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市川翔の物語外伝☆俺の能力は五感を超えているがそれがどうした

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市川翔自身の言葉をしたためる。彼の脳裏を駆けめぐる言葉を。事実も想像も、あらゆる思考が言葉に変換されて表現されてゆく。彼にとって、言葉は思念。ときに言葉は、現象そのものとなる。そ… もっと読む
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【視線】

明快、爽快 仰ぎ視る 教訓、訓戒 刻み診る 現在過去未来の 行く末の 因果応報 顧みる 思いを 遠く遠く 馳せながら ふわりふわりと どこまでも 心、飛翔し はるか 大気圏を 突破して 宇宙ステーション をも、通過して 絶対零度の 真空宇宙 地球の外から 俯瞰する 嗚呼 壮大、遠大 永遠を じっと観る いや 観られているのは われわれだ

【プロローグ はじまりのものがたり】

ある朝 空を見上げたら ポカンと まん丸いものが そこにあった 気球か いや 球体ではない それに 物でもないような なんだろう なにか 異質ななにかだ

秋雲

雲流れ流れ 風と共に流れ去る 形なき白き霧 時に空を覆い隠し 時に凝縮し空に聳え 時に雲散霧消す 吹かれ吹かれて 変幻自在 そのありさまに 焦がれ 切望す

流れ去る

風が吹く 空から地上へ 大気の流れは激しく 雲 ひたすらに流れ去る あれほどに くるおしいほどに 熱しつくしたものが あっけなく 流れ去る

災難か否か

あつまるな できるだけ はなれていろ 声をかけるな 用がすんだら さっさといけ 誰もそんなことは 言っていないって? バスに乗ろうが 電車に乗ろうが 誰もが粛々と スマホに瞳を凝らし お互いの顔を見ようともしない かつて うるさいくらいに コミュニケーションに いそがしかった人々は いったいどこへ 行ったというのだ いまでは 子どもの視線までもが 無機質な画面に 吸い込まれている その顔には 天真爛漫なはずの 表情はない 誰もが粛々と 従っている それら諸事情は

目に映る世界

子どものころに見ていた世界があった 少しだけ大人になったころ まわりを眺めてみると 子どものころに見ていたのと同じ 大人たちの世界がそこにあった もう少し大人になって 改めてまわりを眺めてみると 子どものころに見てきた大人たちが 同じようにそこにいた おかしいな ふと 思いにふけっていた 人類は 果たして進化しているのかな やがて 中堅どころの大人になっていた俺は 今度は 若き大人たちに視線を移してみた するとどうだろう そこにも かつて子どもの頃に見ていた 大

【顔】

この世界は 娯楽にあふれている 楽しいことだけに時をやり過ごすことは べつに悪いことではない いや・・・ それ自体 たまにはしびれるほどの快感を 俺に与えてくれることもある しかし この現実というものには やっかいなことに 苦悩というものが 常に隣り合わせになっていて その黒い手を伸ばして 俺の心臓を わしづかみにしようと構えている 娯楽は そんな俺に忘却という麻酔をかけ そんなことは どうでもいいことなんだという かすかな猶予をくれる そうこうしているうちに

さっきから同じ事を言っているのに 言葉が通じない 言語は日本語だ・・・ なのに まるで通じてないのがわかるんだ 俺はべつに おまえのことを否定してるわけじゃない 違うやり方もあるんじゃないか と、提案してるんだ 常に同調しないと 仲間でいられないのか? 同じ事をしないと グループの一員でいることもダメなのか? 人間はみな違うんだよ 一人ひとり・・・ 感じ方も、考え方も、好みだって様々だ そう思う俺がおかしいのか? おまえたちにへつらうか もっと強烈に支配的に

通じ合えない心

微笑みあうだけで 心が満たされていたあの頃 俺たちに必要なのは 言葉ではなく お互いがそこにいること ただそれだけのことだった 惹きつけあう者同士の逢瀬は せつなさと 離れ難い気持ちの連続で 逢うたびにそれは高まり 強調され ついに 約束を伴う確認へと移行する 当時は それがごく自然なことで 逢えない時間の辛さを思えば 必要なことだと納得もした 心が固く結ばれることが 何よりも優先事項だと・・・ だってそうだろう この地球上の人類の中の たったふたりの人間が 同

真夜中の月

皓々と照り輝く月よ 真空の闇を突き抜ける 白い光 世界は 厳寒の大気の底で じっと息を潜める あらゆる気配は消え去った そよとさえ風は吹かず 見渡す限りの事物は 静止し 時の経過を知らせるものは この身から ぬくもりというぬくもりが 外部へ向かって 放射されているという自覚と 月の ハレーション 発光への驚き 俺は たまらなくなって 息を吐く 目の前を流れていく白い靄が 拡散していくのを目撃すると それは 俺の生きている証だと

異なるもの

ここでは 誰も彼もが 不機嫌そうな表情をして ひどく焦っているかのように 急ぎ足で移動している 目的地に向かうための 手段を利用するという 共通の動機を持ち 俺たちは ただここで すれ違うにすぎない存在だ あらゆる方向に てんでばらばらに歩いてはいるが それぞれにそれぞれの 目的地がある 俺たちは行動する生き物 人類 白髪まじりのものもいれば 脂ぎったものもいる つるつるの肌に シミひとつ、シワの一本もないものもいる だが こうしてざっと見渡してみても 特別な違

偽らざるもの

煌煌と照りつける月よ 灼熱の恒星 太陽を映す鏡よ 天空の一点から その透徹とした光を 地上に降ろし あらゆる発生 あらゆる変転 あらゆる消滅を 闇からすくい上げ 寂々と 存在たらしめる 永遠とも思える時を 法則にしたがい 自転と公転を 繰り返し 繰り返し 過去から未来へ 未来から永遠へ 旅をする 俺は 熱のないその光に抱かれる時 過去を煩い 未来を夢想する 俺という実在を通しての時空 現在を発信地としての 時の広がりに 意識を漂わせる 俺は 偽らざるもの

たがえるということ

なぜあいつはああなのか 自身の不遇を託ち まわりに不平を撒き散らす 意見交換を論争に仕立て上げる ターゲットを見定めては 言葉で叩きのめす そんなやつに いちいち反応していたら 平静心など吹き飛んで イライラが募るだけだ できるだけ距離を取るのが 賢い選択とはいえ 物理的距離を取るわけにも いかない場合もままあるわけだ そうであるなら 心理的距離を取っていく それでも 事実は展開していくわけで 知らず知らず 憂鬱な気分にもなるわけだ これは公的立場では あ