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宇宙論(23)

 読者の方からオーダーをもらったので、作品が生まれる瞬間について。

 僕の場合、全ては偶然と必然のあいのこである。何かを作り始める時、書き始める時、描き始める時、計画は何も立てない。ただ、ただ、行きずりに身を任せる。身体の反応に率直になる。素直になる。

 思考は目まぐるしく回るようで、すっと静かなようで、とりとめもないようで、沈黙でもある。無心でもある。豊かでもある。だからとっちらかったりもする。そのすべてが愛おしい。

 作品が生まれる瞬間は至福である。自分はこのために生まれてきたんだと確信する。誰が聞くでもない、誰が読むでもない、誰が見るでもないものであったとしても、僕の中で完結してもそれで面白いのだ。教訓もある。でも現代にはSNSという素敵なものがあるからささやかに共有する。こんな発見をしたよ! 僕は面白いと思ったよ! そんな感じ。

 僕は世界中の人の創作が見たい。日常が見たい。感動を共有したい。いいね! やスキを共有したい。嫌な気持ちも。そんな思いで溢れている。

 作品が生まれる瞬間、それは誕生である。Birth。今再び生まれるということ。魂の鼓動。胎動。不可思議。謎。

 なぜこんな自由が赦されているのか。悲しい運命[さだめ]を背負った人類に与えられた福音。それが創作。

 日常そのものが創作。家事、育児、買い物、お出かけ、お喋り、仕事、すべてが創作。そのすべてが愛おしい。

 作品が生まれる瞬間、それは情熱。Passion。絶えることのない意志。魂の躍動。情動。摩訶不思議。空[くう]。

 すべてのことが無駄じゃない。そんな言葉を僕は信じきっている。本当のことかは知らない。あくまで僕の宇宙観である。

 だから、即興で(基本的に僕はあらゆることが即興なのだけれど)絵を描いていても失敗ということはない。すべてが無限の足跡[そくせき]。始まりがあって、そのあと、ふと終わりを感じる。そしてまた何かが始まる。ただそれだけ。

 生きている。ただそれだけ。

 創作は豊かだ。人類に赦された愛の表現。たしかな手触り。無限。

 作品が生まれる瞬間、それは愛。I love you。それだけが伝えたくて僕は何かを表現している。何かを創り続ける。

(2024.4.27)

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