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本当の豊かさとは

日本は平和だ。
夜中に一人でコンビニまで歩くことができる。
お財布や鞄をフードコートに置き去りにしても、そのまま戻ってくることも稀じゃない。
この事実は世界的に見ても、日本人が誇りに思う一つの長所だと思う。

でも私は移民国家であるニュージーランドで、現地の人だけではなく、いろんな国のいろんな環境からきた人たちと出会うまで、どれだけその状況が恵まれているか、理解していなかった。



語学学校に通っていた時に、出会ったイラン人のおじちゃん。
1980−1988年にかけて行われた、イラン、イラク戦争 幼少期をその戦争と共に過ごした彼は、いまだに爆弾サイレンの悪夢に起こされるという話を聞かせてくれた、


私が働く牧場にはいろんな国籍の人がいる。

南アフリカ人のマネージャーは、自分達の子供を自分の母国で育てることはもうしたくないといつも言う。
子供たちが誘拐される恐怖から、一瞬たりとも逃げることはできない。
ましてや子供一人で遊ぶこと、どこかにいくこと、ごもっともだという。
いまだに過去の歴史から続くアパルトヘイト、人種差別の連鎖が止まらない、彼らの母国では、日本人の私が想像しがたい、残酷な事件が毎日のように今も起こっている。



同僚の一人の故郷、イスラエルでは、ユダヤ教、ムスリム教、キリスト教、3つの宗教の聖地であるエルサレムがある。
宗教間の争いによる、爆弾、テロ、そして戦争。
彼ら自身がいくら平等で平和な世界を願っていても、メディアの印象錯誤による、世界が向ける彼らへの不信感。自国のパスポートを持っているだけで、疑われることもしばしばあるという。


インド人の同僚もいる、
いまだ階級社会のインド。彼は自分と同じ階級でない愛する女性と結婚するためにニュージーランドに来たという。



彼らは生きるために、自分や家族の人生をよくするために、ニュージーランドに来た。
いつも笑顔で、ナイスで、いちワーカーとして、他の国に来て働く、私と何ら変わりない彼らの過去や、奥にはそういった過酷な経験がある。
彼らが語る、戦争、差別、テロ、殺害、貧困。すぐ身近に起きているそういったストーリーの中でも、そこでちゃんと生活している人がいて、自分の故郷や文化に対する愛があって、それでも国を逃げてここまでこなければいけない事実がとてもリアルで、言葉が出なくなるような衝撃を受けたのを今も覚えている。

彼らと働いていて、日本人との違いを一番に感じるのは、生きる力の強さ。
壮絶な過去があるからこそ、そこから自分の生活や自分の国をより良くしたいという意志の強さ。
そして、小さなことに感謝する。家族が毎日そこにいること、仕事があること、美味しいご飯が食べれること。



日本は、世界に誇れるほど豊かな国なのに、なんのために生きているのかわからない、なんのために働いているかわからないという人間で溢れている。

何を隠そう自分もニュージーランドにくるまではその一人だった。
なんとなくみんなと同じ学校に行けば、みんながいいという企業に勤めれば、みんなの意見に合わせてれば、なんとなくいい人生を歩める。
別に無理に頑張らなくても、戦争に巻き込まれることもないし、道を歩いてれば、テロリストや、強盗に襲われることも滅多にない。
なんとなく頑張れば、それなりのお金はもらえるし、貧困で死ぬこともない。
選挙に行かなくたって、誰かが国をなんとなく良い方に導いてくれる。

実際、日本の選挙の投票率は世界で135位という、先進国ではとても信じ難い低さだ。


以前ニュージーランドの語学学校に行った時に、各国の政治、経済について話し合ったことがある。
イラン、マレーシア、チリ、アルゼンチン、ブラジル、スコットランド、韓国、そして日本。
みんなが熱く話し合っている中、日本人だけ自国の総理大臣のフルネームも言えなかった恥ずかしい経験をした。



別に、戦争の経験や、貧困の地域に行って生活してみろ、と言っているわけではない。
そして政治に興味がなくなるほど、自由に平和に暮らせているのはいい国の証なのかもしれない。
でも、自分の国や自分の状況がどれだけ恵まれているのか、そしてその状況は永遠に続くわけではない、ということを理解してほしい。


日本も初めから平和で平等な国だったわけではく、誰かが自由や権利のために戦い死んでいった過去がある。1945年、第二次世界大戦後にやっと日本で女性が投票できる権利を得ることができたのはつい最近。

そして、日本の民主主義は国民によって成り立っているということ。
自分次第で日本の未来は変わるということ。
日本の未来が変わるということは、国民である私たちの生活も変わるということ。




そして、これだけ技術が発展し、便利で、平和で、なんでも手に入る日本。

多くの人が、本当の豊かさを失っているように私は感じてしまう。

美味しいご飯が食べれて、家族の顔を見て笑い合うことができて、大切な誰かにプレゼントを買うことがお金の余裕があるということ。
外的な要因からくる理不尽な何かに脅かされずに生活ができるということ。


別に、高級車を持っていなくても、ブランド物のバッグを買えることができなくても、インスタグラムのフォロワーが少なくても、心は豊かになれるということ。

周りの煌びやかな物質に目を向け、必死に追いかけるよりも、今自分が持っている状況を理解し、大事にし、育ててあげることが、大事なんじゃないかな、と私は思う。

自分の意見を持ち、自分の足で自分の人生を歩むこと。そしてそのスタートラインが日本人というだけで、どれだけ恵まれているか知っておくこと。


私を含め日本人として、日本で生まれ育った人間が、客観的に自分の状況を見つめ直し、理解するのは難しいことだと思う。
私はニュージーランドで、たくさんの人種に囲まれ生活し、初めて日本について学ぶことがたくさんあった。


だからこそ私はもっといろんな世界を見て、この貴重な自分の経験や気づきを、書き続けて、発信しつづけたい。そして、一人でも多くの人の気づきや助けになれればな、と願っている。

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