予防とセットで考えてほしいーICT教育推進の子どもの健康・発達上の功罪は、誰が検討して、誰が責任を持つのか。

国によって、企業によって、研究者たちによって、教育者たちによって、
ICTを子どもたちにという大きな流れが推進されています。

これらの推進にあたって、ICTが子どもたちに与える影響はどれほど検討されているでしょうか。2013年、ネット依存の中高生が51万人⇒2018年93万人(厚生労働省)です。不登校の2倍以上です。ICT教育を推進すれば、大きな影響があるでしょう。それでも予防や対策を検討せずに、気にせずに進めていいのでしょうか。

掛札逸美先生からこのような情報が届きました。
1)韓国政府の健康担当者が、「人口の20%がネット依存の危険性」と発言しているそうです。

2)JAMA Pediatrics(米国医学会雑誌の小児科版)7月15日の論文によると、思春期世代のネット/テレビ使用時間と、その後の鬱状態発現が相関。約4000人の集団を同一人物を追跡する形で分析しているため、相関関係ではなく、因果関係が示唆される内容。つまり、ある時点だけで調査をした場合には、鬱状態だからネット/テレビを使うのか、ネット/テレビを使うから鬱状態になるのかわからない(単純な相関関係)が、個人の変化を集団として積み重ねているため、ネット/テレビ使用時間「が」鬱状態発現「につながっている」とある程度言える(因果関係)。

 さて、このような情報は枚挙にいとまがありません。内容の精査が必要でしょう。とはいえ、日本では専門家たちですら充分な情報を持たず、危機感を持たず、発信も充分ではありません。
 かつてソウルで子どもたちのメディア対策センターの視察をしたことをFB上で報告し、これまでも何回かFBで発信しましたし、日本心理臨床学会関係者にも特集を組んでもらうように訴えるなどしてきました。でも情報が拡散されません。日本では本格的に対策に取り掛かっているのは依存症対応で知られている久里浜病院程度でしょうか。小児科の現場では多くの問題が見えてきていると聞いていますが、具体的な対策にはつながっていません。日本児童思春期青年精神医学会でも、先月、基本的な情報の提供がなされていましたが、まだ、ごく初歩的な解説を専門家が聞いている状態なのです。
 つまり、推進一色なのです。
 そして、推進している方たちは、まだこれらの情報を知らないか、気に留めないかなのです。

 もちろん、ICT教育の推進が、子どもたちのネットの用い方にどのように影響するかわかりません。しかし確実に浸透が早まるでしょう。これは世界でもまだ未知の現象なのです。

 今、そして今後「苦しんでいる子どもたちと、これから苦しむであろう子どもたち」のアドボケイトになるのは誰でしょうか。そして、被害がさらに拡大していったとき、それはメディア視聴を止められなかった子ども自身や、止めさせられなかった親の責任になるのでしょうか。
 でも、ネット依存は「依存症」なのです。アルコール依存症や薬物依存症を考えてみて下さい。本人では止められないし、家族でも止めることは難しいのです。本人は最初、それが好きで、それがなくてはならなくて(ネットの世界は、もはや子どもたちにとって居心地がよく、自己肯定感を支え、仲間とつながれる居場所です)、ないとパニック状態になって……自己コントロールが効きませんから、治療(しかもしばしば入院治療)が必要になるのです。
 そして、予防が最も大切なのです。

 予防をどのように進めていくのか、子どもの発達、健康への影響を、国にぜひ早急に検討していただきたいのです。ICT教育を推進する皆さんに気にかけてほしいのです。止めればいいというような単純な話ではないことはもちろん承知しています。問題ないという専門家ももちろんいるでしょう。
 でも、これまでもさまざまな「中毒・依存症」は、同じようにどんどん止められないまま広がっていきました。それは歴史が証明しています。
 どうぞ「責任が取れる範囲で」動いてください。
 検討した上で、杞憂であった、というのであればいいのです。
 垂れ流すのではなく、しっかりとした管理をよろしくお願いいたします。

なお、九州を中心に活動するNPO法人子どもとメディアが、2020年1月26日(日)都内で初めて大きな研究会を開催します。是非、日程確保をしてご参加ください。

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