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140字小説

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#掌編小説

小さな手

小さな手

「夕やけ小やけで日がくれてー」

歌に合わせ揺れる手を離さないように握り直す。
まだまだ小さな手が燃ゆる空を指さした。

「ねえおばあちゃん、すごいまっか!」
「本当、怖いくらい」

すると繋いだ手を両手で包んで、

「大丈夫だよ、ぼくが守ってあげる」

いつの間に伸びたのか、と影を見ながら微笑んだ。

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言葉の行方様企画『黄昏時』ふたつめ。

暁に消える人

暁に消える人

「時間」
「ん……」
「何か食べる?」
「いいや、帰ったら飯あるだろうから」

服を着てさっさと玄関へ向かう背中を見送る。

「じゃあまた」

肩越しに告げられたのはいつも通り先の見えない約束だった。
カーテンの隙間から漏れる暁光が忌ま忌ましい。
朝が来ても貴方が隣にいるなら、美しいと思える筈なのに。

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言葉の行方様企画『暁』

今も明晰な夢を見る

今も明晰な夢を見る

受話器から君の声が響く。
僕は頷いたり手を振ったりと身振りを混じえて返しながら、ああ幸せだ、と思う。

瞬間、ここが夢の中だと気が付いた。

今なら君の元へ駆けつける事もその手を取って逃げる事もできるのに。
聞いてるの、と怒る君に「聞いてるよ」と返すだけ。
僕の声が、君の声が段々震えていく。

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土曜日の電球さま企画『涙』。

今日見た夢日記も兼ねて( ̄∇ ̄*)ゞ