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誘拐犯

 僕が彼女を最初に見たのは昼下がりの公園だった。ベンチに座った彼女は日差しに照らされて眩しかった。恋をした。と言っていいのかわからない。ただ彼女に猛烈な執着心を覚えたのは確かだ。その日家に帰ってからずっと彼女のことを考えていた。彼女が欲しい。今すぐに。それから毎日彼女を見ていると自分の欲望に耐えられなくなってきて、とうとう僕は彼女を誘拐することを決意した。

 前日から一睡もせず真っ赤に腫れた目で僕は彼女を探した。彼女はいつものベンチに座っていた。僕は目を剥いて彼女の手を取りそのまま家まで彼女を攫っていった。

 玄関の鍵を閉めるなり僕は彼女の体に触れ、行為を始める。初めてなのかい?今まで他の男とこういうことはしたことなかったかい?僕はそう彼女にささやきその唇にキスをする。無表情の彼女。僕を受け入れてくれるのかい?僕は彼女の服を脱がし下着にしてしまう。その白すぎる体に僕の体が急に熱くなってくる。もうダメだよ!このままイッてしまいそうだよ。僕はたまらず彼女のブラジャーを引きちぎり、そして彼女のパンツの中に指を入れた。濡れている。僕は彼女を見て笑う。君もやはり僕を求めていたんだね。そしてパンツを脱がし高まった僕のものを挿れようとした瞬間だった。突然、玄関からピンポーンという音が聴こえたのだ。警察なのか!せっかく彼女と結ばれようとしていたのに!

 玄関から荒々しくドアを叩く音がする。もはやこれで人生の終わりと思い目をつぶって僕はドアを開けた。するとそこには警官じゃなくて浮浪者のおっさんがいたのだ。おっさんはつばを飛ばしながら叫んでいた。

「おめえ、おらのダッチワイフ盗んだべ!毎日毎日俺のダッチワイフ見つめてよ!盗むつもりだったんだべな!あんれはオラが十年前に拾ってそれからずっと使ってるものだべさ!昨日も一晩中使っていたべさ!オラはあれがなかったら性欲処理できねえべさ!さっさと返せ!」
「ダメだ!これは僕のものだ!今までずっとダッチワイフ探してたけど、これほど素晴らしいダッチワイフはいなかった!これはアンタより僕が持ってるべきなんだ!」
「人のものを盗んで何言うだ!おめえなんか警察に通報してやる!」



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