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そのサッカーを疑え!

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#カタールW杯

30年目を迎えたJリーグのレベル。UEFAランキングに落とし込めば何番目か

30年目を迎えたJリーグのレベル。UEFAランキングに落とし込めば何番目か

 チャンピオンズリーグ(CL)は、有力選手が代表からクラブに場所を変えて臨むW杯の組替え戦だ。同様に世界一決定戦といっても言い過ぎではない。カタールW杯を間に挟んで行われる今季(2022-23シーズン)のCLは、特にその色が強い。異なるユニフォームを着て、異なる環境下でプレーする選手に対して、親近感や興味をより抱かせる。

 たとえば、先の決勝トーナメント1回戦ドルトムント対チェルシー戦で、前者の

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森保監督がカタールW杯で見落とした景色

森保監督がカタールW杯で見落とした景色

「我々を応援してくださる日本人の方々に勝利をお届けすることができて幸せです」。森保監督が勝利監督インタビューで、ほぼ毎回使用するこのフレーズに確かこの欄で2、3年前、異を唱えたことがある。

 対象をわざわざ、我々を応援してくださる人、あるいは日本人に限定しているように聞こえるこの言い回し。カタールW杯の現場でも用いられていた。その時点で応援していない人、あるいは日本人以外は対象外なのか。重箱の隅

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カタールW杯検証(終)森保監督はなぜ手を尽くさなかったのか。西野Jが積んだはずの学習効果は発揮されず

カタールW杯検証(終)森保監督はなぜ手を尽くさなかったのか。西野Jが積んだはずの学習効果は発揮されず

 以下はカタールW杯全4試合に出場した選手の出場時間だ。

1)吉田390分、2)権田390分、3)鎌田323分、4)伊東293分、5)守田285分、6)遠藤273分、7)板倉270分、8)堂安217分、9)長友211分、10)田中183分、前田183分、12)谷口180分、13)三笘162分、14)浅野162分、15)冨安157分、16)酒井120分、17)久保90分、18)相馬82分、19)山

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カタールW杯検証(3)ベスト16入りの原動力となった選手交代。森保監督はなぜその概念を変えたのか

カタールW杯検証(3)ベスト16入りの原動力となった選手交代。森保監督はなぜその概念を変えたのか

 続投が決まった森保監督。カタールW杯で驚かされたことは2点ある。前回述べたように事実上の5バックを多用したこと。そして早めの選手交代だ。

 5バックは、2019年12月に釜山で行われた東アジアE1選手権以降、封印された状態にあった。復活したのはその2年半後。今年6月に行われたキリン杯で、それ以降、本番直前のテストマッチまで数試合で使用された。しかし試合終盤の数分間に限られていたので、5バックで

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カタールW杯検証(2)森保式3バックのなぜ。守備的サッカーを筆者が嫌う一番の理由

カタールW杯検証(2)森保式3バックのなぜ。守備的サッカーを筆者が嫌う一番の理由

 敵を欺くにはまず味方からという諺があるが、カタールW杯に臨んだ森保監督がそれだった。4-2-3-1メインだった布陣を一転、5バックになりやすい3バックで長い時間、戦った。ドイツ戦、コスタリカ戦は試合の途中から。スペイン戦、コスタリカ戦では最初から使用した。使用時間の割合は25対75ぐらいの関係にあった。

 サンフレッチェ広島時代がそうだったように、森保監督はもともと5バック(よく言えば3バック

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カタールW杯検証(1)日本がベスト16入りと引き替えに喪失したもの。哲学、コンセプトは誰が決める

カタールW杯検証(1)日本がベスト16入りと引き替えに喪失したもの。哲学、コンセプトは誰が決める

 カタールW杯を戦った日本代表。抵抗を覚えるのは、森保一監督が従来とは大きく異なる方法論で戦ったことだ。厳しいグループを勝ち抜き、ベスト16に進出した。目標のベスト8には届かなかったが、悪い成績ではなかった。前評判を覆す健闘である。しかし監督の評価を、すべて結果に委ねるのはサッカー的ではない。

