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いってらっしゃい、いってきます。突き抜けるほど晴れた日に

いつも通ったコンビニが行きつけじゃなくなる瞬間も、何度も歩いた線路沿いも。日常が、日常じゃなくなる瞬間は突然だ。

バイトに明け暮れた日も、落ち込んで帰った日も、足を運んでしまう場所があった。
わたしの家の玄関を過ぎた先、自分の部屋を過ぎてそこに帰った日は、もう数え切れない。

彼女なしに、この日々を語ることはできない。わたしより、わたしを知ろうとしてくれた。わたしが喜びすぎると現実に引き戻してくれて、冷静でいすぎると感情の渦へと連れ出してくれたひと。

夏の日の、窓を開けて歌ったaiko。もっと歌ってと、彼女からのライン。ベランダで誰かのために歌を歌う日は、もうないかもしれない。

一時停止をしながら繰り返しみたドラマのワンシーン。そして何度も食べたハーゲンダッツ。青春と呼ぶ日々があるとするなら、彼女と過ごした日々と分かち合った感情だ。

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何袋捨てたっけ。ゴミ置場から部屋へ帰る途中、彼女に会った。もう行くの、と彼女は泣いた。うん、先に行くね。

あなたはいつも、わたしをすごいと言ったけど。わたしはあなたが羨ましかった。素直な感情をいつもすべてに向けて、その喜怒哀楽があまりにも愛おしくて、大好きだった。

気取らないのに、かっこいい。かわいいのにおもしろい。いろんな矛盾が存在していて、でもそれがあなたの魅力になっている。

わたしはいつも、大事なものほど隠してしまうけど。あなたには、気づけば見せていた。昔からの友達とのご飯、勝手にあなたを連れて行ったり、ビデオ通話も一緒に出たり。そして友人たちもあなたを一瞬で好きになる不思議。あなたは、魔法使いかなにかかしら。

だからもう隣の部屋をあけても、おかえりが聞こえない明日からの日々をいまだに信じられずにいる。

でも聞こえるといいな、あたらしい場所で、あなたはこれから「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」をくりかえしていく。夢を手にしたあなたは最高にかっこいい。だからわたしも必ず行く。夢を手にしてどこかへ行くときには、あなたのいってらっしゃいを背に戦うと誓う。

あなたの「いってらっしゃい」と「おかえりなさい」は、つよい。それはわたしが保証する。だから、また会おう。人混みに埋もれても、aikoを口ずさんでまた会おう。

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読んでくださってありがとうございます。今日もあたらしい物語を探しに行きます。