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2018年10月福島、猿との遭遇〜大堀小学校

<続き>

中上ノ原団地や、その先の団地とも、不気味な雰囲気を醸し出していた。
多くの人々が住んでいた建物であり、そこを突然出て行くように言われ、それから7年半以上も放置されている。
そこには多くの人々の念が残っていて、不気味な雰囲気が出るのも当然だと思う。
子供達、ママ友、高齢者、社宅であれば会社の仲間達。様々なコミュニティが原発事故で破壊されたのだ。

打ちのめされた気分でトボトボと大堀小学校を目指す。

(脇にあった空き地。ここは線量が低かった。)

(広大なフレコン置き場が見えてきた)

(この先は高瀬川)

「避難指示解除された場所の空間線量は下がってる」とか「フレコンバッグの仮置場は帰還困難区域内にしかない」といった虚言を垂れ流す人々がいるが、そんなものは現場を見たことも聞いたことも歩いたこともない、モニターやスマホの画面だけ見てご高説を垂れているデマ野郎だ。学者やライターを名乗る人物にまでそんな者がいるから恐ろしい。この写真のフレコン置き場は避難指示解除された場所の写真だ。このすぐ目の前に家があり、そこには人が帰ってきている。

この反対側にある森の中で「ヒィ」「ヒィ」と動物の鳴き声が聞こえ、何匹も走り回る足音が聞こえた。

周りを囲まれたような感覚に襲われ、一瞬姿を見せた時、イノシシかと身構えたが、猿だった。いや、猿だって怖い。人間は無力だ。気配を消すように黙ってその場を離れた。

あとで福島に住む人に話を聞けば、このあたりはイノシシは勿論、猿も普通に人里に出てくるという。何年も人が避難していない間に、ここは動物の楽園となったのだ。

(常磐道が見えてきた)

(常磐道の下にフレコンバッグ)

わかりにくいが、数値は1.02μSv/hを示している。この近くの民家では、普通の生活が営まれている。普通に洗濯物を干し、布団を干している。さいたま市の25倍の空間線量の場所で。福島県外なら立ち入り禁止で除染となる土地で。
この感覚がわかるだろうか。
全く現実的でない、非現実的なことが目の前で現実に起きている。

(大堀小学校が見えてきた)

(浪江町中央公民館大堀分館)

(ガラスが割られている。中は荒れ果てているようだ)

(大堀幼稚園。中に入れそうだが入る勇気はなかった)

(窓側も開いている)

大堀小学校着。グラウンドは雑草で覆われていた。

小学校の前には建設中の家。廃校の目の前に住む気持ちはどうなのだろう。
Facebookにこの写真と文章を載せたところ、浪江から避難した知人は「故郷に戻れた安堵感に包まれているだろう」と書き込んだ。しかしそれは、国による理不尽な帰還政策によって、追い込まれ苦しみぬいた末の決断であろうとも。国も福島県も、東京五輪に向け福島からの避難者を追い込み差別し苛め抜いている。全ては原子力政策の正当化、復興の演出のために。

昨年11月以来の大堀小学校。前回は校庭の向こう側から入った。

中上ノ原団地と猿の登場で少しメンタル的にやられた僕は、校舎の中を確認したかったが、ここから先には行けなかった。今見てみるとある程度は進めそうに見えるのだが…

(大堀小学校と大堀幼稚園は併設されている)

0.614μSv/h。ここまで見たモニタリングポストの中では最大値。しかし僕の持つエアーカウンターSはこの数字だった。

(イノシシがほじくり返したか)

(大堀小学校、また来たい。ありがとう)

<続く>


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