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『ザ・ロード』とのつづき(コーマック・マッカーシー ハヤカワepi文庫)

『ザ・ロード』という小説があります。コーマック・マッカーシーというアメリカの作家がピュリッツァー賞をとった作品で、終末後の世界、廃墟と化した大地で、次第に人間性を失っていく生き残りの人々の中を旅する父子の物語です。

父は子を守ります。ひたすらに守ります。(地元)に帰ってきてから、ママはずっとその本をカバンに入れていました。子供を守らなくてはならない。生かさなければならない。そんな切迫感の中で、この本がお守りでした。

この本を毎年必ず読み直していました。次第に、守られているのは、父のほうではないかと考えるようになりました。簡単に命が失われる世界で、命を投げ出したくなる世界で、しかし父を支えているのは守るべきものの存在です。

子こそが父の灯火であり、生へのよすがではないか。子こそが父を守っていたのだ、守られるべき存在として共に在ることで。そう思いました。

そして、こう感じています。この灯火が託されていく、ママは今このシーンに立ち会っているのだと。もしかしたらあと何回か、立ち会うことのできるシーンなのかもしれません。やっと、この本を理解できたように思います。そして、なぜこの本から離れられなかったのか、わかったような気がします。この本を手に取り、最後まで読む機会があれば、ママがどんなことを悩み、考えながらお兄ちゃんと6年間を過ごしたか、もしかしたらわかるかもしれません。

ママは、うまくママになれない。お兄ちゃんを傷つけてばかりいるのかもしれない。逃げ出したくなっても当然だとわかっています。それでもいつか、少しでも伝わりますように。ママは確かにお兄ちゃんと小さい人が好きで、側にいたくて、その成長を喜んできたのだと。

お兄ちゃんに楽しく明るい未来がありますように。

それを祈る今が、ママの幸せです。

希望とは、何か。


(長男の小学校卒業時に送った手紙)
『ザ・ロード』(コーマック・マッカーシー ハヤカワepi文庫)

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