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ファンレター記念日。

初めてファンレターなるものを書きました。

以前読んだ、有川ひろさんのコラム集『倒れるときは前のめり ふたたび』 内の「読書感想文廃止論、加えて」がとても印象に残っています。
「作家に手紙を書く」という課題を学校で出すことについて、物申しているもの。

人生に一度しかない、「初めてのファンレターを書く機会」を、学校の授業で強制的に消費させないでほしいのです。

有川ひろ『倒れるときは前のめり ふたたび』(2022, 角川文庫)

このコラムを読んだときはファンレター未経験だった私。
「いつか王子様が〜」のように、ファンレターを書くほど衝動を私に与える人はいつ現れるかしらと思い、頭の隅っこにずっと残っていた一文です。

植物図鑑から始まり、図書館戦争、自衛隊三部作 etc…と、好きな作家を聞かれたら絶対に有川ひろさんを挙げるのですが、失礼ながら今までファンレターを書こうと思ったことがない。有川さんに限らず、ファンレターの存在は知っていても書こうなんて掠めたことがない。
もし仮に、今後ファンレターを書きたいと思う相手が見つかったのなら、それは今まで好きになったどの作家さんやアーティストの方よりも強烈に心を動かしてくる方なんだろうな、と思っていました。

そして先日、ある本を読んだ時に「この気持ちをどうしても伝えたい!!」という思いが抑えきれず、初めてファンレターを書いてしまいました。

その本は、『ざくろちゃん、はじめまして』。藤崎彩織さんの、妊娠・出産、育児について書いたエッセイです。
SEKAI NO OWARIではSaoriとして活躍されている藤崎さん。
もう10年近く曲を聴き、著作を読み、SNSを追いかけてきたのに、確かに今まで見てきたさおりちゃんと同じなのに、それでももう一度出会い直してしまったような衝撃でした。

パソコンで下書きをしてみると3000字オーバー。
削って削って納得できる文章を作り、レターセットを買いに。
いざ選ぶとなると、やっぱりおしゃれなのがいいな、でも文章納まりきらなそう、もっと罫線幅狭いのないの!?と散々迷ってしまいました。
レジを済ませ、自転車にまたがった時に「私すぐ書き損じちゃうんだった!」と思い出し、もう1セット買いに戻るか逡巡しましたが、結局買わず。
(中学生の頃、1枚のお礼状を書くのに20回以上書き直したのが今でもトラウマです…。)

文字を書くという日常の動作なのに、こんなに緊張するとは思いませんでした。心音が明らかに違うんです。
便箋の枚数に余裕がなかったので、ちょっぴり誤魔化したり、一文飛んでしまったのを諦めたりしましたが、拙い文章がなんとか完成。

自己満足ですが、読んでもらえなくとも思いを形だけでも届けられたことが私にとってはすごく大きな意味があって、ポストに投函した時に心がふっと浮き上がったような気持ちに。

この歳になっても記念日ともいうべき初めての経験ができるって嬉しいな、と思った出来事でした。



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