喫茶店でバイトを始めてもうすぐ1年。

「ごちそうさま」や「ありがとう」がこんなに嬉しいなんて知らなかった。

笑顔で言ってくれるお客様、それだけでもう心はハッピー。「うふふ」って思いながらこちらも笑顔で送り出す。

数人が座っている席に食事を出すときに、「チーズトーストのお客様」って声をかけると、「僕です！」ってちゃんと言ってくれるお客様。置きやすいようにテーブルを片付けてくれるお客様。私がいう「(置きやすくしてくれて)ありがとうございます」は心からの言葉。小さいことかもしれないけれど、そんな小さなことで嬉しくなっちゃう。

そんな嬉しくなっちゃう瞬間たちを、ここに。

ある日女性のお客様が、カレーのハーフサイズと生姜焼きを頼んだ。ぺろりと平らげてアイスオレを飲む姿は、なんだかかっこよくて素敵だなぁと思った。

別の日には、「今日はさっぱりしたものが食べたいわ」と言ってコーヒーゼリーを頼んだ女性の方。「上にアイスと生クリームは乗せますか？」とオプションを聞くと「ダイエット中だけど…お願いします」と控えめな笑顔で言った。
そしてダッチコーヒーをオーダーした。「これも生クリームをおつけできます」と聞くと、「うーん」と悩んで、はにかみながら、「お願いします」と言った。

すごくすごくかわいらしいと思った。お会計で、またはにかみながら「また来ます」と言って帰って行った。

午後3時、男性4名のお客様の1人が、メロンソーダを頼んだ。ほかの方はアイスコーヒーだったけど、先に出てきたメロンソーダを見て「美味しそう！」「変更してもらえますか」と全員がメロンソーダに変更。なんだか微笑ましい。

ランチタイムには、初めて来たであろう女性と男性のお客様。女性のお客様がメニューを見てから「プレート」をオーダーした。これは、厚切りトーストにサラダ、そしてメインは週替わりで、その時はたしかキーマカレーだったと思う。それにヨーグルト付き。

とってもボリューミーで、私でも運びながらお腹が鳴ってしまいそうになるほどに見た目も美味しそう。そして大きなお皿に綺麗にぎっしりと詰まったそのプレートは、運ぶときとってもお皿が重い。

煙草を吸いながら書類を見ていた女性の目の前に置き、彼女が「プレート」に目をやった途端、「うわあっ！」と声を出した。

彼女の予想を上回った豪華さだったんだろう。

プレートを置くたびに、男女問わず「わあ」「すごい」「美味しそう」「豪華」という感嘆の声がよくあがる。それを聞くたびに、実は心の中で「うふふ」と思っている。「たくさん食べてね」って思いながら、お客様のテーブルにお食事を置いている。

ある日、海外からのお客様が来て、英語が話せるのはホールに私だけだったから私が対応した。
帰り際に、携帯を出して何かを打ち始めたからなんだろうと思ったら、わざわざ翻訳機で「あなたのお客さんへの笑顔はとても素敵です、私の一日を明るくしてくれました」って伝えてくれた。

見てくれてる人は、見てくれてるんだなと心がきゅーっとなった瞬間。

そんな、さまざまな瞬間がすき。

お客様に対して、ある種の愛情のような、そんなものを抱くときがある。

「お疲れさま」「また来たよ」「美味しかったよ」「また来るね」「ごちそうさま」「ありがとうね」

こんなときめく言葉たちがすごくすごくうれしくて、私は「うふふ」が止まらない。

素敵な人たちが来るだけで、コーヒーを淹れる手は軽やかになるし、レモンスカッシュを作る指は滑らかになる。
うちで美味しいものを食べてもらいたいなって、飲んでもらいたいなって心が優しくなる。

もちろんイラッとしてしまうときだってあるけれど、それ以上に、お客様との対話が、お客様が与えてくれる素敵な瞬間が、すごく楽しい。

お客様からの一言が、とってもときめいて嬉しくてたまらないことがあるのです。

いつも店員さんに優しくしてくれる方ありがとう。

たくさんの瞬間に、お客様をいとおしく思うときがある。これからもきっと、そんな瞬間をたくさんたくさん心に詰め込んでいけたらいいな。

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染谷ノエル

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