マガジンのカバー画像

読書感想文

5
自称本オタクの私が 手当たり次第読む本の中で 特に気に入った本の感想を並べてみました。 本を読んでいる瞬間が何よりの娯楽。
運営しているクリエイター

記事一覧

劇場

劇場

この本読んでると勝手に関西弁がこっちにまで移ってまうな。

結局最後には ティシュを一枚抜き取って 目から溢れてしまった涙を
拭く羽目になったんやけれど
そういうのも わざとらしい演出みたいで 恥ずかしくて
絶対にバレないように静かに ティシュを抜き取って
さりげなく頬を拭って 何食わぬ顔で 
終了の合図をよこした 洗濯機のもとに行くためと 
さも正当な理由があって部屋を出るのだというそぶりで

もっとみる
果てしなき 渇き

果てしなき 渇き

ブックオフに行くと だいたい無差別に

いくつかの本をピックアップしてレジに持っていくんだけれど

その中には

少し読んだだけで興ざめして やめてしまうものもあるのに

この本は 異質な存在を放っていた。

冒頭から あまりにグロテスクな死体描写に

思わず文体から意味を拾い上げて頭の中で

形として結び合わせる作業をやめてしまいたくなった。

にもかかわらず

なんだか そのグロテスクな描写か

もっとみる
舟を編む

舟を編む

友達にオススメされて 以前から狙っていた本が

ブックオフの100円均一ワゴンに入っていたのを

発見した時は

思わず小躍りになって 

たぶん 「わ!」とか声をあげていたかもしれない。

周りにいた人たちを うっすら上目遣いで見まわしてみる。

私の興奮は誰にも伝わることなく

ニヤリをかみしめながら レジまでの道程を歩く。

嬉しい気持ち わくわくした気持ち

そういった 漠然とした気持ちの

もっとみる
だから写真で生きていく

だから写真で生きていく

美しい装丁の本が私の元に届いた。

肌触りを確かめながら 

ページを開き 鼻を近づけ匂いを嗅ぐ。

鼻の奥から胸いっぱいに広がった空気は

印刷したての真新しいインクの匂いがする。

私の読む本は

古本屋の棚にぎっしりと並べられている ぺらりとした紙質の文庫本が多く

その店に並ぶ前にもかつて すでにどこかで長い時間を浪費してきたために

印刷したての匂いを 嗅ぐことは ほとんどない。

だか

もっとみる
博士の愛した 数式

博士の愛した 数式

これほどまでに優しく慈悲に溢れた物語が かつてあったかな、

あったかもしれないけれど どれほど前にそのような本にであったのか

と思い出すのが困難なほどの

以前読んだ趣深い本の存在も忘れさせてしまうほどの 

心に染みわたる本だった。

手あたり次第適当なチョイスで本を選んで読んでいるけれど

こうして 本のページをめくる手を休めることなく

延々と集中力を切らすことなく 終いまで 我を忘れて

もっとみる