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歳時記を旅する49〔麗か〕中*うららけし窓で商ふ周旋屋 

佐野  聰
(平成七年作、『春日』)
 不動産仲介業者は江戸時代から存在した。土地取引には、口入業者がいて、仲間組織を通じて物件情報を流通させており、物件の形状、収益、代金を記した売主の書類を備えていたという。さながら不動産仲介業者の店頭のようである。
戦後、不動産仲介で暴利を貪る業者もいたようで、当時の新聞でも、「地方からはじめて出て来る人は、業者の選択が一番大切である。従って、その駅に降りて、まっすぐ、周旋屋にとび込まないで、付近の商人からどこの周旋屋が信用できるか聞いてのち、あたるとよい。」(「読売新聞」昭和二十八年三月十六日付)などと伝えていた。
 句は、新入社員や新入学の学生が部屋を探す季節、窓にびっしりと貼られた物件案内が、長閑に客を誘う。 

(岡田 耕)

(俳句雑誌『風友』令和六年四月号「風の軌跡ー重次俳句の系譜ー」)



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