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子育て支援<保育と子育てひろばについて>「初めて犬を育てる小学生をサポートする場合、あなたはどうしますか?」

2024年2月19日(月)東京都子育てひろば職員研修@オリンピック記念青少年センターセンター棟102室 参加者100名 にて講師を務めた。

久しぶりのひろば職員研修ということで、タイトルは、
「赤ちゃんの人権を大切にするひろばスタッフの関わり」。

本項では、そのさわりの部分を少し周辺の情報も付け加えてまとめておく。

こども家庭庁は、「子どもまんなか社会」をうたっている。
としたら、私たちは、子どもを真ん中にするとはどういうことかを真剣に考えなければならない。
赤ちゃんたちをどう真ん中に置いて思考するかが、大人に問われている。

そこでまず、最初のワークは、3人ずつグループになっていただいて、
次の質問を上から順に一行ずつ表示して、考えていった。

1.病児保育は何を支援しているか?

 考えるヒント)子どもの頃、風邪で臥せっているとき、子どもだったあなたは、誰にそばにいてほしかったか?

 子どもまんなかで考えるならば、親が会社を休んで、子どものそばにいて
あげられる環境を作るのが、子育て支援ではないか?
 つまり、病児保育は、子育ての支援でも子どもの支援でもなくて、休めない親の支援、企業経済を維持するための支援。だから、経済至上主義の日本で歓迎されたのだろう。
 「子どもまんなか」で考えるならば、国がすべきことは、親による病児育児の際の休業補償か、企業に病児休暇の制度を義務付けること、そして、病児育児のために親が仕事を休むことを当然と考える市民を育てていくことである。

2.0歳児保育は何を支援しているか?
  特に無償化したときに起きることはどういうことか。
 考えるヒント)
  初めて犬を育てる小学生をサポートする場合、あなたはどうするか?
  
 犬を拾ってきた小学生がいたとして、その子が犬を育てようとしているときに、その犬を誰かが引き受けてしまったら、その小学生の犬育ての支援にはならない。
 では、初めての赤ちゃんを育てる両親がいたとき、その両親が子どもを育てようとしているときに、その赤ちゃんを保育園に預けてしまったら、その親の子育ての支援にはならないのではないか?
 しかし、今は、早期から保育園に預けることが一般化してしまっている。無償化はそれを促進している。

  これを私の友人は、子育て放棄支援、という。

こども家庭庁のウェブサイトから

 保育や幼児教育の無償化は、親が働きやすくなるための支援、親の経済的支援、親の子育てのつらさからの逃げ道の提供にはなるけれど、子育ての支援になると本当に言えるだろうか。

 親子は早い時期から保育園を利用する。そのために、子育てひろばに来る親子は、0歳児親子中心になってきている。親を親として育て、子育てを地域で支えるために、子育てひろばは重要な役割を担うが、そもそも赤ちゃんは早い時期から保育園に入ってしまうから、親は子育ての技を身につける機会を逸している。

 しかも、実は、子育てひろばが必ずしも「子育て支援」をしていない場合が少なくなくて、子育てが辛いままの親たちがたくさんいるから、保育が進んだのではないか、という疑いもある。

 たとえば、親子が子育てひろばに来たとき、受付したあと、親子を2人きりで(周りにたとえ親子がいても、その親子とつながずに)放置しておくのは、十分な支援とはいえない。また、スタッフとだけ交流して帰るというのも、そのとき限りの支援で、継続性がない。しかし、そういうひろば、つまりスタッフが事務スペースに入ってしまっていたり、親子の直接対応だけしている子育てひろばは少なくない。

 もし、親が疲れ切っている様子だったら、子どもから目を離さないで!ではなく、みんなで見ておくからちょっと休んでいていいよ、から始まり、徐々に、親子が地域に知り合いを作って頼り合えるように、そこに来た人たちをつないだり、さりげなく子育てのコツを伝授したり、先輩利用者から伝授してもらったり、有意義な情報を提供したりするのがひろばスタッフに求められる役割である。子育てのひろばは本来、そういう場として構想された(『社会で子どもを育てる』2002)はずだった。

 とはいえ、すぐれた子育て支援者になるのは、簡単なことではない。素人のボランティアやアルバイトで誰でもできることではないのである。だから、子育て支援のスタッフが身につけるべきコンピテンシー(基本的な態度や知識、技術)を高山静子さん(現東洋大学教授)を中心に、数人で3年かけて研究してまとめた(研究ではもっと上級編まで検討して冊子も作ったが書籍化したのは、基本の基)。

 さらに、ひろばが地域とつながっていくことの必要性についても別の仲間と研究してまとめ、報告書を出した。そちらは書籍化はしておらず、ワークショップ形式で研修をし、現在、当時の仲間や私が展開しているコミュニティワーク研修につながっている。 

3.あなたのひろばの子育て支援は何を支援しているか? 
 考えるヒント)
 ① スタッフは何をしているか?
 ② おもちゃは何のために必要か?

以下の研修内容は、ここでは省略するけれど、

これらを話し合った後で、親を支援するとはどういうことか、
子どもを真ん中に置いて支援するとはどういうことかを考えるための、
さまざまな情報提供をした。

さて、以下は、子育て支援が始まってからの、虐待件数の増加グラフである。1997年1101件だった児相の相談件数が、現在21万件を超えている。

1995年に子育て支援のエンゼルプランが始まったのだが、その後、虐待件数はうなぎのぼりに増えているのである。
現在は、子どもが欲しくないという若者たちも増え、女性は40%、男性は50%だという。子育て罰という言葉もささやかれている。

改めて、ここまでの子育て支援は子育て支援になっていたのか?という疑問が生まれる。

虐待の加害者は実父母が6割である。社会の宝を生んだはずが、その子育ての負担と責任が両親に、特に女性に負わされている。支援が機能していない。


こんなふうに皆で考えを深め、さまざまな情報を提供して、自分はひろばスタッフとして何をすべきか考えていただいた。

これから子ども家庭ソーシャルワーカーが資格化されていくことになる。
本当の意味での子育て支援は、何をすることなのか、改めて、政策レベルから現場レベルまで、考えてほしいと思う。

皆さんは、子育て支援をどのようにすればいいと思いますか?

※ 親支援、子ども支援や地域との連携に尽力して下さっている保育士さんたちがいて、私は保育士研修もずっとやってきている。『保育者のための子育て支援ガイドブック ―専門性を活かした保護者へのサポート』(中央法規)という本も書いている。その上で、あえて本稿を書いていることをご理解いただければと思う。

※ 追記)
本当のこどもまんなかは難しいし、本当の子育て支援は難しい。
海外で、それなりに子育て支援ができている国はあるんだけれど。
日本の場合、「それはわかるけど、でもね」と、でも、がついてしまうんだな。
そうしている限り、何十年も問題は継続し続けて、結局、みんなが苦しむのだけれど、それを選択してしまう。

追記2)さらに考えるために。
・保育園は、里親と違って、24時間預かりではない。
・社会の宝は社会で育てればいい。
・生みの親と育ての親。
・生物学的親と社会的親。
・そもそももともと育てていない父親も親と呼ぶ。

追記3)
今のままで夫婦であるいはワンオペで子育てなんてできないというのは自明の理。そこから預けるという方向に行くのか、親が育てられる社会を本気で作っていくのかという大きな問いなのである。

追記4)
国が制度を決めていくときに、この議論はどの位なされているのだろうか。なされた上で決まったのだろうか。今からでも遅くない。根本から議論してほしい。


※ 撮影 室伏淳史氏 2024 2/10 岩本山


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