見出し画像

感想『ネコシェフと海辺のお店』標野凪

今日は「猫の日」ですね!
折角なので、書店で素敵な"猫"の本を探してきました。
今回はそのうちの1つ、
本日発売された『ネコシェフと海辺のお店』の感想です。

こんな人に薦めたい・・・
▼自分の生き方に悩む、全ての人に
▼仕事や恋愛、育児などに疲れてしまった人に
▼ほっこり癒される話が読みたい人に


『ネコシェフと海辺のお店』あらすじ

海辺にぽつんと佇む、料理上手なネコシェフの店。ここに辿り着くのは、仕事や恋愛、子育てなどに悩み「逃げ出したい」「変わりたい」と願う人ばかり。マイペースで饒舌なシェフは、旬の魚を使って腕をふるいます。美味しい料理に、ほぐれていく心。自分の本音に向き合った時、彼女たちは小さな一歩を踏み出します。疲れた心にそっと寄り添う物語です。

『ネコシェフと海辺のお店』感想・レビュー

1. 人の悩みは千差万別

自分の生き方に悩む、5人の女性達が登場します。
専業主婦としての自分の生き方に悩む"千晶"。
成長の無い自分自身に嫌気がさす"単衣"。
波風立てず、いい子でいようと苦しむ"梨央"。
親としてやってきたことは間違っていたのか、と悩む"比呂乃"…など。
キラキラして見える人も、実は悩みを抱えて生きている。
きっと、皆さんもこのなかの誰かに共感すると思います。


第3章では、友人との関係や進路に悩む"梨央"と過去の自分を重ねました。高校生の頃に経験した、あの女同士の独特の空気感。
私もそんなことあったなぁ…なんて思い出して、心がざわざわしました。

第4章では、子育てに悩む"比呂野"を自分の母と重ねました。
母も「可愛いから」と手をかけすぎて、いつも観葉植物を枯らしてしまっていました。
「なんでいつも枯らしちゃうんだろう」と落ち込んでいる母に、「もっと適当でいいんだよ。水なんて毎日あげなくていいし。見守るくらいがちょうどいい」と言うと、「適当でいいんだ」と納得したようでした。
今では、家の中に4つも5つも元気な鉢植えが並んでいるそうです。

子育ても同じなのかもしれませんね。
「大切だからこそ、ほんの僅かに手を添えるだけでいい」

2. つながる世界

本作は5章に分かれており、各章ごとに主人公は違いますが、物語はすべて繋がっています。
なので、ぜひ「1章から」順に読んでいただきたいです。
読み進めていくと「あ、、そういうことだったのね!」という発見があります。この人には、悩みなんて無いんだろうな…と思って読み進めると、意外なことがわかったり。あの時の花束には、こういう背景があったんだ…とわかったり。
そういった登場人物のつながりが見えるのも、本作の面白さの一つです。


そういえば数年前、専業主婦をしている友人に、こう言われたことがあります。
「若菜は仕事頑張っててえらいよ。バリバリのキャリアウーマンって感じでさ。私もそんなことしてみたかった。羨ましい」
私からすれば、優しい夫と可愛い子どもに恵まれ、専業主婦をしている友人のほうが、むしろ"羨ましい"と思っていました。何故"キャリアウーマン"的な生き方が羨ましいのか、よくわからなかったのです。
でも、本作を読んでやっと理解できた気がします。
生き方に正解なんて無いからこそ、皆自分の生き方に悩むんですね。

私も、ネコシェフの言葉に背中を押されました。
「我が道を行け。信じてそのまま行け!」

3. おいしそうなネコシェフの料理

サバトラ柄のネコシェフ。
「土鍋で鯛めし作ってやろうか?寄ってけよ」と
可愛い見た目に反して、とっても男前な口調です。
そして「食うか?」と勧めてくれる料理は、どれも物凄く美味しそう。
鯛飯に、ハマグリのお吸い物、ホッキ貝のクラムチャウダー、鱈のブランダード、タルタルソースのアジフライ、バターを溶かしたねこまんま…。
読んでいて、思わずお腹が鳴ってしまいました。笑
そして、ネコシェフも一緒に食べてくれるところが素敵です。
誰かと食べるごはんは、おいしさ2倍ですよね。


終盤で気が付きましたが、ネコシェフのあの男前な口調…もしや、海辺で会う漁師さんの話し方がうつったのかな。
なんて思って、ちょっとニヤリ。

『ネコシェフと海辺のお店』感想まとめ

いつもハラハラする場面で登場するネコシェフ。
まるでピンチに駆けつけるヒーローのようですが、ネコシェフはこう言います。
「俺はネコだぜ。気の利いたことなんて言うわけないだろ」
「答えはもう、自分の中にあるはずだ」
ネコシェフは決して、彼女たちの人生を直接変えるわけではありません。
彼女たち自身が、自分の中にある答えに気が付いて、自分で道を選んで、頑張って一歩踏み出します。

そして、そんな彼女たちの背中を後押しする、ネコシェフのおいしい料理。
心がほっとする、あたたかい物語でした。

生き方に悩む全ての方に、そして猫好きの方にも、
ぜひ読んでいただきたい一冊です。

#猫の日


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?