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小説又は考察等の投稿。特に注書きがない限り、投稿毎に独立した内容です。不定期更新

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最近の記事

量子論のお勉強②

第2章 量子力学の基本原理 〜 不確定性と確率の世界前章で見たように、20世紀初頭、古典物理学では説明のつかない現象が次々と発見されました。原子の安定性、黒体輻射、光電効果など、ミクロの世界に潜む謎を解明するには、新しい物理学が必要だったのです。 そこで登場したのが量子力学です。量子力学は、ミクロな粒子の振る舞いを記述する理論体系であり、20世紀物理学の最大の成果と言えるでしょう。 量子力学の基本原理は、私たちの常識とは大きくかけ離れています。粒子の位置と運動量を同時に

    • 量子論のお勉強①

      はじめに本稿は、量子論の基礎から応用、そして哲学的意味までを幅広く探求することを目的としています。 量子論は、20世紀初頭に誕生した物理学の理論ですが、その影響は物理学の枠を大きく超えて、私たちの世界観そのものを根底から覆すものと言っても過言ではありません。本稿では、そのような量子論の革新性と可能性を、できるかぎりわかりやすく伝えることを目指しました。 第1章から第3章までは、量子論の基礎的な概念と原理を説明します。古典物理学の限界、量子仮説の登場、不確定性原理、波動関

      • チャタレー事件について考える

        第1章 はじめに1.1 チャタレー事件最高裁判決の概要 本稿で考察の対象とするのは、いわゆる「チャタレー事件」と呼ばれる猥褻文書販売事件に関する1957年3月13日の最高裁大法廷判決(昭和28年(あ)第1713号、刑集11巻3号997頁)である。同判決は、D.H.ロレンスの小説「チャタレー夫人の恋人」の日本語訳の出版・販売に関し、刑法175条の猥褻文書販売罪の成否が争われた事案について、原審の有罪判決を支持し、上告を棄却したものである。 本判決の多数意見は、猥褻性の判断

        • 『ニーチェ的生の探究者』

          第1部:情熱の炎 深夜の静寂に包まれた帝都大学大学院の研究室。暗闇の中で、ただ一つの明かりが孤高の輝きを放っている。机に向かう一人の女性の姿があった。 城之内美香。哲学科の若き研究者にして、類い稀なる才能の持ち主。漆黒の髪をなびかせ、ペンを走らせる姿はまるで炎のようだ。ふと顔を上げた美香の瞳は、真夜中の星空のように深く澄んでいる。燃えるような情熱と、飽くなき知への渇望を秘めたその眼差しは、同年代の研究者の中でも際立っていた。 美香の魂を捉えて離さないのは、ニーチェの思

        量子論のお勉強②

          『不思議な多世界解釈』

          <プロローグ> 平行宇宙への招待状 「多世界解釈。量子論の示唆する、無限に広がる宇宙の可能性。私たちが見ている現実は、無数に存在する世界の一つに過ぎない。どの世界も等しく真実。その壮大な世界観を、君は信じられるかい?」 教授の問いかけに、私は戸惑いを隠せなかった。コーヒーカップを傾けながら、窓の外を見やる。大学の夏の日差しは、いつもと変わらぬ輝きを放っている。見慣れた景色。当たり前のように感じていた日常。だがもしかしたらそれは、無数の可能性の中で偶然に選ばれた、一つの現

          『不思議な多世界解釈』

          『カオスに舞い、創発に生きる』

          <序章> 複雑系との出会い 「複雑系科学とは、一言で言えば、シンプルな要素間の相互作用から創発する複雑で予測不能な振る舞いを研究する学問だ。自然界や社会に広く見られる複雑な現象の背後には、しばしば単純な法則が潜んでいるのだ」 大学の講義で教授が語る言葉に、アオイは強い興味を覚えた。蟻の群れ、脳のニューラルネットワーク、株式市場。一見無秩序に見える現象も、複雑系の観点からは統一的に理解できるという。 複雑系科学を志す大学生のアオイにとって、その考え方は新鮮だった。要素還元

          『カオスに舞い、創発に生きる』

          『進化論』

          <序章> 夢での出会い "生物は変化する。そして、その変化こそが全てを決定づける" ―進化生物学者の言葉は、この学問の真髄を見事に言い表している。生物の姿形を変える進化のメカニズム。それを解き明かすことこそ、レナに課せられた使命だった。 私はレナ。エリートニート。親からの冷たい視線を学問への情熱に異能保有者。今回の研究テーマは「生命に刻まれた進化の軌跡」。生物の多様な姿形から、生命進化の本質に迫る。そのために、私は日夜研究に没頭していた。 大学の図書館で無数の動植物の

