見出し画像

経営ビジョン って誰のためだっけ?

2019年もわずかになりました。本年もありがとうございました。2019年は、非常に多くの方と出会い、また、自分自身の職務内容も大きくジャンプアップできた1年だったと感じています。

筆者プロフィール

私の現在の肩書きは「Branding Strategist」。主な仕事内容は、企業や事業、商品、人のブランドを立て直す仕事です。世間一般では、リブランドやリブランディングと呼ばれています。リブランディングプロジェクトでは、創業からの企業の沿革、企業内に受け継がれるスピリッツ、現在の事業ドメイン、組織体制、業績など様々なデータ情報をインプットさせていただきながら、【変えてはいけないもの(本質的価値)】と【変えていいもの(可変要素)】を明確にし、複雑化する社会でも決して揺るがない強いブランド/組織を作っていきます。プロジェクトによって求められるアウトプットは様々ですが、本年の仕事で多く求められたのは、企業の「Vison」「mission」「Value」の策定/明文化でした。

0.あれ? これでいんだっけ?

リブランディングプロジェクトを通じて、「Vision」「mission」「Value」を何社も何社も定義してきました。その全ての案件において、定義した最終アウトプットに悔いはなく、クライアント様からも非常に多くの御礼をいただいております。ただ、かず多くのプロジェクトを繰り返す中で、あくまで個人的ではありますが、一点、疑問点があるのです。

それが、「Vision」って結局、誰のため?誰視点で描くものってことでした

1.一般的な「Vison」「mission」「Value」

一般的にWEBや書籍で「Vision」「Mission」「Value」という言葉を調べるとこのような結果にたどり着きます。

Vision…会社や組織の目指す姿。将来の見通し。
Mission...Vision達成に向けた果たすべき役割/使命。
Vlaue...提供内容や行動指針、価値観。

図式化するとこのようになると考えます。

画像3

Visionはゴール地点、Missionはゴールまでの地図、Valueは前に進むための武器や道具ではないかと考えます。

2.有名企業の「Vision」「Mission」「Value」

ここで、有名日本企業の「Vision」「mission」「Value」をいくつか見てみます。

花王株式会社
Vision...生活者、顧客を最もよく知る企業に
使命(Mission)...豊かな生活文化の実現
基本となる価値観(Value)...よきモノづくり、絶えざる革新、正道を歩む
   -引用:https://www.kao.com/jp/corporate/about/policies/kaoway/
キリンホールディングス
Vision...食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となる
Mission...自然と人を見つめるものづくりで、「食と健康」の新たなよろこびを広げ、こころ豊かな社会の実現に貢献します
Value...熱意・誠意・多様性
   -引用:https://www.kirinholdings.co.jp/company/philosophy/
ヤフー株式会社
Vision... 世界で一番、便利な国へ
Mission... UPDATE JAPAN 情報技術のチカラで、日本をもっと便利に。
Value... 定義なし
  -引用:https://about.yahoo.co.jp/info/mission/

3.「Vision」「Mission」はだれ視点?

皆さんは、上記の事例をみて、どこか違和感がありませんか?
私は、仕事柄、かなりの数の定義文を見てきましたが、調べれば調べるほど、「Vision」「Mission」に対する違和感が強くなってきます。それは、上記3つの事例を見ただけでも分かる通り、企業によって「Vision」「Mission」持たせる意味合いが大きく異なっています。

詳しく見てみると、
花王やキリンの場合、「Vision」「Mission」の主語は「自社」にあります。【自社がどこに向かうのか】、【(自社が)どう動くのか】が明確に記されています。ただ、ヤフーの場合、主語は「世の中」です。【(世の中を)どうしたいのか】【(世の中)に何を提供するのか】が記されています。発想の起点がが自分たちなのか、世の中なのか。この起点と視点の違いによって「Vision」「Mission」の内容は大きく変わってしてしまいます。

4.自分の未来より、地球の未来

私は、「Vision」「Mission」はその組織に属する方や関係者が理解できないと意味がありませんし、すんなり理解できるのであれば、何が正しいということはないと考えています。
ただ、今年1年間仕事をして個人的に感じたこととして述べるならば、「Vision」「Mission」は、世の中起点/視点で定めるべきではないでしょうか。

悪意は全くありませんが、よくありがちな経営ビジョンに「○○No.1カンパニーへ」「○○の先駆者へ」などがあります。これらの言葉は、自社の道しるべとしては優秀であり明確で、組織の求心力は高いかもしれません。一方でドライな言い方をすると、これらは関係者以外にとって「そんなの関係ないわ。」「へぇー、勝手にどうぞ」という印象にしかなりませんし、そもそも世の中のほとんどの方は、たかが1企業の「Vision」「Mission」なんて全く興味がありません。関係者だけに理解してもらえれば、それでいいと言ってしまえばそれまでですが、果たしてそれでいいのでしょうか。

老後2000万問題で投資に注目が集まり、連動してLINE証券をはじめとする身近なインフラ系アプリからも投資ができるようになりました。さらに、SDGsなどの地球規模のアクションが求められたり、エシカル消費が流行したり....

要するに、より多くの方から共感が得られないといい企業とは言えない時代がやってきており、その流れが「Vision」「Mission」にも来ているということでs。

残念ながら、日本企業に多いパターンは、上記の通り自分視点での定義化です。他社と差別化し競争優位性を見出し、自社の地位を市場の中で築いていく。弱肉強食の時代はそれでも良かったのかもしれません。ただ、もうそんな時代は終焉を迎えています。自分だけが良ければいいという考えでは、もう生きていけません。これからの社会で強く生きていく企業やブランドに必要な視点は、実現させたい世の中を提示し(Vision)、そのために自分たちができること(Mission)を続けるべきということです。

あえてセリフ調に置き換えるならば、今までは、「みんなついてきて!だって、僕は、みんなに〇〇をプレゼントできるから!」でした。
これからは、「☆☆☆な社会を作るよ!☆☆☆な社会では△△できるようになるよ!だって僕たちが、〇〇をプレゼントするから!」という考え方なのです。

画像1

あくまで第三者的で個人的な意見かもしれません。ただ、先ほどの事例の中で、私がもっとも共感できるし、熱い思いが伝わってくるのは、ヤフー株式会社です。先ほどの三社の中で投資をするならばヤフーでしょう。(マーケット的な事情は抜きにして...)

画像2

ヤフーは、全てが世の中視点で書かれていてビジョンは【世界で一番、便利な国へ】、そのために自分たちができること/やらないといけないことがミッションが【UPDATE JAPAN 情報技術のチカラで、日本をもっと便利に。】です。私は、ヤフーという企業になんの関係もありませんが、どこか応援したくなるのです。

5.まとめ

今回書いたことは、私が感じる事実であるものの、現実的には、この考え方が合わない企業も存在しています。ただ、どんなケースにおいても重要なのは、「Vision」「Mission」「Value」は、「誰から誰のための言葉なのか」、「なんのための言葉なのか」この腹落ちがあった上で、言葉の定義を始めるということです。この前提整理をきちんとしなければ、どこかで混乱するタイミングがやってくる。今年の反省でもあり、収穫でもあります。

最後に、来年の目標は、ヤフーのような熱くなる定義文を作って推進していくことですかね。本年もありがとうございました。よろしければ、以下の内容も見てやってください。

● note

● Newspicks

● Instagram (Private)

● Blog (Private)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?