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『いつものこと』 【詩】

朝がいつも同じだから
いつもの自分になるのは容易
風は私を舐めまわして遠くへ吹き抜けた

視線を横切るのは
義憤に満ちた影法師

歩く速度を保ちながら
生きた人間のふりをする

教室に入ると
机に反射した朝日が目を刺す
視界が光に浸される

室内に充満する憎悪が色彩を奪ってゆく
雨の音が強くなる

階段を撫でるように垂れる雫をしばらく見ていた
腕を食った虫を殺した
静かに血が垂れる
ああ
大きく見開いても
何も変わらない
今が今として時の響きを持つだけ
光の先にも疲弊した未来が色を失って「ある」だけ
重力に逆らって上る血はもう赤くない
腕から垂れる黒い血は目の前を落下する雨粒といっしょ

もう二度と、もう二度と

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