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オカン的な上司ポジションをつくる案

少し前に、経済誌の日経ビジネスに「リコーの山下会長「管理職は『支援職』であれ」」というタイトルの記事が載っていた。

日経ビジネスの全文は有料会員にならないと読めないので冒頭部分しか内容を確認できていないが、それによると、いまの時代の管理職は求められる役割が変わってきており、新たなスキル習得が求められる、とのことだった。

つまり、新たなスキルとは社員のキャリア形成やら多様性の尊重への支援、サポートするという内容なのだろう、と推測された。そしてこう思った。

  • これ以上、中間管理職の負担増は無理ゲーじゃない?

  • ただでさえ罰ゲームな中間管理職のなり手がいよいよ減ってしまう

  • 既存の管理職の役割とは別の上司ポジションをつくった方がいい

ワタクシ、会社員ではないフリーランス身分なので、どの口が言うのか、と自分でも思ったのだけれど、少しばかり、考えた内容をまとめてみたい。

従来の管理職は上意下達のオトン的上司

従来型のオトン的上司による組織の統率

昨今「人的資本経営」の波を受けて、心理的安全性やワークエンゲージメントの重要性が高まっている、らしい。少子高齢化と価値観の多様化が進む中、企業には人材確保のために社員のキャリア形成支援が求められている。

こういう状況下で、役割を期待されるのは現場の中間管理職(ファーストマネージャー)である。

仮に、少規模の会社で、ワンフロアに社員全員がいて毎日あいさつを交わしている状況なら、コーポレートの人事部門が役割を担っていいのだろうけれど、それなりの所帯ともなれば、中間管理職が役割を負うのが通例だろう。

単純に思うのである。「中間管理職、しんどすぎん?」と。

現状の管理職の役割をざっと挙げると以下のとおり。

  • リーダー……組織の方向性・戦略を策定して推進する

  • コーチ……自組織の社員の能力向上や課題の克服を支援する

  • コントローラー……自組織の業務が円滑に進むようにノルマの設定、リソース配分や手続きの管理・統制をおこなう

  • プレイヤー……率先垂範でノルマの一部を負い、目標達成に尽力する

上記に加えて、昨今では社員のメンタルを含めた健康管理や勤怠管理、価値観への配慮が求められる。あえて名づけるとすれば「ケアラー」だろうか。

従来型の管理職は上意下達、父権的な昭和のオトンである。「つべこべ言わずに俺について来い。数字責任などノルマの責任は管理職たる俺が負っていて、お前らは会社から俺に任された駒だ」と言っても違和感はなかった。

ただ、いまのそんな時代ではない。信頼関係が出来ていないうちにそんなことをのたまえば「うちの上司ってばパワハラ気質なんですけどー。上司ガチャだわー」と陰で言われる。最悪は人事部門に告げ口されたり、その部下が退職後に、当該上司の誹謗中傷の投書が会社に投げ込まれるかもしれない。

かといって、マネジメントスタイルを改めてオトン的な管理からオカン的な支援に変えたところで課されたノルマが減るわけでもなく、責任が軽くなろうはずもない。部下への支援を手厚くすればパフォーマンスが上がり、自部門の業績が向上する保証もない。管理職がしょいこむ責任は増える一方。

ここまで考えると、最小の組織を束ねる中間管理職が1名なのは、そもそも妥当なのか、と思い至る。家族でも父親と母親で子育てを分担しているのに会社組織では同じカタチにしたらあかんのかいな、と。

オカン的な上司ポジションをつくる案

オカン的ポジションとしての「支援職」

案は上記の図のとおり。既存の管理職とは別に、下支えする職位を設ける。便宜的に冒頭のリコーの記事にあった「支援職」の名称を用いる。

指示命令系統が複数あると混乱が生じるため、リーダーやコーチやコントローラーの役割は既存の管理職が引き続き担う。

支援職は、社員の健康管理や勤怠管理、キャリア形成について管理職や人事部などのコーポレート部門と連携しながらケアラーの役割を果たす。あれやこれやと手間を焼いてあげる、オカン的な上司ポジションである。

また、支援職のケアする範囲は社員やチームリーダーにとどまらず、管理職にも及ぶ。支援職は傾聴や共感、アサーティブコミュニケーションといったソフトスキルを身につけ、それを実践することで組織全体を支援する

なお、支援職を「オカン的」と表現したのは女性が相応しいという意味はなく、従来型の日本の家庭内分担に沿ったものに過ぎないことを断っておく。

中間管理職がさらに出世するために「支援職」経験が必須

そして、管理職がさらに上層へ出世するためには、支援職の役割を十分に果たしたと認められることを要件に含めるとよい。白魔法と黒魔法を習得すれば賢者にジョブチェンジできる、というファイナルファンタジー的なノリ。

この結果、圧倒的な数字成績によって出世したものの、社員をケアするどころかハラスメントをするモンスター管理職の台頭を止めることにも繋がる。

また、今後は経営と直結した人事戦略が会社組織の強さを左右する。支援職としての適性が高い社員が人事部門に異動することで、現場といっしょにケアや支援の施策をつくりあげ、全社に生き渡らせることもやりやすい。

人的資本経営や健康経営の推進によって人材が投資の対象と見なされる中、社員のさいしょの接点である中間管理職の在り方、役割や分担をゼロから見直すことが効果的であると思う。

以上は何の根拠も前例もエビデンスもない思いつきにすぎない。じっさい、このような役割や分担を取っている企業を見聞きしたことも無い。もし事例があればご教示いただければ幸いである。

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