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こんな人がいることを忘れない

世の中は活躍する人だけではない


今年も、いろいろな人が活躍した。
新聞が全盛に時代には、紙面を賑わしたと言われただろう。
そんな中、役所広司主演の「perfect days」がちょっとしたニュースになった。
この映画は、清掃業務を行っている男性を主人公にしているが、もう一つの主役がトイレである。
トイレの清掃人を主役にして、映画がヒットするわけがないが、
この映画を見終わった時、公衆トイレがいつもキレイに保たれている訳について、
ついつい考えてしまうはずだ。
もちろん、これはトイレを掃除している人の努力だけでなく、日本人のモラルの影響も多いと思う。
主人公の役所広司が、便器のウラ面を、手鏡を使って念入りに確認しているさまは、日本人気質だ。
見えないところをキレイにするのは、見えないところでも努力をするということだろう。

早朝のジョギングで出会った人

5時から6時にかけて、毎日近場をジョギングしている。
まだ、通りには人の気配をかんじることのない時間。
たまに、仕事へ出かける人や、同好の人々に出会うだけ。
が、時に、散歩をしながらゴミを拾っている人を見かける。
片手にゴミ袋を下げ、もう片手にはゴミばさみを持ち、ゴミを拾っているのである。
わたくしの縄張りには、男性が1人と女性が1人いる。
こういう人は、ボランティアでゴミを拾っているわけではないだろう。
きっと、ちょっとした行為だから、早朝の人通りの少ない時間を選んでゴミを拾っているのだろう。

歴史は際立った人々の歴史だ

歴史上の人物は、目立ったことをした人間の歴史だから、殺戮者ばかりが主人公だ。
庶民など歴史のつまみたいなものだ。
それは現代でも変わりはない。
人々は、眼の前の世界へ目を向けず、話題に上がった人物にばかり関心を寄せる。
その人物が、良かろうか悪かろうか、そんなことお構いなしだ。
まるで、ひと握りの人々で世界が成り立っているように。
目立った人物がどんなに活躍しても、世の中が良くなるわけではない。
それが分かっていても、人は、有名人の言葉に耳を傾け頷いている。
歴史を振り返ると、戦争で活躍した人々は皆英雄だ。
人をたくさん殺したら英雄と言う時代の本質は、今も庶民の中では変わらない。
私達は、歴史を生きているのではない。
生活が、毎日の生活が自分にとっての歴史なのだ。

リーダーの先生の思い出

高校時代のこと。
英語のリーダーの先生を、みんなが尊敬していた。
尊敬は、バス通学の生徒が、ある日、リーダーの先生の姿を車窓から見つけたことから始まった。
バス通学の生徒は、雨の日も風の日も雪の日も、道路のゴミを拾いながら通勤する先生の姿を見つけたのだった。
卒業が近い日、バス通学の生徒の呼びかけで、先生と一緒にゴミ拾いをすることになった。
10人くらいの生徒が集まって、先生と一緒にゴミ拾いをした。
キリスト教徒の先生は、そういう生徒の姿をにこやかに迎え一緒に学校までゴミを拾った。
そして、生徒たちは、最後学校の正門で先生に感謝の拍手をしたのだ。
これは、わたくしの高校時代の思い出だ。
その先生がその後、どういう人生を送られたかは分からないけれど、その頃の生徒の心に残ったことは間違いがない。
目立たない存在の先生だったけれど、残されたものは大きかった。

ごみを拾う行為を誰も称賛しない

ごみを拾ったら称賛されるので、ゴミを拾うわけではない。
ゴミを拾うかどうかは、その人の気持ちが決めることだ。
もし、ごみを拾うと、ポイントが貯まるなら、ゴミを拾う人がかなり出てくるかもしれない。
人は、損得で行動をすることがほとんどだ。
今、損得勘定無しで、生きていられたら、その人は幸せな人だ。
わたくしたちの生活は、物事を秤にかけて生きていることが多い。
自分から、ごみを拾う行為は、物事を秤にかけない行為だ。
きっと、その人の心の中には、不動の生活の指針があるに違いない。
信念ほどではないけれど、その人にとって生きることが充実することなのだろうと思う。
称賛されなくても、お金にならなくても、強制されなくても、
人の役に立つことが出来るのは、なんて素敵なことだろう。

残りの人生を人はどう生きるか

わたくしは、家の周りのゴミ拾いは出来るけれど、
散歩をしながらいろいろなところのゴミ拾いは出来ない。
出来ないけれど、そういう人がいることに感謝をしたい。
世の中には、これと似た人はたくさんいる。
ただ、そういう善人は目立たないだけ。
世の中が気持ちよく回っているのは、たくさんの善人が支えているから。
「見えなくてもいるんだよ。」と、誰かが言っていた。
見えなくてもいることを信じて生きたいと思う。
老後は、善人になれるチャンスがたくさんある。
善人になれなくても。善人に拍手ぐらい送れる。
心でそういう人を応援したい。

旗じいの話を、最後まで聞いてくれてありがとう。
世の中にいっぱいいる良い人々に、感謝の念を忘れないように生きたいね。

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