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研究者の留学

こんにちは、市橋です。
研究者として、エキサイティングな日々を送っております。

今回、留学について知りたい方に向けて書きます。

とくに研究者として留学をしてみたいと思っている方は、留学から得られるメリットは何か、留学に必要な準備は何か、気になると思います。私も留学を決意するまではとても不安で迷いましたが、留学は間違いなく私の人生の中で最も成長できた日々でした。アメリカで4年間、研究員として過ごしてきた経験から、以下についてシェアします。

1. 研究者留学のメリット

「海外にあるものは日本にもある、わざわざ海外に行って研究する必要はない」と言われたことがあります。研究プロジェクトを行うだけであればそうかもしれませんが、研究者として、人として、成長したい方にとっては、様々なメリットがあります。

ここでは、実際に私が留学して実感したメリットを3つ紹介します。

【留学のメリット】
・発想が柔軟になる
・世界と繋がれる
・余裕と自信が生まれる

メリット1:発想が柔軟になる

留学では、国外でどのように研究が行われているか、体験することができます。多くの場合、該当する研究分野で最先端の研究室やアクティビティが高い研究室を選ぶことになると思います。そのような活発な研究活動を支えている研究室の"日常"とは何か、身を持って知ることができます。

私は留学して早々にショックを受けたことがあります。それは、最先端の研究は必ずしも最新の研究設備で実施されているわけではない、ということでした。「海外にあるものは日本にもある、わざわざ海外に行って研究する必要はない」と言われる所以はここにあるかと思いました。実際に私が留学した研究室は分野を牽引する研究室であり、一流の研究成果をコンスタントに出しているのですが、研究設備としてはお世辞でも最先端とは言えませんでした。むしろそのような設備でも最先端の科学を進めることができている事実を目の当たりにして驚きました。

私が一番感じた日本との違いは、"研究スタイル"でした。留学先の研究室では、当時私が想像する以上に議論にウエイトを置き、データに基づく論理展開で、内容が緻密であり、そして議論の速度がとても早いといった印象でした。また考え方が根底から異なり、特にスケールの部分で自由な発想が飛び交い、いかに自分が萎縮した発想で研究を捉えてきたのか反省の毎日でした。このように自分の小ささを知るだけでも留学に行く価値があると思います。

留学は、あなたの発想の幅を広げてくれます。

モノのレベルでは世界中それほど変わらない、むしろコトのレベルで大きく異なる

メリット2:世界と繋がれる

留学では、世界中に友人ができます。多くの国外の研究室では、最先端の研究を行っている研究者が世界中から集まります。講演に来る大御所の研究者や短期間の共同研究を行う研究者など、様々なと研究者と直接会って会話するチャンスが増えます。日本ではなかなか会えないトップレベルの研究者の話を直接聞いたり、議論したりすることは研究者として大きく成長させてくれます。

また世界で活躍する日本人とも出会うことができます。多くの地域では日本人コミュニティがあり、研究分野を超えた出会いの場になります。研究職以外で活躍している日本人とも出会うことができることもできます。

英語でのコミュニケーション能力が上がります。常に英語で会話することが求められる環境になるので、嫌でも英会話の能力が鍛えられます。多くの地域で図書館等で無料の英会話教室があったりします。また英語を第二言語としている方が多く生活しているところでは、文法や発音は適当でも意外に大丈夫という肌感覚も身に付きます。むしろコミュニケーションには、英語の正確さよりも度胸が大切だということに気が付かされます。

また良い意味でも悪い意味でも、研究室で日本人代表になる可能性が高く、日本について色々と聞かれたり、発言を求められたりします。そのため、日本について改めて知る良い機会になります。ここで得た知識は国際人として知っておかなくてはいけないことだったりしますので、生きた教養が身につくことになるでしょう。

留学は、あなたと世界をつなげてくれます。

メリット3:余裕と自信が生まれる

留学では、研究以外についても多くを学ぶことができます。異国の地で暮らすことで、様々な面でカルチャーショックを受けます。自分で色々と調べたり、体験したりすることで、生活力がつき、自信につながります。

また日本で何気なくしていたことに感謝できるようになります。具体的に私がアメリカ留学で学んだことの一つは、アメリカの生活を支える"汎用性の高いシステム"です。様々な人種や宗教や考え方の人が集まるアメリカでは、市役所でも、銀行でも、スーパーマーケットでも、色んな場面で誤解が生じないような仕組みになっていることに気がつきました。よく工夫されたシステムを目の当たりにすると、日本で浸透している"察する文化"とはそもそも生活基盤から異なるのだと感心しました。また実際に多様なバックグランドを持つ方と知り合うことで、他人に対する理解の幅が広がり、寛容になることができます。さらにそのような多様な人々の中で自分という存在を再発見することにもつながります。私が留学で過ごしたカリフォルニア州では、多くの方が国立公園などの自然の中でゆっくり余暇を過ごしたりしています。私を含めた日本人の多くは休日でも何かと慌ただしく過ごしてしまいがちでしたが、休みにしっかり休むという時間の使い方に感銘を受けました。あくまでも一つの事例ですが、私にとって留学から人生の楽しみ方を学ぶことができました。

留学は、あなたをたくましくしてくれます。

2. 研究者留学のプロセスと準備

それでは、研究者として留学するプロセスと必要な準備について簡単に説明します。留学先の国によって、またその時々の情勢によって詳細は異なるので、ここでは研究者の留学の大枠を捉えた情報になります。留学に対するハードルを少し低く感じてもらえると嬉しいです。

