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【500人を選考してわかった】マーケター採用で戦略的思考を見抜く、たった2つの質問

大変ありがたいことに、現職ではたくさんのマーケターが求人に応募してくれる。他社のお手伝いも含めて、昨年の選考数は約500人。さすがにこれだけ場数を踏むと、マーケターを見る目が肥えてくるものだ。

選考における企業と候補者の立場は対等、というスタンスが前提ではあるが、今回は面接官の立場から、良きマーケターとそうでないマーケターを見抜く方法を書いてみた。(そのうち候補者側のコツも書きたい)


採用したいのは「手足人材」より「アタマ人材」

マーケターをざっくり分けると「手足人材」と「アタマ人材」の2種類がいるように思う。

「手足人材」とはマーケティング戦略の理解を必要としない、戦術実行要員のこと。広告の運用やメルマガの配信設定、制作物のマークアップなど、主に川下の作業を担う人がこれに当てはまる。
一方の「アタマ人材」はマーケティング戦略を深く理解し、戦術への落とし込みができる人のこと。「アタマ人材」は自立して思考し、「手足人材」をディレクションし、成果にコミットする立場にある。

そして、専門領域やポジションの上下に関わらず、社員として採用すべきはアタマ人材だ、というのが自分の基本的な考えである。理由は単純で、手足人材の業務領域はいくらでも外注できるからだ。(そのため、優秀な手足人材はフリーランスや代理店などにいることが多い)

アタマ人材は希少性が高いため、「現場担当レベルの社員であれば手足人材で十分」と考える企業もあるだろうが、自分の経験則からすると、中途入社の手足人材が後から戦略思考を身につけるのは容易ではない。どうしても理想のマーケターが見つからないならば、スキルの高い手足人材よりも、スキルが未成熟なアタマ人材をとる方が良い。

面接で「アタマ人材」を見抜く、たった2つの質問

しかし、実際にはアタマ人材と手足人材は白黒くっきり分かれるわけではない。戦略的思考の強さは程度問題であり、面接ではそれぞれの専門知識に基づいてそれっぽいことを話すので、実際に判別するのは意外と難しい。

我が社の面接は1時間1本勝負、しかもリモート環境なので、限られた時間で相手を見定めるのにいつも苦労している。その中で最終的に「アタマ人材」かどうかを短時間で見抜く2つの質問を見つけたので、以下に共有したい。

  1. これまでのマーケティングで、一番自慢できる成果は何ですか?

  2. どのようにしてその成果を出したのか、順を追って教えてください。

オーソドックスすぎて拍子抜けしただろうか。しかし、死ぬほど面接した結果、これがベストだったのだ。

「アタマ人材」を見抜く、回答のチェックポイント

①自慢できる「成果」を答えられるか?

 ⚪︎ Aというサービスを企画して、初年度に5億円を売り上げました
 × 社内で初めて集客セミナーを実施しました

当たり前すぎると感じるかもしれないが、成果に責任を持たないマインドで仕事をしてきた人は、「マーケティングの成果」が出てこない、あるいはそもそも理解できないことが意外に多い。
ビッグなものでも、ちょっとしたものでも、定性的でも定量的でも構わないのだが、例えば解答例の「社内で初めて〜」というのは単なる手段の話であり、マーケティングの成果とはいえない。即戦力を求めるならば、これに答えられないのはやや厳しい。

②成果を出したプロセスに「顧客心理」が登場するか?

 ⚪︎ 当初Aという訴求がうまくいかず、顧客は***という悩みを持っているのではないか?と仮説を立て、Bの訴求を試して成功しました
 × 広告の配信設定を見直し、ABテストを繰り返した結果、コスト効率が非常に高まりました

2点目のチェックポイントは、マーケティングのストーリーが顧客中心になっているかどうかだ。特にデジタル広告は「数字いじり」で成果がある程度改善してしまうので、どれだけ複雑高度な広告運用をしたかという話が出てくることが多い。それはそれで良い話なのだが、惑わされてはいけない。それしか話せないなら、その人は手足人材だ。

そうではなく、成果の背景にある顧客心理に寄り添い、心を動かす商品やメッセージを考え抜けているか、それが納得感のあるロジックでつながっているかを確認してほしい。どんなに些細な成果であっても、顧客を想像して自分なりの仮説を立てられたかが重要だと思う。

面接で計りたいのは瞬発力ではなく、最大出力

以上が自分の考えるマーケター採用のコツだ。汎用的な面接テクニックは人事領域の人の方が詳しいと思うので、そちらに任せたい。自分が伝えたかったのはあくまで「マーケター」の質を判断するためのノウハウだ。

なお、前述の質問に対して、こちらの望む通りのことをスラスラと答えられる人はそれほど多くない。自分の場合、質問の意図がうまく伝わっていなければ補足的に説明するし、ぱっと答えられなければ何分でも待つ。面接の前に「こういう質問をするんで」と予告することもある

面接で計りたいのは瞬発力ではなく、最大出力だ。質問に関する十分なインプットと回答時間を与えられた上で、その人が何を答えるのかがとても重要だと思う。マーケターの採用に関わる人がいれば、上述の質問をぜひ試してもらいたい。


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