          『進化論』

          ハラリ:現代の知の巨人

          <序章>現代を生きる我々への根源的な問いかけ "人類は神になるのか、それとも自らを破滅へと導くのか。その岐路に我々は立たされている" ――ユヴァル・ノア・ハラリはかつて、こう語ったという。人類史を貫く壮大な物語を描き出し、未来への鋭い洞察を示す稀代の知性。『サピエンス全史』から『ホモ・デウス』、そして『21 Lessons』に至る一連の著作は、人類の過去、現在、未来を見通す思索の結晶だ。だがそれらを貫く中心テーマとは何か。人間とは、そして人類の行く末とは。ハラリという知の

          ハラリ:現代の知の巨人

          マルクス:疎外された人間の解放を求めた思想家

          <序章> 時代を揺るがしたカール・マルクス 19世紀のヨーロッパ、資本主義の嵐が吹き荒れる時代。そんな激動の世にあって、一人の巨人が立ち上がった。経済学者にして思想家、革命家としての顔を持つカール・マルクスである。 『資本論』で知られる彼の思想は、労働者の解放を訴え、資本主義社会の矛盾を鋭く衝いた。「労働者よ、団結せよ!」。プロレタリア革命を唱えたその言葉は、抑圧された民衆の魂を揺さぶり、社会主義運動の火種となった。 マルクスは鋭利な分析力を武器に、ブルジョワジーの搾取

          マルクス:疎外された人間の解放を求めた思想家

          福澤諭吉:独立自尊のすゝめ

          <序章> 時代を拓いた先駆者 幕末から明治にかけての激動の時代。日本は世界の大局を見極め、新たな国家のビジョンを打ち立てねばならなかった。そんな閉塞感漂う空気の中で、一人の知の巨人が立ち上がった。慶應義塾の創設者にして、近代日本の精神的支柱となった福澤諭吉である。 「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」。『学問のすゝめ』の一節は、今もなお多くの日本人の胸に刻まれている。身分制度の呪縛から解き放たれ、学問によって自由の境地を切り拓くこと。それこそが福澤の説いた「独

          福澤諭吉:独立自尊のすゝめ

          『雪女の涙』

          朧月が冴え渡る夜、ある樵(きこり)が深雪に覆われた森を歩んでいた。 吹雪に閉ざされ、村への帰路を見失ってしまったのだ。 樵の名は与助。 彼は村で最も腕の立つ樵として知られていた。 「ああ、この吹雪の中をさまよい続けるのか…」 与助は絶望に沈む。 深い孤独と恐怖が彼の心を支配していた。 雪の中で凍え死ぬことへの不安が、影のように彼につきまとっていた。 彼の脳裏には、家で待つ妻子の顔が浮かんでは消えていった。 「おれが死んだら、妻も子も悲しみに暮れてしまう。なんとしてでも

          『雪女の涙』

          『魂のアップデート』

          私は今日も、魂のメンテナンスのために魂のアップデートセンターに向かっていた。 毎月1回、全ての市民は魂のアップデートを義務付けられているのだ。 魂のアップデート。 それは10年前、画期的な発明として誕生した。 脳に埋め込まれた魂チップに最新のプログラムを入力することで、人々は効率的に管理されるようになった。 思考や感情までもがデータ化され、国の定めた規範に沿って最適化される。 アップデートを受ければ、生産性は上がり、不安は消え去り、幸福感に満たされるはずだった。

          『魂のアップデート』

          夢の中のカント「君は感性界と英知界を結ぶ女神だ…

          (注1) この作品には、一部性的な表現や描写が含まれています。作品の構成上必要な表現ですが、注意喚起をしておきます。 (注2) この作品はフィクションです。 私の名はレナ。ゼミの論文に格闘していたある日、不思議な夢を見た。 目覚めると、そこは18世紀のプロイセンの街並み。 重厚な石造りの建物が立ち並ぶ中、一人の男性が思索に耽っている。 著書『純粋理性批判』で知られる哲学者、イマヌエル・カントだ。 「おや、お嬢さん。私の夢の中へようこそ」 物思いから我に返ったカントが、私に

          夢の中のカント「君は感性界と英知界を結ぶ女神だ…

          孫子「レナ、君を攻め落としたい」

          (注1) この作品には、一部性的な表現や描写が含まれています。作品の構成上必要な表現ですが、注意喚起をしておきます。 (注2) この作品はフィクションです。 ある夜、不思議な夢を見た。 そこは古代中国の荒野だった。 草萌ゆる大地を吹き抜ける風。遠くには山脈の峰々が連なっている。 兵士たちが集う軍営の片隅で、一人の男性が佇んでいた。 鋭い眼光と凛とした風貌。これはあの孫武、孫子ではないだろうか。 私の名はレナ。中国古典に興味を持つ大学生。 極度の集中力による瞑想状態からリア

          孫子「レナ、君を攻め落としたい」