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【映画感想86】ソウル・パワー/ジェフリー・レヴィ=ヒント(2010)


100本目指して週2で映画の感想を投稿しています。

今回は伝説のブラック・ミュージックのコンサート「ザイール‘74」のドキュメンタリー、
「ソウルパワー」を観ました。

最近続けて観ている音楽関係の映画の中でいまのところ1番良かったです。
ほんとにみてよかった。

「ザイール‘74」は“キンシャサの奇跡”といわれるモハメド・アリがジョージ・フォアマンとの対戦前に行なわれたコンサートで、
ファンの間で「すげえやばい祭典」として語られながらも全貌がわからなかったところ、当時のモハメド・アリの試合のドキュメンタリーの編集中にコンサートのフィルムが撮影されている事を知ったヒンテ氏が編集・監督して完成したのがこの映画だそうです。
(元のフィルムの時間は125時間!!!)

監督曰く
この記録の存在を知っているということが、私の肩にのしかかった。もし自分がこれらの記録に日の目を見させようとしなければ、私はこれらのイベントを人々に気付かなくさせ、みんなが起こったことを見聞きする機会を奪うことに加担するような気がした
(引用:https://www.barks.jp/news/?id=1000061168

まず冒頭の字幕が、

『1974年、H・マセケラとS・レヴァインは
アフリカで音楽祭の開催を計画を立てた。
2人の夢はアフリカ人と米国の黒人を共通の祖国のステージで共演させることだった。
そこでアリvsフォアマンの世界タイトル・マッチとの同時開催をプロモーターのドン・キングに申し入れた。キングはザイールのモブツ大統領から試合と音楽祭開催の承諾を得たが、資金提供は断られた』

と言う内容で、資金提供が断られた…というくだりにバックで流れるのがジェームス・ブラウンのSoul Power。「ソウルが欲しいなら取りに来い」の歌詞がそこに被ってそのままステージ映像になるんですよね良い。

次にプロモーターのジョン・キングの開演挨拶が流れました。
「3日間の模様は映画化を予定」と言ってたけど、実現できなかったってことだろうか。結局リベリアの投資家がスポンサーになって三日間の音楽祭と撮影ができたって字幕にあったから、さらに映画作成となると資金面の問題もあったのかもしれません。この辺の事情が気になる。

伝説の音楽の祭典というからにはミュージシャンのお宝ステージ映像ががんがん流れる映画なのかなと思ってたら、むしろ運営側のシーンがすごく多かったです。実際にそうやって撮影していたのだろうけど、スタッフと一緒にカメラを持って行動してる感じ。

打ち合わや契約内容の交渉、航空券の手配、
受付での名札の配布、料理のサーブ、
客席のコンクリートに番号を一個一個ペンキで書いているところ、さらに高いとこの足場を組んでる途中?の人がこっち見てるカットもあって、そう、ステージって、足場を一本一本作ってるひとがいるからできるんだよなあともおもったり。ミュージシャンに対してだけではなくそこに存在した人たちへの愛とリスペクトも感じられて好きでした。

アフリカに向かう飛行機内で、肩がふれるほど狭い空間で笛とかギターとかヴァイオリン流しながら空き缶やグラスを叩いて「ルーツに帰れ!」とみんなでワイワイ歌ってるところとか、あとたぶミュージシャンが町中の子供達と演奏してるところとかめちゃよかったんだけど、うつってたひとたちは誰なんだろう。
音楽詳しい人ならわかるのかな??? 

MCで印象に残ったのが、アフリカのミリアムマケバが曲について「この音はなんですか?と聞かれるとそれは私の母国語だと怒る」といっていたところでした。彼女はわたしの名前はーーと母国語で話し出すんだけどそれはフランス語と全く違ってて、わたしの耳にもまるで音楽に聴こえました。支配者には発音できないから、「クリック・ソング」と呼ばれるそうです。

クリック・ソングで検索したら同様のMCをしてる
マケバの動画が出てきました(ここでは支配者じゃなくて英語を話す人って言ってる)

地声で伴奏が少ないのに迫力がある。

この音楽祭はアメリカ系のブラック・ミュージシャンとアフリカ系のブラック・ミュージシャンが一堂に介しているんだけど、
アフリカとアメリカではい言語も歴史の背景も違っているからには音楽も絶対違ってくるわけで、同じブラック・ミュージックと言っても一括りにしてはいけないんだなと思いました。故郷を奪われたことと言葉を奪われたことの違い、よく考えたら当たり前なんだけど考えもしなかったので、無知であることは軽んじることでもあるのかもしれない。

どれだけの後世のファンがこの映像を夢想していたことか。ステージ映像はかなり削られてしまっているので、正直コンサートフィルムとしては物足りないかもしれないと思います。
ミュージック映画にしては演奏が少なく、ドキュメンタリー映画にしては雰囲気重視なカットがやたら多い。(レビューみたら編集がめちゃくちゃで前半は退屈だと書いてる人もいた)

ただ、冒頭の機内セッション、アリのインタビュー、ステージ映像のみ編集して充分一本の映画にできたところ、あえてポートレートのように当時そこにいた人たちを入れ込んでいるのはわたしはやっぱりいいなあと思いました。 
125時間の中からわざわざそのカットをピックアップしているわけで、好意的な解釈をするとミュージシャンも一般人も貴重な存在として平等にうつしているのは、黒人を尊厳のないもの、いないもののように扱われた歴史に対する意趣返しだったりするのかもしれないとも思います。目立つ人や声が大きい人だけ特別扱いはしない、俺たちは平等で、みんなでこのステージを実現したんだ、みたいな。
いやいやJBとモハメドアリのシーン多いじゃん、と突っ込まれれそうですがあの2人は王なので仕方がないです。王は国の象徴なので…!

最後に、映画の最後に語られた言葉を置いてレビューを終わりたいと思います。

この映画を見たら外に出て、ひとつやって欲しいことがある。通りを見渡してから自分に向かって言うんだ。
おれはれっきとした人間だ!


★いまAmazon Primeで観れるのでぜひ

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