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私たちの身体の基礎を作る赤ちゃんのときのケアの複雑さについて

 2014年にFBグループページ、抱っことおんぶを語る会を複数名で立ち上げて、今どきの抱っこやおんぶの問題を指摘してきました。
 その5年間の議論の内容をまとめたものが、下記のnote の投稿で、それをシェアしたFBで読んで下さった方も多かったと思います。
 

 それからさらに3年経って、今、私たちの問題提起は、専門家を含むいろいろな人たちによって拡散され、イナバウアー姿勢の(背中が反り返っている)赤ちゃんは減ったように思いますし、抱っこやおんぶの時には、赤ちゃんの位置を高くして視界を広げるようにしたほうがいいということも、広く知られるようになってきたと思います。

 赤ちゃんの位置を高くすること、早期からの、手や肩で首を支えない縦抱きに問題があることなど、いくつかの論点の意味は、なかなか専門家の皆さんにも理解してもらうことが難しく苦労してきました。だからこそ、その後、「勘」だけでなくきちんと理由を説明する努力を重ねることになりました。

FBグループページ「だっことおんぶを語る会」←うまくリンクが貼れない💦
ので、「だっことおんぶを語る会」で検索して下さい。

特に、今、懸念しているのが、ここ数年、生まれて間もない新生児から、
よくあるストラクチャー(成形されている)タイプの抱っこひもに
手を添えずに縦抱きされている赤ちゃんを見かけるようになったことです。
これは新しい問題です。

新生児期から両手を離して使えることを売りにしている抱っこひもが、
(がっちり固めてホールドしているから落ちないということで)安全なものとして、多く販売されていますし、

(説明書には一応、首が据わるまでは手を添えるように書いてあっても、
 パンフレットの写真モデルは、高月齢の子どもで、両手離しで抱っこして   いるので、赤ちゃんのことを知らない親は、真似をしてしまう可能性があ      ります)
(自分が縦に柱に括りつけられる感じをイメージしていただくといいかもし   れませんね)

外に出るとき(例えば乳児健診に行くとき)は両手が空けられる抱っこひもで縦抱き、があたりまえの風景になってきていますが、首が据わる前の健診に抱っこひもで縦抱きで連れていくのは問題です。
(健診会場で保健師さんたちが一声かけて下さるようになったらいいなあ)

首が据わる前の、手を添えない、地面に垂直な縦抱きは、
赤ちゃんたちの首が肩に沈んで、赤ちゃんの首が凝る、固まるなど、
小さな赤ちゃんの身体に大きな負担がかかると思われるのですが、
それが後々どんな影響を残すのかわかっておらず、
そのことを問題にしている人、気づいている人はまだ多くないのです。
やっと近年になって、首が沈むことなどによって、
呼吸や嚥下などに影響が出てくることを指摘する専門家(例えば歯医者さんとか理学療法士さんとか保健師さんとか)が出てきました。

新生児期はとても短い期間(一か月)です。
新生児期を含む乳児期もせいぜい一年です。
でも、その時期は、私たち大人の身体の基礎の基礎ができる時期です。
発達のスタートとなる体ができる時期です。

赤ちゃんの身体発達を阻害するような便利ツールを
知らずに使っている大人たちに警鐘をならすためには、
助産師さんや保健師さん、お医者さん。子育て支援者や保育士さん、理学療法士さん、
抱っこやおんぶを教えることを仕事にしている!(おんぶやだっこまで個人でお金を払って習わなければならない時代!?)人たちなどの協力が
必要です。
もちろん、口コミできちんと伝われば、それに越したことはありませんが、今は、国がそういう機会を保障してくれないと一番必要な人たちに届きません。

実は、抱っこやおんぶだけでなく、
現在、新生児期を含む乳児期の子育てがなされている方法には
多くの心配な要素があります。
それをどう伝えていけばいいのか、身体や赤ちゃんの専門家を含むいろいろな皆さんと相談しています。

