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映画「アイ・トーニャ」から考える~幼少期に受ける愛の重要性~


製作 2017年 米
監督 クレイグ・ギレスビー
出演 マーゴット・ロビー
   アリソン・ジャネイ
   セバスチャン・スタン

あらすじ
貧しい家庭で、幼いころから暴力と罵倒の中で育てられたトーニャ・ハーディング(マーゴッド・ロビー)。
天性の才能と努力でアメリカ人初のトリプルアクセルを成功させ、92年アルベールビル、94年リレハンメルと二度のオリンピック代表選手となった。
しかし、彼女の夫だったジェフ・ギルーリー(セバスチャン・スタン)の友人がトーニャのライバルであるナンシー・ケリガンを襲撃したことで、スケート人生は一変していく・・・。(アマゾン商品紹介より)

お母さん。愛はあったと思うんですよ。
始めから・・。
ただ、なんともねじれてるんですよね~
それがすべての元凶だという気がします。
褒められて伸びる人。けなされて、反発して伸びる人。
人それぞれだとは思うけど・・・
トーニャは叩いて伸びる子だと決めて、
知らない観客にお金払ってまでヤジを飛ばさせる・・
そんなお母さんです。
あめとむちは使いようというけれど・・
もう少し飴をあげてれば状況は変わっていたのではないかな・・

僕はよく苦労を知らないボンボンだと言われます。
家庭環境は恵まれ、両親から過剰なほどの愛情を注がれて育ったという自覚はあります。決して裕福な家庭ではなかったけれど・・。
むしろ貧乏で、子供のころ暮らしていた県営団地は、ネズミとゴキブリが駆けずり回り、近所の友達の家は借金取りに追われて夜逃げしたうちなんかもゴロゴロあるようなところで、何でも買い与られていたというわけでは決してありませんけど。
後で聞いた話では、僕を生んだ時、父親は失業中だったそうで・・・
お金の苦労はしてたはずですけど・・・
そんなことはみじんも見せなかったうちの両親でした。
同じようにお金がない貧乏でも、それを苦と思うか思わないかも人それぞれで、
うちの両親は苦労を見せないというより、貧乏暮らしを根っから楽しんでいるようでした。
例えば結婚式なんか町の公民館みたいなところで幼稚園みたいな紙で作った花とリボン飾って黒板にチョークでおめでとうなんて書かれて・・
そんなチープ結婚式の写真を楽しそうに自慢げに見せるんですよ。
そんな話を人にしようもんなら「お前は苦労を知らないボンボンだな」
と一蹴。
友人の家では、離婚、別居、失踪、夜逃げの話はごまんとありましたからね・・。
思春期にはボンボンと言われるのも、自分で思うのも嫌だったから
アウトロー気取って反抗してグレかかったこともあるけれど・・
心が荒み人の道を踏み外しそうになっても、幼少期にかわいがられたり、楽しかったりした思いでがあるだけで、「ああ、俺は本物のアウトローにはなれない」と思い諦めて(中途半端にグレるの余計かっこ悪いと)道を引き返せたのです。
今では本当に素敵な両親に育てられたボンボンで上等だと思ってます。
ん?で・・何の話だっけ・・

ああ、トーニャ。トーニャです。
と、その周りの人たち。
頑張っても頑張っても負の連鎖から抜けられない人たち・・。
ボンボンの僕にはよくわからない話なんですけど・・。
子供のころに受ける愛が大事なんじゃないかな。
という事が言いたかったわけです。
審査員の人が言ってたのもそこで・・
優れたスポーツ選手こそテクニックや結果だけじゃない、
人に愛と感動を与えられる人間性も評価の対象になるんだと。
お母さんも、決して愛はなかったわけじゃないけど
屈折していてトーニャに伝わっていなかった。
トーニャもそのせいで人を愛せない
愛してもうまく伝えられない人になってしまった。
それがまたあの夫と友人を育ててしまった。
というか引き寄せてしまったのか。


何か優れた人との出会いでもあれば・・・
一つのきっかけで好転できたかもしれないけれど・・
それもできなかった・・。
なんとも数奇な因果の呪縛に囚われてしまったトーニャの人生。
もどかしく、ほろ苦く、かける言葉も見つかりません。
最後、もともとケンカは日常茶飯事だったからと
ボクサーに転向してたくましく生きていたようで・・
それはそれで一つの希望なのかもしれないけど
そういう事じゃないと思うのよ・・トーニャ。

また余談ですが。
僕はスポーツ選手では松井秀喜が好きでした。
彼は星稜高校時代から怪物ともてはやされちょっと天狗になっていた時期があったそうです。その時、星稜高校野球部の監督に、プロスポーツ選手になるなら野球のテクニックだけじゃない、選手である前に、人としての思いやりと愛を持たなければいけないと、こんこんと諭されたのだそうです。
それ以降、ホームランを打ったり、試合に勝ったりしても、決してガッツポーズをしたり、はしゃいで踊ったりしない選手になりました。相手の選手の気持ちを思いやって、ライバルにも敬意を持つべきだという考えからです。
僕はヤンキースに行ってからの松井選手の試合はBSNHKの放送をほとんどタイムリーで見ていましたが、本当に一度もガッツポーズをしませんでした。時々、ホームランを打った時、トーリ監督に言われて渋々帽子を取ってファンにあいさつするのと、唯一、ガッツポーズをしたのがあのレッドソックスとの地区シリーズでの逆転ホームを踏んだ時でした。あれは泣いたな~。
ああいう松井選手の思いを知っていたから・・・。

どんな人間だろうと、結局、大事なのは思いですよ。
そして愛ですよ。
と、そんなことを考えさせられた作品でした。
いや~なかなかいい映画でした。

※この記事は2019年4月自身はてなブログ掲載記事に加筆修正を加えた引っ越し記事です。

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