花火大会〜街を歩けば浴衣女子

街を歩けば浴衣女子。
甚兵衛を着てる男などどうでもいい。
 
街を歩けば浴衣女子。
カランコロンと浴衣女子。
 
 
いろんなところで花火大会。
それに向かう浴衣女子。
 
恋人とかな。女友達とかな。
友達以上恋人未満とかな。
 
そんなことはどっちでもいい。
花火大会に向かう浴衣女子。
 
いや、本当は浴衣女子は二の次で。
いろんなところで花火大会の方に
俺は心を使っているのかもしれない。
 
 
俺だってなぁ。俺だってなぁ。
恋人と花火大会に行ったことぐらいあるさ。
大学のサークルで行ったことだってあるさ。
 
でもなぁ。ここ数年はなぁ。ないんだよなぁ。
 
 
本当のところ、心から行きたいかというと、
決してそういうわけでもなくて。
 
行ったら行ったで人がうじゃうじゃで。
ビールを買うにも行列で。
つまみを買うにも行列で。
価格も異様にピンハネで。

トイレに行くにも行列で。
トイレを待つのも一苦労で。
待ち合わせではぐれるなんてのもありありで。
 
花火が始まったら始まったで。
スマホ越しに写真やら動画を撮る奴ばっかで。
それならYouTubeでもいいんじゃないのって。
 
帰りも帰りで大行列。
すし詰めの電車。汗。匂い。疲労。

そんな感じになるのが見え透けているから、
心から行きたいわけでもなくって。
 
 
でもよ、でもよぉ。
 
花火大会に行くこと自体が充実じゃないか。
中身がどうとかじゃないんだよ。
「行くこと」自体が輝きなんだよ。
 
大好きな人とかとさぁ。
ドキドキしながら幸せな気持ちでさぁ。
どかーんどかーんとした花火を見るのがさぁ。
 
それが「楽しい」んだよ。
それが「心を満たす」んだよ。
それが「羨ましい」んだよ。
 
 
はぁーあ。はぁーあ。
はぁーあのあー。
 
俺も行きてぇなぁ。花火大会。
どっかで待ち合わせして、
そしたら女の子は浴衣着てきてて。
 
素敵だなぁって言いてぇなぁ。
その女の子にも花火にも。
 
どかーんどかーんって。
花火も。俺も。
 
 
街を歩けば浴衣女子。
カランコロンと浴衣女子。

青春を味わえなくなった男の
泣くに泣けない悲哀とともに。
 
気持ち悪いとも思える
羨望と残酷が僕から生まれる。
 
 
はぁーあ。はぁーあ。
はぁーあのあー。