テレビやネット、雑誌で見る子育ての様子や
「専門家」や、影響力のある「タレント」さんたちのブログや動画の説明も微妙ですし、
先ほども書いたように、商品として売られているものの説明ですら、
信頼性に欠けることがあるのです(大手メーカーがしっかりと検証していない結果を商品に書いていたというニュースも何年か前にあった位です)。

しかも、核家族の弊害のみならず、
このコロナ禍で益々、
他の赤ちゃんの様子を見たことのない赤ちゃんや親が増えていて、


親子カプセルの中での子育ては、他者とのぶつかり合いが少ないからでしょうか、一見穏やかに育っている「聞き分けの良すぎる子」たちを見ていると、数年後、小学校に入る頃、あるいはそれ以降に問題が生じてこないだろうかと気にかかります(身体のできていない子どもたちを、しつけがなっていないと学校教育で締め付けたら、どうなるのか)。

そもそも、子育て支援も保育も、0歳児に対する対応は実は経験不足で、
子育ての自然な伝承も途絶えてしまっている今、
おんぶはおろか、抱っこができない大人がいるという状況なのです。

若い親たちは、わらべうたどころか、
 赤ちゃんへの声のかけ方がわからない(近年、マザーリングという専門用語で声かけの仕方を学ぶようになってきています)、
 視線を合わすことが少ない(どうしてもスマホで検索して子育てするし、カメラ越しに赤ちゃんを見ている)、
「あやす」という言葉の意味も行為も知らない(大切なことですが、学校教育ではほとんどやり方を教わりませんから…)

 というのが、実情です。

同時に、
最近は読んでいない人も増えたようなので、何回も紹介してしまうけれど、
「育つ・つながる子育て支援」(チャイルド本社)で指摘したような、

来場者をつなぐスタッフの役割が、
そこにいる支援者たちや場を作る人たちに充分に認識されず、

 ただ場所がオープンしているだけでスタッフがいない
 名ばかり子育て支援の場とか、

 人が配置されているだけで人をつなぐことが意識されていない
 見た目すてきなひろばとか、

 スタッフが乳児の子育てに慣れていない素人さんだとか、

そういう「子育て支援」が少なくないのです。

せめて、乳児支援の立場に立つ人たちは、
こちらのウェブで赤ちゃんへの具体的な対応の仕方を
勉強して欲しいと思います。


さて!
実はここからが、当初、書こうと思っていた本題です。

我ながら長い、長すぎる。
休憩~~~。


おんぶのことなのですが、それを通してお伝えしたいのは、

私たち全員がされてきた「子育て」というものが、非常に
 一般化、マニュアル化が難しいものである、ということ
です。

この7ヶ月半、私は、自分自身で孫の面倒を見てきました。
3ヶ月目からは、平日昼間のベビーシッターを引き受けて4ヶ月経ちます。

実際のところ、このブログを書いている私も、秋頃まで、
 おんぶはどういう状態になったらしていいのだろう?
と確信が持てずにいました。腰が据わる頃、と思っていましたが、
どの時点で腰が据わった、と判断していいのか、とか。

自転車で移動する際に楽なので、
「いつからOKなのか」についての答えが知りたかったのです。

赤ちゃんのことに関する私の師匠の迫きよみさん(子育ての文化研究所)は、京都から東京の国会図書館まで来て、古今東西のさまざまな文献を調べるという研究熱心な子育て支援者ですが、「これというエビデンスのある正解はないようだ」とおっしゃっていました。

私なりに調べてみても、
 首が据わってから、という人もいれば、
 腰が据わってから、という人もいれば、
 歩けるようになってから、という人もいる、というふうで、
その根拠が書いてある文献は見つけられなかったし、
もし、根拠が書いてあったとしても、
それが本当に正しいと言えるかどうかは微妙だと思うようになりました。

