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寝物語

 とうとう一つになれたんだね。と大は自分の胸に頭を乗せている佳代子に向かって言った。佳代子は大の言葉を聞いてにっこりと微笑んだ。大はそんな佳代子を見て一つになれた喜びを再度噛み締めた。だが彼には一つ気になる事があった。それは彼が佳代子の過去を全く知らないという事である。勿論恋人の過去など知らなくても付き合っていけるだろう。逆に知ったが故に失望して関係が終わってしまうこともあるだろう。しかし大は佳代子の事を全て知りたかった。自分と佳代子は二人で一人の人間。互いの全てを分かち合えるはずだと思ったのだ。自分もそうだが佳代子だって他の男と付き合ってきただろう。しかし川は必ず海に辿り着くように、自分も佳代子も永遠という名の愛にたどり着いたのだ。佳代子は今、大の横で海中で静かに横になっている。このまま佳代子に何も聞かないでずっとこの海に漂っていようか。大は佳代子を見てそう考えた。しかし佳代子はずっと自分を見ている大が気になって尋ねたのだ。

「なにか私に聞きたいことあるの?」

 この佳代子の言葉に促されて大は勇気を出して佳代子に言った。

「僕らはこうしてやっとひとつになれたんだ。もう何も隠す必要はないよね。だから互いの過去を全て話さないか?僕は君のことが知りたいし、君も僕のことを知りたいだろ?」

「大……。わかったわ。私のこと全て話すわ。ちょっと驚くかもしれないけど、我慢して聞いてね」

 大は佳代子の過去を聞いてショックのあまりしばらく口さえ聞けなかった。小学校時代から始めたパパ活。高校時代年齢をごまかしてアダルトビデオに出演したこと。そして大学時代に最大100人同時に付き合ったことなど。しかもそれと同時に小学校時代から続けていたパパ活。大は佳代子の話に何度も耳を塞ごうとしたが、だが愛する女(ひと)を受け入れようと苦痛にこらえながら最後まで聞いた。話を聞き終わった後彼は思わず佳代子を抱きしめた。この女(ひと)を一生守る。彼は佳代子に向かって一生そばにいると誓った。

「君を一生守る!どんなことがあっても君を話したりなんかしない。だって君は何度も洪水して河川からそれても、それでも僕と同じようにこの永遠の愛の海にたどり着いたんだから」

 佳代子は大の言葉を聞いてニッコリと微笑んだ。そして大に向かってあなたの過去を話してほしいと言いかけた。しかし突然彼女は口を止めてこう言い直した。

「あっ、やっぱり言わなくていいや。どうせあなたの過去なんてつまらないでしょ!実は大学に入ってからもずっと童貞で、それで風俗でやっと筆おろしをして、調子に乗ってどっかのブスと付き合ったけど、そのブスにもセックスが下手だってバカにされてポイ捨てされて、でたまたま近くにいた美人の私にアプローチしたらうまく言ったんで、さあエッチまで持ち込むぞって高いものをプレゼントしまくってようやくエッチできたってことを言いたいんでしょ?そんなの聞いてもつまらないわよ。何が永遠の愛の海よ。私は周回魚なのよ。海に出てもまた川に戻るわよ。あんたはずっと愛の海とやらにいなさいよ。そこでひとりオナニーでもしてればいいんだわ!」


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