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フロイトが発見したこころの自衛術「防衛機能」とは何か?

「あれが欲しい!」「でも、よく考えたら欲しくないかも」

こう自分に言い聞かせた経験はないでしょうか。

こうした心の動きを「防衛機能」と言います。

私たちの無意識に作用する心理的なメカニズムを探ってみましょう。


「このぐらいのミスなら大丈夫!」その無意識下では何が働いている?


防衛機制(defense mechanism)とは、葛藤や痛み等から心理的な安定を保つために、無意識に作用する心理的なメカニズムのことを言います。

たとえば、仕事で何かミスをしたときのことを考えてみましょう。

そのミスは全て自分の責任ではなく、一部は他の要因にも起因していたとき、皆さんは自身にこう心に言い聞かせたことはないでしょうか。

「この程度のミスなら、そこまで深刻じゃない!」「この仕事はそれほど重要ではないんだし、大丈夫だ」「そもそも丸投げした上司のせいだ」などです。

このように、嫌な出来事に対して合理的な説明を見つけ、自分を納得させようとする心の働きが「防衛機能」の代表例です。

こうした心理的なメカニズムは、著名なオーストリアの心理学者、ジークムント・フロイト(Sigmund Freud)氏によって提唱されました*1。フロイト氏は、受け入れがたい経験や感情が無意識に抑圧されている患者さんを治療する中で、こうした心の動きがあることを発見したと言われます。


代表的な「防衛機能」5選


現在、これら防衛機制にはさまざまな種類が挙げられていますが、その中で代表的な5つの種類をご紹介しましょう。

① 合理化
最もらしい理由をつけて自分を納得させようとすることです。前述の「仕事のミスの正当化」がまさにその例のひとつです。

② 投影(投射)
自分の中にある不快な感情を相手に投影し、相手が同じように感じていると錯覚することです。
たとえば「私があの人を嫌いなんじゃない!あの人が私のことを嫌っているのよ!」などです。

③ 逃避
自分自身を守ろうと、さまざまな手段を使って状況から逃げることです。
現実逃避、空想逃避、病気への逃避などのパターンが存在します。

④ 否認
「逃避」と近しいですが、「否認」というものもあります。不安やストレスの原因から目をそらし、その事実を認めようとしないことです。

⑤ 反動形成
自分の思っていることと反対の行動や態度を取ることです。
好きな相手にそっけない態度を取ってしまうのは、その代表例でしょう。

これ以外にも防衛機能の種類は数多く存在します。

抑制(不満や不安を無意識に封じ込める)、同一視(他人を真似をして自分を評価を高める)、退行(幼児期の行動や考えに戻ってしまう)、代償(叶わない欲求を他のものに置き換える)、昇華(認められない欲求を他のエネルギーに転換する)、補償(劣等感の他のもので補う)などです。

これらの防衛機能は、心の健康を維持するために有効な手段です。ただ、過度に働き過ぎると問題を引き起こすリスクも存在するため、今、自身がどんな状態にあるのかの自己認識を深めておくことが何より大事でしょう。


(参考文献)
*1 Freud, S. (1894) The Neuro-Psychoses of Defence. The Standard Edition of the Complete Psychological Works of Sigmund Freud 3:41-61

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