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Gully Boyのステッカーと共に旅するインド 後編【2019.10】

前編の続きというか、余談だらけの前編からようやく本題に入る後編。

前編の内容を簡単にまとめると
映画「Gully Boy」の日本公開初日特典でもらったランヴィール・シンのイラスト入りステッカー。これを、インドにいるランヴィールを心から愛する女性を探し、見つけ出してプレゼントするミッションを勝手に自分に課して旅することにしたという話。(こんなに短い内容に、なぜ3000文字も費やしたのかは前編を読めば分かります。モディ首相が関連しています。)

さて、日本の映画館で映画「GULLY BOY」の公開記念にもらったこちらの「ラップの化身ステッカー」

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これを、本当にランヴィール・シンのことを愛している人に渡すべくインド旅が始まった。
デリーでは、数人のインド人男性グループに好きなボリウッド俳優を聞いたところ、ランヴィールと答えた人はいなかった。
そこで、インド人女性にターゲットを絞ったのだが、普通にぶらぶら旅しているだけなので、あまりインド人女性と話をする機会がない。
こりゃ、もしかしたらそのまま日本にお持ち帰りかもなぁと思いつつ、チャンスをうかがいながら旅していた。

デリーのチベット人街マジュヌカティラにてモモを食べ、ラッシーを飲みながら。

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この街で買ったFREE TIBETのステッカーを水筒に貼ってみた。
そして、もう一つのステッカーを再度確認。

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これを誰かに渡せるのか…。
まだ見ぬランヴィールファンに想いを馳せる。

3日間ほどデリーに滞在し、デリーから夜行列車でバラナシに向かうことにした。
2Aクラスの寝台なので、ステッカーチャンスがありそうな気配。

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お向かいの下の段にインド人女性がやってきた。少し挨拶と自己紹介をしあったのだが、ステッカーチャンスは急激な眠気により放棄し、眠った。
すると、お向かいのクムドさんが、私が寝ていても色々とお菓子をくれる。
ツンツンとつついてわざわざ起こしてくれて、「ほら」という顔をして何かを差し出してくれるターンが続く。
言っておくが私は耳栓とアイマスクで完全睡眠体制なのにである。
そして、一回で全部渡してくれればいいのに、眠りの深さがちょうどいい頃合いを見計らってツンツン。
しまいに自分のスマホの中の謎の動画(太ったインド人おじさんがお経を唱えているのに周りが爆笑しているやつ)を見せてくれる。
そのスマホの画面が眩しすぎて完全に目が覚めた。
まだ22:30だし、起きることにして耳と目の睡眠装置を外して体を起こした。
そしたらクムドさんが持参していたタッパーをカバンから出してフォークを渡してきた。
「食べて食べて」と言ってニコっとする。
わたくし、お店以外のよく知らない人のタッパーに入った手作りの食べ物は口にしない主義でして。
そんなことは言えない雰囲気。
しかもその食べ物が何なのかよく分からない。
どうしようか。
まあ白色で辛くなさそうだから一口だけと思い、手で食べるような代物ではないが手でつまんで食べた。
おや。美味しい。
ツナマカロニサラダでほんのりカレー味。
口の中でマヨネーズの後に、ほのかにマサラが追いかけてくるのがさすがインドである。
手をべちゃべちゃに白くしながら(あくまでよく知らない人のフォークは使わない、コロナ禍前であろうと)、クムドさんと2人で23時にもりもり食べてしまった。
そして、おしゃべりタイムに入ったのでタイミングを見てクムドさんに好きなインド人映画俳優は誰かを聞いてみた。
「アクシャイ・クマール!」
おお、新たなパターン。
アッキー(通称)を一番にあげるとは。

私はアクシャイの顔が苦手なので彼の映画をちゃんと見たことがない。
日本でも公開された「パッドマン」の主役だが、それも見てない。(今はもう見たし社会派で良かった。)
クムドさんがアッキーについて熱く語る。
社会派の真面目な役もできるし、コメディアン風な役もできる。演技派でセクシーだとのこと。 
もうすぐ公開される「Housefull 4」を楽しみにしているのよと興奮しながら話すクムドさん。
そんなに楽しみなら私もその映画を見ようかなという気になった。
(それから毎日housefull4のMVがテレビで流れるため見たくて見たくて仕方なくなってしまい、実際にバラナシで見たがめちゃくちゃ面白かった。その時の話はこちら)
インド映画の話に花が咲き乱れてしまったが、残念ながらランヴィールの名前は出ず。
「GULLY BOY」を見たか聞くと、「もちろん!」と言って映画の1番メインとなる歌「Apna time aayega」のMVをスマホで見せて口ずさんでくれた。2番目と3番目に好きな俳優を聞いたら、私の知らない俳優を1人(失念)とSRKを挙げてくれた。
うーん。
ここは厳しくルールに則り、ステッカープレゼントにはならず、代わりに日本から持ってきた飴ちゃんをたくさんあげた。

そしてバラナシに到着。
バラナシを毎日ぶらぶらしていたが、なかなかインド人女性とおしゃべりする機会はやっぱりない。
その代わり、町で予想外のものをやたらと目にすることになった。
「Apna time aayega」タンクトップと
「Apna time aayega」Tシャツがあちこちで売られていて、働くインド人男性の何人もがそれを着ている。
カラーバリエーションが多くてあまり他人とはかぶらないものの、お揃いガリーボーイの多いこと多いこと。
ちなみに、「Apna time aayega(アプナ・タイム・アエガ)」はヒンディー語で「俺の時代がきた」という意味。
時代が来まくっている。