というのは、孫と生活しているうちに、
おんぶというのは、
ケアギバー(負ぶって世話をする人)の身体と、
赤ちゃんの身体の双方が互いに協力し合ってできるものであって、

現代の日本人の大人の体形と体幹や腰の状況と、
発達の状況が一人ひとり異なる赤ちゃんが、
どう組み合わさるかが問題なのであって、
何か月から、という区切りで一般化して言えるものではない
ということを実感したのです。

赤ちゃんの身体の発達だけを考えれば、おそらく、
インドネシアで一般に言われているように、しっかりと身体ができて、
しがみつくこともできる「歩き始めてから」の方がいいでしょう。

けれど、それでは都会での生活は立ちいかないので、
私は、とりあえず何回かトライしてみて、
これなら大丈夫と思えた時点からするようにしました。

どういうふうにすれば大丈夫かは後で具体的に書くとして、その前に、
子育ての方法は、時代や文化や暮らし方によっても変える必要があるという指摘をしておかなければなりません。

日本女性の身体は、戦後、随分変わってきています。
今、帝王切開でなければ出産できない人が増えていて、
助産院は危険でなかなか出産が扱えない状況にすらなっていると聞きます。
(今、残っている助産院は、安全に出産させられるという自信のある助産師さんたちが運営しています。本当に信頼できる条件を整えられるところしか残りません)
私自身は、2人目の赤ちゃんを開業助産師さんに来ていただいて自宅出産しましたが、今は、もはや、母乳ケアや身体ケアだけ、という助産院が増えているのです。

同様に、赤ちゃんの身体も確実に変化しています。
生まれる前も生まれてからも。

たとえば、生まれてからの赤ちゃんの身体発達は、
生まれた季節によって、
衣類や部屋の温かさなどから異なってきますし、
育つ家屋が異なれば、運動が変わり、発達が変わります。
おんぶやだっこされている時間の長さ
(つまり、自由に自分で体を動かせる状況か)や、
床の素材によってすら、赤ちゃんの発達は異なってくるのです。

ですから、おんぶをしても赤ちゃんに負担をかけない月齢を
一律に定めるのは難しいと言えるでしょう。

たまたま私は期せずして、高校・大学時代に体操や合気道、
竹内敏晴さんの竹内レッスンで鍛えられ、
人並はずれて運動音痴な割に、身体の使い方を学んできました。

そうすると、
  前傾姿勢を取りながら背中の腰の上に赤ちゃんを乗せるとか、
  呼吸を合わせるとか、
  肩甲骨の間に赤ちゃんを収めるとか、
  後ろ手を組んでお尻を支えるとか、
そういうことが自然にできるようなのです。
そろそろというタイミングを見計らっておんぶをすると、
赤ちゃんがすうっと寝ていきます。
(おんぶをすると諦めて寝る、というタイミングでのおんぶは
 したくないので、しないようにしています) 
(小さい頃に、下の子の世話をしていた人も、
 身体の使い方を自然に学んでいてできるだろうと思います。
   ピラミッドを組んでいた元チアリーダーさんもさすがに上手でしたね)

また、(1990年代にはすでに珍しかったと思いますが)
自分の子どもたちは一本紐でおんぶして育てましたし、
今回のコロナ禍でかなり筋トレをしていたこともあって、
赤ちゃんのおんぶは安定してできます。
きっと昔の祖父母たちも野良仕事などの経験があって
誰でも自然にできたのだと思います。

しかも、近年はおんぶの発信をし続けてきたので、
これを機にと、いろいろなおぶい紐を孫に試させてもらってきました。

そこで言えることは・・・

若い頃から身体を使う経験をある程度持っていて、おんぶにも慣れていて、
赤ちゃんに身体の使い方を教えながらおんぶすることができれば、
(言葉で教えるわけではなく、身体に触れながら体得させるという意味なのですけれど)
多少、時機が早めでも(私の孫の場合は、寝返りができ、一人でのお座りはまだだけれど、かなり腰が安定してきた6ヶ月頃にスタート)
おんぶ紐の締め方や身体や背中の形を調整しながら、
なんとかおんぶはできるけれど、

