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スタンダードを知る ~「文章はつかみで9割決まる」おまけ原稿 #2~ 

こんにちは、ライターの杉山直隆です。

前回の記事で、かつての私が
「定番パターンをマネしているのに、つかみが書けなかった」こと。

その大きな原因は、「読み手を理解していなかったこと」にあった
とお話ししました。

「このままではいつまで経ってもつかみは書けない」。そう感じた私は、読み手を理解するために必要なことを試行錯誤し始めました。

そこで行き着いたのが、「スタンダードを知る」ことです。

『文章はつかみで9割決まる』に載せなかった原稿を、以下に掲載します。

スタンダードを知る


 つかみを考える時に意識しているのは、「スタンダード」を知ることです。
 スタンダードとは、そのジャンルにおいて「普通」「常識」とされていることです。
 たとえば、日本に住んでいたら「水道水は飲める」のが普通です。しかし、世界を見渡せば、それが普通ではないことだと気付きます。
 これはほんの一例ですが、何事にも「スタンダード」は存在します。それを知っているかいないかで、つかみも文章全体も大きく変わってきます。

 たとえば、「常識をくつがえす」のはつかみのテクニックの定番ですが、常識がわからなければ、この手は使えません。
 「読み手の疑問を代弁する」というつかみも、一般的な読み手がどの程度の常識を持っているかが分からなければ、何が疑問なのかが分からないので、代弁しようがないわけです。

 もちろん、ちょっとググればわかることもあるのですが、それだけでは判断できないこともあります。それが分からないと、どの内容をつかみに持ってくるのが良いのかが判断できず、結局、当たり障りのない平凡なつかみを書くことになりがちです。

簡単過ぎる入門書でも大丈夫?

 効率良く「スタンダード」を知るために、私が実践しているのは、まず、できるだけ優しい入門書を読むことです。
 最近はネットで入門的な記事を読む人が多いと思いますが、書籍は必要な情報が網羅されていることが多いので、私は書籍派です。

 当初は「仕事で使うのだから、簡単すぎる入門書なんて参考にならない」と入門本のなかでも難しそうなものを読んでいました。
 しかし、最初から背伸びすると理解できないことに気づき、学生や新社会人を対象とした入門書を読むようにしました。
 超初心者向けの本でも、精読すると、意外と重要なことを網羅しているものです。それを理解してから、もう少し難しいものに挑戦しても遅くはありません。

「マンガでわかる○○」はアリ?



 最初に基礎知識を身につけられれば良いので、今では「マンガでわかる○○」のようなマンガ本も活用しています。
 おすすめは学研から発刊されている小学生向けの「まんがひみつ文庫」。「チョコレートのひみつ」「プレス加工と溶接のひみつ」「包装のひみつ」など、1テーマに1冊を割いてさまざまな秘密を解き明かしているマンガ本で、業界のトップ企業が監修しているものが多いので、基本的な知識をさくっと身につけられます。
 もちろん入門書を1冊読むだけでは足りませんが、簡単な入門書で最低限の基礎知識を身につけてから、もう少し難しい本やネットの記事などを読むことで、早く理解できるようになります。

 また、業界について知りたい場合は、その業界の企業が公開している新卒採用サイトも良いでしょう。学生向けに業界のことを優しく解説してくれているので、大人も基礎知識をつけるのに役立ちます。

スタンダードは時代によって変わる

 このように、あまり詳しくないジャンルの基礎知識をすぐにつける必要がある人は、この本を読んでいる人の中には少ないかもしれません。
 実は、これは多様なジャンルの企業や人を取材するライターは日常的にしていることです。毎日、取材相手の業種が異なると、短期間で最低限の知識を一夜漬けする必要があるのですね。

 ただ、基本的に同じジャンルの仕事しかしない、という人でも、自分が詳しいジャンルの「スタンダード」をおさらいしてみると、意外と勘違いしていることがあるものです。
 時代によっても、「スタンダード」は変わりますから、こまめに自分の知識をアップデートすると良いでしょう。

<★次回に続く>


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