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ガンジス川のボートを漕ぐお兄さんもアプナ・タイム・アエガ。
「GULLY BOY」の影響の凄さ、時代が来ていることを感じる。
いや、私の脳がガリーボーイ麻痺していて見つけてしまうだけかもしれないが。
ランヴィールのステッカーを手渡しできる時代も来ている気がする。
バラナシのガンジス川の写真もついでに。

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そんな中、バラナシの映画館でクムドさんの推しメンが主演の「Housefull4」を宿のオーナーたちに予約してもらって、鑑賞。
めちゃくちゃ面白かった。
ヤバいぞアクシャイ・クマール。


そして、宿に戻り、宿の人たちと映画の感想からインド映画談義が始まった。
そこでも私はランビール・カプールが一番好きだと話すと男性陣から変な顔をされた。
そしてその日の新聞記事を持ってきてくれた。ランビールことRKが今の彼女のアーリヤ・バットと結婚か?という記事を見せながら、こいつは女をとっかえひっかえする、しかも一流のボリウッド女優ばかり、と興奮気味に話す。
彼のファンのインド人女性は熱狂的な人が多くて、彼が誰かと婚約する噂が出るたびに自殺未遂を起こす人がいたり、アンチテーゼとして黒い服を着たりする、とインド人男性陣からRKが好かれていない理由が少し垣間見られた。
(私もその日は黒い服を着ていたから「君もそうか?」と聞かれた。違います。)

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そんな「ビ」の方のランビールの話をしていたら、なんと!
ステッカーチャンスが突然そこに降ってきたのである。

「私はランヴィール・シンが一番好きよ」

え、今なんとおっしゃいました?
「ヴィ」の方でしたか?
同じ部屋に泊まっているケーララ州から来たインド人の女性のローズだった。
「1番の俳優は彼しかいない、彼こそが本物のスターよ。」
キター!その言葉を待ってました。
「セクシーだし、ユニークだし、オーラもある、マッスル最高、歴史物のコスチュームも似合うのに現代の役も似合う、とにかく美しい。」
ローズの言葉からパッションが溢れ出ていた。
よし。最後にこれだけは確認しよう。
「GULLY BOYは見た?」
するとローズは、「え?あなたもGULLY BOYを見たの?日本で?ありがとう!最高よ。日本でもGULLY BOYが上映されていたなんて。ありがとう!見てくれてありがとう!」なぜか興奮気味に感謝されて、お決まりのアプナ・タイム・アエガを口ずさまれた。
流れは完璧である。

私はそっと、iPhoneのカバーのポケットから「ラップの化身」ステッカーを取り出して渡す。
感動的な場面。
のはずが、
「え?これ誰?」と戸惑うローズ。
いや、これ、あなたが最も愛するランヴィール・シンやからー!!
そして、好きな俳優を聞いてランヴィールの名前が出たらステッカーをプレゼントする旅をしていたことを説明。
それにはものすごく感心してくれて、光栄だわと喜んでくれたが、ランヴィールのステッカーが嬉しいというより、(謎の)日本語の書かれた物を貰えるのが嬉しいような雰囲気。
まあ、いいや。
あげると言っちゃったし、「ラップの化身」を指差してどういう意味?と聞かれたが、私自身もよく分からない。「アバター・オブ・ラップ」とか適当に答えて、ステッカーはローズに引き取られていった。

けれど、1万2千kmの距離を日本から飛んでデリーにやってきて、それから860㎞ほど電車で揺られてバラナシへ。ステッカーとともに旅してきた私の手を離れて、バラナシから2000㎞離れたケーララ州から来たインド人女性のもとへ引き取られていくのである。ただのランヴィールのファン探しのレベルを超えている。
これは旅の浪漫である。
そう思えた結末であった。

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結構嬉しそうにしているローズ。
ステッカー旅はバラナシにてミッションコンプリート。
その日の晩、宿のテレビでは、ランヴィールが祝い、歌い踊っていた。

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その後、旅の終わりに、映画「GULLY BOY」の舞台となっているムンバイのダラヴィ スラムを歩いたのだが、そこでガリーボーイの時代が来ているのをまたも感じる。
ローズで良かったと今は思うが、本当は映画が生まれたこの地で誰かと出会ってお渡ししたかった。

歩いていると2人の少年に目が止まった。

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スラム街の近くで出会った少年のアプナ・タイム・アエガ長袖バージョンと半袖バージョンのペア。
あまりに嬉しくて、私から話しかけてTシャツを指差して彼らとアプナ・タイム・アエガを歌ったら、スラムが少し沸いた。
インドを旅して、インド人の映画ファンたちと動画を見たり話したりしているうちに私もすでにこの歌を歌えるようになっていたのである。
配給会社に頼んでステッカーを20枚くらい貰って、ここで歌いながらばら撒きたかったなあと、お前何様的に思う。

「ラップの化身」ステッカーと旅してきたおかげで、予想外の旅の楽しみ方ができた。
ランヴィール・シンに感謝するとともに、今後も独自の方法で、インド映画についてのフィールドワークを続けていきたいと思う。

インドの人たちよ、いつかまた。


ダラヴィスラムの街中では写真を撮らなかったが、撮っていいと言われた場所の写真だけ少し。

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追記:
アプナ・タイム・アエガTシャツの多さにびっくりしていた私だが、翌日、ボリウッドのキングことシャー・ルク・カーンの誕生日に桁違いに何千人ものファンが集まり、そのうちの百人以上がキングのTシャツを着ていたのを私がこの目で目撃したのはまた別のお話。


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