沼澤

想像すること思うこと  鬱蒼とした平生に 茜の瞬間を 一滴、ラー油みたいに …

沼澤

想像すること思うこと  鬱蒼とした平生に 茜の瞬間を 一滴、ラー油みたいに 小説、ショートショート、詩、随筆等を書いていきたいと思います。 見出しの写真も自身で撮ったものを使用することがあります。 ただの20代男性です。 ※初投稿2020/12/6

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『雨とビールと丸メガネ』 【ショートショート】

 雨音が動悸を加速させる。彼女に会うのは久しぶりで、少し早く着きすぎてしまった。傘を買うまでも無いか、と梅雨の雨脚を舐めすぎた。店に着くやいなや雨は激しさを増し、もうこの店を出させまいと、雨粒混じりの風が店の窓を勢いよく殴る。  「お一人様ですか?」  「いえ、後から一人くるのですが、大丈夫ですか?」  「はい、ご案内致します」  愛想のいい女性店員は若干濡れた私の髪や服を見て、  「ギリギリセーフでしたね」  と言ったが何のことかわからず、不思議そうな顔をしていると、  「

    • 『配達』 【ショートショート】

       大変なことになった。荷物が届かない。配達をお願いした業者のウェブサイトには、昨日の正午に荷物が届くと記載があったのだが、荷物は一向に届かず一日が経ってしまった。  しかしどういう事だろうか。今までこんな事はなかった。これは非常にまずい。というのも、最近のいわゆるコロナ禍によって宅配サービスを大いに利用するようになった私は、ほとんどの生活消費財を宅配サービスによってまかなっており、その便利さに依存しきっていたのである。頼んだものは全て指定した時間通りに届き、外出の必要性が本当

      • 『』 【詩】

        続く、遠いあの煙を 血の選択の時から見ている 様々な体と 様々な脳味噌の 有象無象が その時々の優先を気にして 儚くも盛大に、一律を成していく そうしてはみ出たワタクシは どういたしましょうか 聞こえたはずの海の音を 分かり得たはずの風の質感を 来なかった未来に預けた意識を あるはずの地球に浮かべて 光の矢に射抜かれることを 心から待っていたのだ 時間のミルフィーユを波のように行き来する ぼやけた蜃気楼の向こう側で もう一人のワタクシが待っている もう一人のワタクシ

        • 『釣竿と宇宙人』 【エッセイ】

          ”やさしさは善悪に帰属しない。全てを受け入れることにある。そうしてやさしさは命を持って、生きて、連鎖する”  そう思うようになったのはきっかけは小学6年生の時。 ある秋の日の放課後、私は珍しく暇だった。いつもならチャイムと同時に教室を飛び出してグラウンドに向かい、ランドセルを放り投げてサッカーをするはずだった。しかしこの日は、グラウンドを囲むように生えた木々に大量発生した害虫を駆除するにあたって殺虫剤を振り撒くからと、グラウンドの使用を禁止されたのだった。 みんなどうする?

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        『雨とビールと丸メガネ』 【ショートショート】

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          『交代』 【ショートショート】

           日曜日の深夜、深く酔って歩くのも億劫な帰り道に、住宅街の狭く入り組んだ路地の一角に神社を見つけた。こんな場所が近所にあったろうかと不思議に思いながらも、無意識に私の歩みはそこに向かい、ごく自然に鳥居の真ん中をくぐった。 境内には、小さな橋のかかった池があり、決められた範囲を泳ぐことしか許されていない鯉たちが、パシャパシャと水しぶきを上げて、池のほとりに現れた私の存在に反応していた。  この鯉たちは、私自身に興味を持って反応しているのではない。日々の習慣や経験から、この存在は

          『交代』 【ショートショート】

          『いつものこと』 【詩】

          朝がいつも同じだから いつもの自分になるのは容易 風は私を舐めまわして遠くへ吹き抜けた 視線を横切るのは 義憤に満ちた影法師 歩く速度を保ちながら 生きた人間のふりをする 教室に入ると 机に反射した朝日が目を刺す 視界が光に浸される 室内に充満する憎悪が色彩を奪ってゆく 雨の音が強くなる 階段を撫でるように垂れる雫をしばらく見ていた 腕を食った虫を殺した 静かに血が垂れる ああ 大きく見開いても 何も変わらない 今が今として時の響きを持つだけ 光の先にも疲

          『いつものこと』 【詩】

          『空虚な再現』 【詩】

           再現してみよう  あれからというもの  滑りゆく心の底の、もっと奥で  どうしたって掴みようのないあの人の歴史のように  怪しい光沢をちらつかせて  悲しみの蛇が、脱皮のため、蠢いている  再現してみよう  僕は見ているつもりだったけれど  真実、見せつけられているのだ  首を固定されて、瞼を切除されて  荒療治を受けている     「あなたの隣で寝ていると苦しいわ、夢で何度も絞殺されたわ」  不可思議極まりない  静脈、動脈。脈々と。  季節の先端にいるみたいに

          『空虚な再現』 【詩】