた雲の欠片は 遥か遠くの地上にある
とある 三角屋根のえんとつへと
次々と流れ込んでいく。


月はそっと笑い、星々に手を招き

行っておいで。

そう優しく呟いた。


静かな夜の闇に輝いていた星々が
一斉にあちらこちらと散らばって、

うふふ。 あはは。と嬉しそうに声をあげ

見る見るうちに
一筋の雲から 三角屋根のえんとつまでの
光り輝く星の階段が出来上がった。


女性は手を止め 月の元へ振り返った。

ー 星たちと私からの贈り物だよ。
  さぁ、会いに行っていらっしゃい。


涙で潤む彼女の瞳が月明りをより一層キラキラと輝かせている。
おそるおそる 踏み出した一歩に
集まった星たちが くすくすと笑いながらも
いってらっしゃい。と言葉をかける。
ゆっくりとした歩みは、徐々に足早になり、
星々を跳ねるように 彼女は夜の闇を駆けていった。


深い眠りにつく彼の隣に腰を下ろし、
そっと寝顔を両手で覆い 彼の頬をそぉーっと撫でる。
眠りながらも微笑む彼の耳元に 彼女は精一杯の愛を送りこんだ。

「愛しています。いつまでも」


一筋の涙が彼の頬を伝い
寄り添った二人に優しく月が光を放つ。
彼女は彼を起こさないように 優しく彼の腕の中へともぐりこむと
そっと目を閉じて 呼吸を合わせた。

彼の鼓動が 子守歌のように心に響く。
彼女は 大好きな曲を鼻歌に乗せてゆっくりと彼の鼓動に重ねた。

眠りの中に居る彼の腕にキュッと力が入り
彼女もまた、彼をぎゅっと抱きしめた。

「ずっと、ずっとあなたを見ているからね…」


月明かりがぽぉーっと明るくなったその時に
彼女は柔らかな光を放ち 一つの星になった。

「ずっと、ずっと…」


星になった彼女は 煙突から抜け出し
笑顔で待ち受けてくれていた星々に ありがとうを言いながら
また その階段を空高く昇って行った。


空高く、一筋の雲をも届かない程 空高く
彼のいる三角屋根のてっぺんに
優しく笑いながら 
彼女は 毎晩 彼をそっと見守り続けている。

「愛しているよ」

そう 愛の言葉を放ちながら。




自分で書いておきながら、サブストーリー企画にまで参加するだなんて…でも、、、こらえきれません。ふふふ。許してください:)

「拝啓」に乗せた 七夕の思いを星の階段にしてみました:)君が僕の元に降りてきて そっと寝息を重ねてくれる...ちゃんと、ちゃんと合わせているよ。




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