当時私が参考にしたサイトはこちらになりますので、興味があればご覧ください:http://www.kenkyuu.net

研究者の留学は、以下のようなプロセスになります。

【研究留学のプロセス】
1. 留学先を決める
2. 日本で準備する
3. 留学先でセットアップする

プロセス1:留学先を決める

最初の一歩です。国際学会等で直接お会いした研究者の研究室、論文やウェブサイト等で知っている研究室、先輩や研究室の所属長に紹介される研究室などを留学先として検討します。所属する学会等のメールやSNSで国外の研究室での人材募集を案内していたりします。まずは研究室の窓口もしくは研究主宰者に直接コンタクトを取り、受け入れが可能か伺いましょう。受け入れの形は、受け入れ研究室で雇用してもらえる、海外留学を助成するフェローシップを取得する、共同研究として現在の所属のまま留学する、などがあります。

私の場合は、博士号取得後すぐにアメリカに留学しました。当時の研究室の先生と知り合いの研究室を留学先に決めたため、直接研究主宰者にメールで連絡をしました。メールのやり取りのみで雇用してもらうことが決まり、同時にフェローシップも応募しました。フェローシップを取得できるまで受け入れ研究室で雇用してもらいました。

海外留学を助成するフェローシップとして、日本学術振興会の海外特別研究員等があります。また国内の研究室に所属する日本学術振興会の特別研究員でも採用期間の一定を海外で研究活動することが奨励されております。
日本学術振興会:https://www.jsps.go.jp/index.html

プロセス2:日本で準備する

留学先が決まったらビザの取得をすることになります。短期留学の場合はビザが必要ない場合もあるので、留学先の研究室に確認が必要です。続いて、引越し準備になります。アパート等の住居を決めて、荷物を送るか手荷物で持ち込むことになります。留学先に行ってから住居を決める方もいます。またお金の準備も必要です。銀行口座の管理、クレジットカード、留学直後に必要なお金の準備があります。加えて、留学が1年以上の場合は、役所で国外転出手続きをする必要があり、現在住んでいる地域の情報を確認する必要があります。

私の場合は、アメリカ留学のためJ-1ビザを取得して、現地のアパートを決めて、手荷物で持ち込める分の荷物のみで渡米しました。渡米直後に必要なお金はトラベラーズチェック(小切手)で持ち込みましたが、現在では使われておらずクレジットカードを使うのが一般的です。留学先の研究室に日本人の先輩がおり、ちょうど入れ違いで私が留学することになったので色々と相談に乗っていただきました。

プロセス3:留学先でセットアップする

留学先に到着したら、まずは住居での手続きをします。その際、電気、水道、ガス、インターネット等の公共サービスの手続きもします。また留学先の研究室での手続きもあります。その後は銀行口座の開設、家具や生活用具の購入、必要であれば車の入手や運転免許証の取得になります。

私の場合は、大変ありがたいことに、研究室の方が空港まで出迎えていただき夕食をご一緒して、翌日研究室にいくとラボメンバーとお昼から飲みに行くという手厚い歓迎を受けることから始まりました。住居や研究室での手続きはとにかくサインする書類が多かったのですが、担当の方が日本人の英語に慣れており、忍耐強く対応してもらいました。その後、その地域で過ごす日本人コミュニティに入り、生活について色々とサポートしていただきました。主要な留学先ですと日本人の出入りが頻繁にあり家具や車などを個人売買しております。私もほとんどの家具と車を知り合いの日本人から格安で譲ってもらいました。またアメリカでは日本と違って主治医(Primary Care Physician, PCP)にまずは診てもらうことになり、私は留学先の大学で設定された主治医がおり、健康上で気になることはすぐにメール等で相談しました。

3. 研究者留学先で役立つ小ネタ

留学先の様々なシーンで日本人代表になる可能性が高くなり、日本文化の良さをアピールできると喜ばれます。

そこで留学先のお土産でウケが良かったものは以下になります。

【留学先でウケが良いお土産】
・抹茶系お菓子
・もち系お菓子
・お菓子詰め合わせ

上品なお土産も良いのですが、日本文化が身近に感じやすいスーパーで買える日頃のお菓子の方が意外にも喜んでもらえた印象でした。他にも自分の出身地の特産品など、お土産にストーリーがあると喜ばれました。

また留学先の文化によりますが、私が留学したアメリカではポットラック(持ち寄りパーティ)がよく行われていました。私も現地の食材を利用して色々と試してみたのですが、簡単に作れて、持ち運びしやすく、ウケが良かったものはこちらでした。

【留学先でウケが良いポットラック料理】
・巻き寿司、稲荷寿司
・鳥の唐揚げ
・フルーツ白玉

4. さいごに

留学の全体像を知っていただけたでしょうか?
もちろん詳細部分は個々人で異なりますが、皆さんの留学へのハードルが少しでも下がれば嬉しく思います。

異国の地で研究するのは大変だと思う方が多くいるかと思いますが、慣れればその国や土地が好きになります。またそこで交流した人々との思い出から、留学先が第二の故郷になります。私も帰国してから旅行で留学先を訪れたことがあり、研究室のメンバーや友人に再会することでき、チャンスがあればいつでも遊びに行きたいと思っております。また今でもその当時知り合った研究者と交流を続け、一緒に共同研究も続けております。

研究者としての留学に興味が出てきた方はぜひ行動に移してみてはいかがでしょうか?

実際に私が読んで、留学する決心を後押ししてくれた本をオススメします。

夢を持ち続けよう!

今回は以上になります。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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