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韓国で子どもがインフルエンザにかかったら

 インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎などが猛威をふるっている韓国で、わが家の5歳児もついにインフルエンザ(韓国語では독감)にかかってしまいました。

 先週金曜の夜、テコンドーの練習を終え、家に帰る車の中で突然「手が痛い」と言い出し、家に着いてお菓子を少し食べたところで、急に「寒い」と布団にくるまりました。そこから一気に39度の高熱。

 過去に熱性けいれんを起こしているので、熱が出始めると「またけいれんが始まったらどうしよう」と怖くなり、いつも生きた心地がしません。「そんな大袈裟な」と思う人もいるかもしれませんが、子どもが突然意識を失い、両手を突き出して硬直し、青白い顔で白目を向いて震えている姿を一度でも見たことがある人は、きっと同じ気持ちなんじゃないかと思います。

 もう二度とあんな経験をしたくない、させたくないという思いから、いつもなら38度を超えた時点ですぐ病院に連れていくか、常備している解熱剤を飲ませていたんですが、今回はすでに病院が閉まった後。また、インフルエンザの場合、熱が出たからとすぐ検査を受けても、ある程度ウイルス量が増えないと陽性になりません。検査は発症の12~48時間以内に受けるのが望ましいそうです。私は昔、はやく検査を受けすぎて普通の風邪と診断され、翌日になっても高熱や全身の痛みが続いたので再検査し、陽性になったことがありました。なので、病院は土曜日の朝一番に連れていけば良し。

では病院に行くまでの12時間、解熱剤を自己判断で与えるか、どうするか?念のため調べてみると、インフルエンザの場合、飲ませてはいけない解熱剤があるという情報を日本の医療情報サイトでいくつも目にしたんですね。だから今回解熱剤は飲ませず、アイスパックで脇の下や太ももの付け根を冷やしたり、ぬるま湯につけて絞ったタオルで背中をふいたりしながら、一晩中つきっきりで見守りました。

 翌朝かかりつけの病院(近所の耳鼻咽喉科)に行くと、インフルエンザと確定。「解熱剤はありますか?」と聞かれたので前述した解熱剤の話をし、今回は飲ませてないと伝えたら、先生は「そんな話は聞いたことがない。高熱が出たら解熱剤を飲ませて」と一言。飲ませてはいけない解熱剤などない、と言うのです。

 日本ではインフルエンザの場合、解熱剤はアセトアミノフェンの方を使用するよう推奨されているようなんですが、韓国ではそんな話ないのかしら…。気になってちょっと調べてみると、アセトアミノフェンとイブプロフェンを交互に使用することを推奨している医師がいたり、実際にそうやって子どもに飲ませたという人がいたり。はっきりとした情報はつかめませんでした。

 そういえば息子が1歳半の頃、突発性発疹に伴う熱性けいれんで救急に運ばれたときも、3歳になる直前にアデノウイルス感染し1週間入院したときも、38度以上あれば2時間おきに2種類の解熱剤を交互に飲ませるように言われたんですよね。あとはひたすら、ぬるま湯でしぼったガーゼで身体をふきつづけ冷やすようにと。解熱剤を2時間おきって、ちょっと飲ませすぎじゃないかと思いましたが、そのときは言われる通りにするしかありませんでした。

 子ども向けの解熱剤、韓国の薬局では大きく分けて2種類、アセトアミノフェン系とイブプロフェン系が売られているのを見たことがあります。息子はいつも、喘息の治療で通っている大学病院の先生に맥시부펜《덱시부프로펜》という解熱剤を処方されているんですが、これはイブプロフェン系のよう。なので、家ではアセトアミノフェンの方を常備しています。もし病床がいっぱいで入院できない事態などが発生した場合、昔病院で教わった通り、2種類の解熱剤を交互に与えようと思っていたからです。

 でも今回は日本のお医者さんたちの言葉を信じ、インフルエンザかどうか確定していない段階で自己判断で解熱剤を与えるのはやめました。息子は苦しかったと思うけれど、韓国に来てから解熱剤を多用することにずっと疑問を持っていたし、無理に熱を下げることは逆に治りを遅くするんじゃないかとも思ったので…。

コウケンテツさんのYouTubeを参考にサムゲタンを作りました

 インフルエンザと診断された病院では、アセトアミノフェンの解熱剤と、ハンミフル(한미플루)という薬を処方されました。ハンミフルはタミフルと同じくインフルエンザの治療薬で、韓国国内生産だそう。1日2回、12時間ごとに服用し、5日間飲み続けないといけません。

 過去に日本で、インフルエンザにかかった子どもがタミフルを飲んだ後に異常行動を起こしたというニュースを見ていたので、ドキドキしながら飲ませたんですが…。病院から帰って初めて解熱剤とハンミフルを飲ませた後、寝ているのを確認し数分ベッドを離れた間に、なんと息子が起き上がり、部屋の隅っこで立ち尽くしていたんです。それも、何かに怯えたような顔で!

