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12歳の弟が描いた小さな大酋長

母が亡くなったとき、弟は高校生でした。

残された家族はそれぞれが自分のことだけで精一杯で、弟は自分でお弁当をつくっていました。

新聞紙に包まれたアルミの弁当箱に詰められたご飯と海苔と卵焼きとウィンナーソーセージ。

ラグビー部で無口な弟を思い浮かべると、このドカベンが現れます。

弟が小学校6年生のときの卒業アルバムの表紙に描いた絵がトップ画像の『小さな大酋長』という本の表紙です。

この本を思い出したのは、くなんくなんさんのnoteです。

うちにもありました。くなんくなんさんと同じように父が買ってきたものです。内容は覚えてないけど表紙絵だけ覚えていて。絶版とのことだけどもしかしたら誰か持っているかな。

弟が持ってました。
本と一緒に弟が描いた絵もありました。

びっくり。

本が残っていることもその絵があることも。

12歳の弟が描いた『小さな大酋長』
なぜ『小さな大酋長』だったのか。

南太平洋の小さな島の12歳の少年プアは、臆病で意気地なしとからかわれている、花とオカリナが好きな優しい心の持ち主です。そんな彼が大酋長の父が亡くなったことで時期酋長の候補者として成長していくお話しです。

父親の仇のシャチと戦わなければならない、シャチとプアの交流がこの表紙絵のように色々な色が混ざり合い美しい。このお話しに惹かれてこの絵を卒業アルバムの表紙にした弟。

プアと同じ12歳だったから?
プアと同じに動物が好きだったから?
プアと同じに優しかったから?
プアのように自分に自信がなかったから?
本当の勇気とはなにかを感じたから?

弟の描いたシャチの目がかわいいし、プアが逞しい。プアの髪の毛、脚に躍動感があります。

母の病院に鉢物の花を持っていった弟。
「根付くものはだめ。かわいそうだけど、持って帰させたわ」と病床でいい放った母。

17歳の弟がどんな気持ちで花を選び、どんな気持ちで持ち帰ったのか。

わたしには病院にくるな、と言ったっけ。
「あなたは仕事もあるし遊びたいだろうし、ここにくることよりやることあるでしょ」と。

動物を拾っては育てていた弟。
怪我をした雀は、すずちゃん。
アオダイショウは、あおちゃんと名付けていた。
ダックスフントを拾ったのも弟。その犬はわたしが引き継いだけど。

誰よりも母を求めていたであろう弟。
12歳の弟と、高校生の弟と、今までの弟。

3人の子どもの父親になった弟もきっと
12歳のプアがどこかにいると思う。

くなんくなんさん
この絵に出会うことができました。
ありがとうございました。

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