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「吸血鬼ハンター“D”」菊地秀行

「ローラだよー」って最近やらないね。
ローラ、トリンドル、ダレノガレ、今やハーフタレントをテレビで見ない日はないだろう。
ちなみにダレノガレ、最初「誰そ彼」かと思ってて、風流な方だなぁと思ってた。

昔ハーフは「あいのこ」という別称・差別用語で呼ばれてたと聞いた。
これには島国として複数人種に慣れていない日本人特有の気質と、米軍駐留時の哀しい出来事とかが影響しているのではと、今やプラスなイメージのあるハーフ、昔はマイナス・悲哀の存在でもあったのだと。

本作の主人公で吸血鬼(バンパイア)ハンターのDは吸血鬼と人間のハーフ、ダンピールと呼ぶらしい。
吸血鬼は異性を誘惑する生態?なので、みんな見目麗しく、基本は不死。
Dもすごい美青年で、不死で身体能力が高く、そして人間と混血することで、多少の不具合はあるが昼間も歩けるというかなりチートなハンター。
このDが活躍するジュブナイル小説シリーズの1作目。

菊地秀行は毎度思うのだが、中二病な世界設定をさせたら横にでるものはいない。
本作の舞台も素晴らしいのだ。

中世ヨーロッパと思いきやそうじゃない。
過去中世ヨーロッパ時代、種としての衰退を感じた吸血鬼達は眠りにつく、そして大戦等で疲弊した人間を狙って蘇り、吸血鬼の世界を作る。
すごい科学力により近未来都市を築き、かつ郷愁ある中世ヨーロッパの街並みを再現、DNA操作技術を駆使してクリーチャーを野に放つ。
そんな吸血鬼達は再び種として衰退、反旗を翻した人間たちに駆逐された。
されたが、辺境ではまだ吸血鬼達の支配が残っているところがある。
人間を苦しめる”領主”達を退治するのが吸血鬼ハンターのお仕事なのだ。

わくわくする設定。
こんな世界で、血を吸われた村娘を救う為、Dは剣をふるうのだ。
でね、吸血鬼退治だけじゃなくて村娘の弟の仕事を手伝ったり、家をあらくれものから守ったり、用心棒ものみたいなこともしてくれるやさしい男で、すごい魅力的なのだ。

そして「あいのこ」である悲哀も描かれる。
これはアニメ映画版のセリフだが、こんなやりとりが。

「あなたはなぜハンターを」
「俺はダンピール、人間としては生きられぬ」

自信の存在に対する悲哀だ。

アニメ映画は「風立ちぬ”D”」を原作としている。

最後に1点注意、ジュブナイル小説なので控えめだが、ちょっとだけエッチなシーンが出てくるよ。

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高いのよ。

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