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過程削除

 戦いは突然の逆転劇で終わった。終盤まで圧倒的に押していた武丸は地に倒れ、武丸鬼人にサンドバッグにされていた華村武がいまは彼を見下ろしている。華村は敗者の武丸に向かって言った。

「貴様は何故俺に負けたのかわかるまい。あれほどの強さで圧倒していた自分がこの貧弱極まりない俺に一瞬にして逆転されるとはな。死ぬ前に教えてやろう。貴様は決して油断していたわけではなかった。むしろ貧弱極まりない俺を全力で殺そうと余裕で死刑になるぐらい攻撃した、だが、貴様は俺の技を知らなかった。俺の技は『過程削除』。成功に至るまでの過程を削除して即時に成功の瞬間を味わえる技だ。この技を発動すればどんな敵をも一瞬でしぬ。ついでに教えてやるが、この技が役立つのは戦闘だけじゃない。ヤりたい女の子とのデートやら奢りやらヤるまでのめんどくさい過程をすっとばして、いきなりベッドイン、しかも前戯で下手くそとか罵られる事なく、いきなり挿入までいけるのだ。即座に気持ちいい瞬間を味わえるのだ」

「な、なんだと!しかしその技だってレベルの違う相手には通用しないんじゃないのか!」

「レベルの差?ふふふ、過程削除は力じゃなくて願望の強さが全てを決定するんだよ。つまり弱ければ、弱いほど。モテなければ、モテないほど願望は強くなる。つまり俺は地上最強なんだ!」

「この俺が、この俺がお前如きにぃ!」

「これでトドメを刺してやろう!家庭削除!」

 そう叫ぶと華村武は全力で過程削除を放った。あたりには過程削除の全てが削除されるような鋭い光が飛んだ。だが、武丸鬼人は生きていた。

「あれ?何で俺生きているんだ?さっきのやつ食らったら確実に死んでるだろうに」

 武丸は体を起こして華村を見た。するとその華村は異様に青い顔をしてその場に立ち尽くしていた。

「あ……ああ。ま、間違えた。過程っていうつもりが家庭って言っちまった。アクセント「て」に入れちまった!ああ、かみさんが消えちまう!アイツが持ってる俺の今月の給料消えちまう!」

 突然華村の妻と子供がやってくる。彼女は眩しいぐらいの笑顔で華村に告げる。

「へぇ〜、あなたそんなに私たちを削除したかったんだ。お望み通り消えてあげるね。さよなら」

「待ってくれ!これは違うんだ!ただアクセントを頭に持ってこなかっただけなんだ!許してくれ!今から仲直りの過程削除するから!」

 この華村を見て武丸はつぶやいた。

「コイツ妻帯者だったのか。結構ヤる事やってんだな」

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