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短編小説【私はいじめをしました】

小学生時代私は一人の女の子を無視しました。今思えばいじめだと分かります。

些細な出来事で、ただAちゃんが執拗に話しかけてきて、それが嫌なだけだったのです。

誰とでも仲良くしているつもりでした。Aちゃんとも、ただ席が近かったから日常的な会話をしていただけ。今思えばAちゃんは他のクラスメイトと話しているところはあまり見たことがありません。

そうして、日々を過ごしていく中で、トイレに行こうとすると付いてきて、朝も私が学校へ着くとすぐその子に話しかけられ、一緒に帰ろうと誘われる日々。
私はAちゃんの事を友達だとは思っていませんでした。それに私には幼少期からの友達だっています。

それらのAちゃんの行動に私は一応我慢していました。やめてほしいことは
はっきり言いましたし、私が強く言えば彼女は身を引いたので。
でもある日にAちゃんの口から酷いことを聞きます。

「Bちゃんって太ってるよね。なんで痩せてないんだろうね」

ついにAちゃんは私の友達であるBの悪口を言い始めたのです。彼女にとっては小さな言葉だったのでしょうがBが体型を気にしていることを私は良く知っていました。だからAちゃんとは距離を置きました。
一緒の登下校をやめ。でも執拗に彼女は私に話しかけてこようとします。それらをすべて私は無視しました。

朝話しかけられてもそっけなく返して、後はずっと友達たちと話していましたし、休憩時間もBと過ごしました。そこにAちゃんが付いてきて相槌をしてもAちゃんの意見なんて聞きません。

登下校にしても、Aちゃんとの待ち合わせ場所には行きませんでしたし、Aちゃんを待つこともしませんでした。
次第にそれらはエスカレートしていきましたがクラスメイトはそれをだれも止めません。
でもある日にAちゃんは学校を休みがちになって私は担任に呼び出されました。

「Aを無視したり、陰口を言ったりしてないか?」

ドキリとしました。実際そういう事をしていましたから。私はいいえとはいえません。きっとAちゃんが休みがちになったのは私のせいですし、私のせいだから。
でもAちゃんにも問題があったと、私はそれらを懸命に説明しました。でも担任はほとんど聞いてくれなかったです。

「Aはとても悲しんでいるし、ご両親はとても怒っている」

確かに私が悪かったかもしれない。私がもっと受け入れられれば、優しければよかったのかもしれません。
でも私はBを侮辱されたことが嫌で嫌でたまらなかった。もしもあのままAちゃんと仲良くしていればBの事をもっと貶したかもしれないから怖かったのです。

「なんでいじめなんかしたんだ。無視をしたらいけないんだ!その子がどれだけ悲しい思いをしたのか!」

父親に怒られた。母親はズンと落ち込んで、頭を抱えています。
それからこの事はどんどんと肥大化していき、Aちゃんは不登校になり、校長室で私の両親と、Aちゃんの両親とで話をすることになりました。
両親はAちゃんの両親に散々に罵倒され、私も何度も何度も謝りました。

その後から、学校へ行くとB以外の友人が私に近寄らなくなり、困惑しました。でもそれが当然の報いだと思ったと同時に、そんなに簡単に手のひら返しをするものだのだと、クラスメイトが恐ろしくなりました。

それからは誰もAちゃんが来ても話しかけようとしませんでした。ほら、みんな一緒じゃないか。私ひとりが悪いだけじゃない。でもただ傍観しているだけなんだ。

今はもう社会人で、いじめをしたことをずっと後悔しています。
でもそれ以上に傍観者的立場のクラスメイトの手のひら返しに、私は驚くばかりで、ただ私ひとりが悪いだけでは無い。Aちゃんをいじめたのは私だけではないのではないと思うのです。それに私の話を聞いてくれない大人たちの対応も嫌でした。

こんな考え方はだたの責任転嫁なのでしょうか?

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