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『デジタルバレンタイン』(毎週ショートショートnote)

私はヴァーチャルの世界で生きている。
交通事故に遭った私の体は損傷がひどく
脳の情報をデジタル化してアバターに引き継ぎ
この世界で生きるしか道はなかったのだ。

私のように事故や病気でこの世界に来る人は結構いて
現実世界のようにひとつの社会を形成している。
現実世界で高校生だった私は
この世界でも高校に通っている。

ここでの姿は現実世界の姿を取り込むことも出来るが
自分で選ぶことも出来る。
私のここでの姿は真っ白でふわふわのウサギ。

最近、クラスに転界生がやってきた。
現実世界からこの世界に来たから転界生。
元気だった頃の姿をアバターにしている。
カッコイイ!

今日はバレンタインデー。
私はチョコを持って校門で彼を待つ。
ホントの私を見てもらうために
現実世界の姿を取り込むように設定を変更した。
私と気づくだろうか?

彼が来た。
え?なぜ逃げるの?
追いかけようとしたけどうまく歩けない。
私は自分の姿を見下ろした。
そこには、事故に遭った時の私の姿があった。

(410文字)

<あとがき>
ちなみに、高校の先生はAIですが、
なかには現実世界から来て先生をしている人もいます。
デジタルなのに人間味があるから分かりやすいです。

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