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思いつき1場面物語。《猫とまたたび》

「猫じゃらしは好き。
だって楽しいもの。」

彼女はそう言って、尻尾をくねらせた。

私はふむふむとメモを取る。

─どんな猫じゃらしがお好きなんです?

彼女の額をワシャワシャっとしながら聞くと、彼女は気持ちよさそうにしながらこたえた。

「そうねぇ。キラキラしてたり、音がなったり、そういうのが楽しいから好き。」

私はまたふむふむとメモをとる。
彼女のガラス玉のような目が私の手をみている。

「手も好きよ。」

ニヤァと小さく鳴いて、彼女は笑う。

─いやぁ、どうも

と照れた私は、照れ隠しに彼女の顎を撫でる。
満足そうなゴロゴロという音が聞こえてくる。

ふと、思う。
猫じゃらしは楽しくて好きだというのなら…。

─またたびはどうなんです?

次の瞬間、ゴロゴロと鳴っていた音が止まる。
辺りがシンッと静まり返る。

彼女を見るとゾッとするほど冷たい瞳と目があった。

アレは・・・
「狡いと思うの」

私は生唾を飲む。
この先を聞いてもいいのか躊躇うが、伊達にメモを取って生きているわけではない。

─よ、よろしかったら教えてください。どう、狡いんです?

私達は自由気ままが生き様よ。どんなに、魅力的な猫じゃらしがあったって、遊びたくなきゃ遊ばないの。」

彼女の尻尾がタシーンッと地面を打つ。

「だのに、あの、またたびときたらッ!!」

「あんな、何の変哲もない棒っきれの癖して、妙な術で私達を捉えてくる。猫じゃらしみたいにキラキラもしてないし、カシャカシャもしてない。かつお節や、煮干しみたいに食べて美味しいわけでもない。なのにっ!!アレがそばにあると、私達、とても絆されてしまうのよっ!!あぁ、忌々しいっ!!」

尻尾がタシーンッタシーンッと地面を打つ。
私は冷や汗をかきながら、そっとポケットへ手を伸ばす。

コロン。

転がしたのは、棒状のまたたび。

彼女は一瞬、クワッと顔を顰めたが
すぐに匂いを嗅ぎに行く。

─でも、そんなこと言ってお好きなんでしょう?

─素直じゃないなぁ

「もうっ!ひどい人ね!」

「またたびから返事はないのよ?一方的に絆されるのは、プライドが傷つくと言ってるの!!そんなの、私ばかりが好きみたいじゃない!そうじゃないのにっ!じゃれたくなる理由もわからないのに!!お魚は美味しいから好き!!猫じゃらしは楽しいから好き!!じゃあ、またたびは??わからにゃいからムカつくんじゃない!!」

彼女はそう言いながら、またたびに体をこすりつけている。
不思議な関係なんだなぁ、と私はしばらくそれを眺めた。

いつか、またたび側にも話を聞きたいもんだ。

見上げた空にはうろこ雲がもくもくとわいていて、なんとものどかな昼下がり。
私はメモを読み返す。





猫にまたたびあげると面白いけど、大抵は雄のがよく酔って、雌は全くの子いるよ。
我が家のサク(お婆ニャン)はまたたびでグデグデには酔いません。少し口うるさくなるくらい。
人間でいうとこのお酒なのかしら。

猫も人も、酔っ払ってると面白いものねぇ。

私はお酒はほぼ飲まないし、酔えた試しが無いから、酔っ払ってる側を観察するのが好き。
かわいいもんね。ぜーんぶ、覚えてるよ?笑(正体を無くすタイプにとってコワイらしい)



あなたが猫だったら、どうなのだろう?
そもそも、猫じゃなくて、猫じゃらしや、またたびなのかもね。もしくは飼い主側とか?

様々な立場になれるよね。
そう考えると面白い。
そんな妄想捗る、秋は夜長というけれど、明日も仕事だし、眠らなきゃね。

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