そもそも赤ちゃんの身体の大きさが、負ぶう大人の背中に乗ったときに、
手を肩に載せられて、赤ちゃんがちょっと前が見えて、
お尻はその大人の後ろ手で支えられる状態になるのが安定性がよくて

だから、何か月になればできる、と言えるものではないのです。
(これは私の考えですので、特に専門家の方がどこかに書かれるときは、そう明記しておいて下さいね)

そうだとしても、
お尻の大きさが小さかったり、しっかり腰が据わっていなかったりすれば
12-13㎝程度の帯だけで身体を支えるのは難しく、
そういう場合は、幅広の布(できれば厚手、気温との相談ですね)で覆うようにしたり(一本帯でも晒でも大きな布をかけるように使うことで支えやすくなる)、腕でしっかり支えたりする必要があります。
つまり、道具や負ぶい手の技術によっても、できるできないが変わってくるということなのです。


(2016年春に、まだ、おんぶについての動画がほとんどなかった頃、こんな動画を先がけで作って、とにかくおんぶってこういうものですよ、しかもお金かけずにあり合わせでもできますよ、ということを伝えようとしました。もっと詳しい説明が必要だったかもしれませんが、それはこの後、あっという間に、youtubeにたくさん動画が出回るようになったので、それらに先鞭をつけた意味はあったと思います)

また、できる、というのは、
赤ちゃんの発達にとって負担や無理のない範囲でなければならないわけで、
そうでなくて形だけやってできた、というのは、
どんな状態でも言えてしまいます。
(だから、SGマーク上で4ヶ月、首が据わったらいいです、なんて形式的なことが言えてしまったりします。せめて、首が据わっても腰が安定していないときはおんぶは早いと書いてほしいものです)

とはいえ、実際のところ、今、おんぶができる人は少なくて(短時間でもいいので素手で出来ることも一つの目安になります)、できても第二子以降を家の中でだけ、という人が多いようです。

おんぶ紐でおんぶができれば、両手が空き、眠い赤ちゃんはすぐにぐっすり眠ることができるので、とても便利な日本文化なのですが、
身体の使い方を覚えなければならず、また、子育てが、ある意味、ファッションになっている今の時代に、ファッション性が高くない(上の動画のように、うまくすればおしゃれなんですが)おんぶはなかなか拡がりません。

ただ、今日はおんぶの話で説明させていただいたのですが、
赤ちゃん育てのポイントはもっともっとたくさんあって、
一番伝えたいことは、
赤ちゃんを育てるのに、「こうしたらいい」というマニュアルを作ったとしても、とても細かな説明が必要になってしまうということ。そしてその通りには行かないし、そうする必要もないことを、まずはケアギバーになる人たち(保護者など)に理解していただかなければなりません。

とりあえず、一人っ子であれば、親が感覚を身につけた頃にはもう赤ちゃんは次の段階に進んでいる、という感じですが、それでも親は自分の赤ちゃん一人のことがわかればそれでいいので、なんとかなるかもしれません。

が、そこで会得した勘は、次の子どものときには必ずしも使えるとは限らなくて、何人もの赤ちゃんに出会わないと、親もなかなか育たないようです。

指標を明確化することがよいこととされるマニュアル文化では、
こういう複雑さを受け入れることがとても難しいようですが、
赤ちゃんを育てる、という経験を通して、次々と、
「思い通りにならない、計画通りにならないこと」に向き合う
柔軟性のトレーニングをする
ことが、
実は今の大人たちにとってとても大切なことだと私は思っています。

そのことを書きたくて、こんなに長い文章(6000字!)になりました。
最後までお読みくださってどうもありがとうございました。

(しばらく書き直しなどするかもしれません。
 どうぞご了承くださいませ)

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