 怖くなってすぐ薬局に電話し、状況を説明すると「インフルエンザにかかったら、治療剤服用の有無に関わらず異常行動を起こすことがあります。だから数日間は子どもさんから目を離さないでください。もし異常行動が続いたり、薬が飲めないような状況になれば、すぐ病院に行ってください」と言われました。

 高熱を出してから今日で5日目。幸い高熱は2日目の朝で終わり、毎日夕方になるとグズグズ言い出すものの、日中はとても元気に家で遊んでいます。元気過ぎて親の方がもうグッタリですが、今のところ私も夫もインフルエンザにかかることなく、なんとか生きてます。このまま感染せずに逃げ切りたい!

 それから、病院では「小学生はインフルエンザと証明する書類が必要ですが、幼稚園の子は必要ありません」と言われたので何ももらっていませんでした。ところが、幼稚園の先生には「소견서(所見書)がないと欠席扱いになるので、出席日数を気にされるようであれば病院でもらってきてください」と言われたんですよね。あと「他の子はインフルエンザと確定してから4~5日休んだ後登園しています」と言われ、本当は今日から行っても良さそうだったんですが、大事をとって今日までお休みしています。

 韓国で暮らしていて何が一番不安かと言えば、それはまさに「子どもや家族が病気になった時」です。もちろん、自分が病気になるのも不安ですが、自分の身体の症状はある程度わかるじゃないですか。でも、子どもはどこがどう痛いのか言葉でうまく説明できないので、微妙な変化を親が感じ取り、それを韓国語で病院の先生に的確に伝えないといけません。伝え方を間違えれば勘違いされて、適切でない治療をされる可能性もあるわけです。だからいつもすごく緊張します。今回のように、日本と韓国で薬に対する考え方などが違っている場合も、ちょっと混乱してしまいますね。

けど、不安がっていても仕方がないので、日韓の医療情報をどちらも確認し、病院の先生の話もよく聞いて、子どもの状態を毎日よく観察し、最終的には自分の勘や本能的な力も便りに判断するしかありません。

子どもは病気にかかりながら丈夫になっていく、と何度も聞いたことがあります。看病中は子どもも親もいろいろ辛くて大変だけど、人間が持つ自然治癒力を信じ、成長の階段を上っているのだと前向きにとらえたいと思っています。

そうそう、時々「子どもが体調を崩すのは母親のせいだ」と思い、罪悪感を抱いているお母さんたちの言葉を目にするんですが、そういう発想ていつ、どこで、誰から植え付けられたものなんでしょうね? 私は自分自身が小学校入学前まで入退院を繰り返す子どもでしたし、病気で一回死にかけたこともあったし、その後も1~2年に1回は風邪をひく感じで今まで生きてきました。でも一度も、母親のせいでこうなったなんて思ったことないなあ。遺伝、体質、環境、生活習慣などいろいろな要因で病気になるわけですしね。もし子どもが何度も体調崩して自分を責めているお母さんがいたら「あなたのせいじゃないよ」って言ってあげたいです。

最後に、今回解熱剤に関する話を少しだけSNSに書いて投稿したところ、自然療法について教えてくださった方がいました。「うちも子どもがインフルエンザかかってるよ」と連絡をくれた友人知人もいました。看病のため家に籠っているとどうしても気が弱るので、友人知人のメッセージにはとても励まされましたね。

もし身近に弱っている人や、弱った人を看病、看護し続けている人がいたら、ぜひお見舞いやねぎらいの言葉をかけてあげてみてください。時々「心配されたくない」っていう人もいますけど、そんなの強がってるだけですから。たぶん(笑)。放っておくという優しさもあるけど、放っておかないよってさりげなく伝えることも、また、人の優しさをちゃんと受けとることも、大事だと私は思ってます。大切な人ならなおさら。

冬はまだまだこれから。どうかご自愛ください!

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