【#2000字のホラー】『微睡/まどろみ』
都内の高校に美術教師として勤務している私は、この日の放課後、廊下で後ろから声を掛けられた。
「先生、話があるんですけど」
振り向くと三年の吉崎美咲が、ひとり所在なさげに立っている。
取巻きに囲まれて堂々としている、いつもの彼女とは別人に見える。
「え..どうかしたの?」
私がそう返すと、彼女は少し周りを見てから小声で答えた。
「あの..二人きりでお話できませんか?」
「え?」
私は逡巡した。
吉崎美咲と私に接点はあっただろうか?..
担任のクラスを持たない私に一体、何の話があ