商標権侵害事件における有印私文書偽造・同行使

 最近、商標権侵害事件における有印私文書偽造・同行使に関するニュースに接しました(情報元1)(情報元2)(情報元3)。

 どうやら、商標権侵害物品を販売している業者が、他の業者の営業を妨害するため、偽の文書を送ったようです。

この種のニュースに接したのは初めてですが、この種の案件は、実際には結構あるのかもしれません。


●有印私文書偽造・同行使について

 有印私文書偽造罪は、文書が有する社会的信用性を損なう行為のうち、他人の署名や押印がある私文書を偽造した場合に成立します(刑法159条1項)

 偽造とは、権限なく他人名義の文書を作成することです。名義人と作成者の人格の同一性を偽ることともいえます。「作成名義の冒用」とも言われることもあります。偽造された文書は、偽造文書あるいは不真正文書と呼ばれます。

 なお、真正に成立した文書に変更を加えることは変造と呼ばれます。作成名義人ではなく、作成権限がない者によって変更が加えられた場合を有形変造といい、作成権限がある作成名義人によって変更が加えられた場合を無形変造といいます。

 ただし、文書の本質的部分に変更を加えて、真正に成立した既存文書と同一性を欠く新たな文書を作成した場合場合は、変造ではなく偽造とされます。

 有印私文書偽造罪は、「行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して、権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造」することが要件ですから、構成要件は以下の4個です。
①行使の目的があること
②他人の印章・署名を使用すること
③権利・義務・事実証明に関する文書・図画を偽造の対象とすること
④偽造すること

 偽造した私文書を実際に使う(行使する)と、有印私文書偽造罪に加えて、偽造有印私文書行使罪(刑法161条1項)が成立する可能性があります。

なお、有印私文書偽造罪と偽造有印私文書行使罪は牽連犯の関係にあります。

牽連犯とは、犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れることです(刑法54条1項)。たとえば、空き巣事案では、窃盗のために住居侵入もしているため、窃盗罪と住居侵入罪が牽連犯の関係にあるとされます。

牽連犯の関係にあるときは、牽連犯の関係にある犯罪のうちもっとも重い刑によって処断されます(刑法54条1項)。

●情報元

・「商標権を侵害している」偽の文書で他の雑貨店の販売を妨害か 自営業の男を逮捕 愛知県
 https://www.nagoyatv.com/news/?id=020017

・偽ブランド品業者が“同業者”に…実在する企業等になりすまし「商標権侵害」とウソの通知書送った疑い
 https://www.tokai-tv.com/tokainews/article_20230731_29130

・うその文書を送付し商品の販売中止させたか 男を逮捕 愛知県警
 https://www.ctv.co.jp/news/article/?59762340fd544193ba552b269bff7bb0

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