 結果に及ぼす運の割合が3割を占めるなど、サッカーが不確定要素の上に成り立つ競技であることは、今大会で

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日本の甘い歓迎ムードに浸る森保監督。続投の意思があるなら「本当のW杯」を現地でナマで観戦すべきである

日本の甘い歓迎ムードに浸る森保監督。続投の意思があるなら「本当のW杯」を現地でナマで観戦すべきである

 W杯はベスト16、決勝トーナメント1回戦からが「本当のW杯」だと言われる。筆者が初めて出かけた1982年スペイン大会は、本大会出場チームそのものが16だった。1986年メキシコ大会、1990年イタリア大会、1994年アメリカ大会が24チームで、現行の32チームになったのは1998年フランス大会から。かつてを知る筆者のような取材者が、どや顔で口にしがちな言い回しである。出場チーム増の恩恵がなければ

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森保ジャパン。ターンオーバーの結果、使えない選手が増えた皮肉

森保ジャパン。ターンオーバーの結果、使えない選手が増えた皮肉

 絶対に負けられない戦いとなったスペインとの大一番を前に、使えそうもない選手が目立っている。遠藤航はコスタリカ戦で痛めた膝の具合が思わしくなく、欠場は濃厚だと言われる。コスタリカ戦を怪我で休んだ冨安健洋、酒井宏樹も同様だ。いずれもスタメンクラス。日本には痛い話だ。

 不慮の事故だとは思えない。酒井は昨年6月、マルセイユから浦和レッズへ移籍してからというもの、本調子にはほど遠いプレーを続けてきた。

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カタールW杯展望その2。3バックのシェア率が増した理由とその長所と短所

カタールW杯展望その2。3バックのシェア率が増した理由とその長所と短所

 カタールW杯の見どころ、その2。

 前回の後半部で触れたセルビアは3バックで戦うチームだ。ドゥシャン・タディッチを2トップ下に据えた3-4-1-2。監督のストイコビッチは名古屋グランパスの監督時代を含め4バックを基本にしていたが、昨年、セルビア代表監督に就任すると、けっして攻撃的とは言えない3バックで戦っている。

 こうした4バックから3バックへ移行するケースは近年増している。昨年開催された

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カタールW杯展望その1。本命ブラジル対抗アルゼンチンというブックメーカーの予想に懐疑的になる理由

カタールW杯展望その1。本命ブラジル対抗アルゼンチンというブックメーカーの予想に懐疑的になる理由

1)ブラジル5倍、2)アルゼンチン6.5倍、3)フランス7.5倍、4)イングランド8倍、5)スペイン9倍、6)ドイツ11倍、7)ポルトガル13倍、8)オランダ15倍、9)ベルギー17倍、10)デンマーク29倍

 上記は、英国ブックメーカー最大手であるウィリアムヒル社が設定したカタールW杯の優勝予想オッズのトップ10だ(11月16日現在)。本命ブラジル、対抗アルゼンチン。どのブックメーカーを見ても

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大迫は不合格で長友、柴崎は合格のなぜ。チャンピオンズリーガーへのリスペクトにも欠けた

大迫は不合格で長友、柴崎は合格のなぜ。チャンピオンズリーガーへのリスペクトにも欠けた

「非情なことをした」。ドーハ入りした森保監督は、現地で行われた囲み取材でそう述べたという。それがそのままネットニュースの見出しになっていたが、定員がある以上、誰かを加えれば誰かが落ちるのは当然。入り口と出口、門戸が常時、開いた状態にあるのが代表チームの姿である。

 そして代表監督は選手を取捨選択する一番の責任者だ。指導する期間の短さはクラブ監督の比ではない。代表監督は、指導より選択に重きが置かれ

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W杯は自国の勝利だけを願う場所ではない。日本のファンはサッカーの面白さを堪能することができるか

W杯は自国の勝利だけを願う場所ではない。日本のファンはサッカーの面白さを堪能することができるか

 前節、川崎フロンターレが終盤、VAR判定の末、ゲットしたPKを決め、勝利したことで、横浜F・マリノスとの間で繰り広げられている今季のJリーグの優勝争いは、最終節まで持ち越されることになった。

 横浜FMか川崎か。この2チームが優勝争いをする展開は、日本サッカー界にとって喜ばしい話である。何といっても、ともにパッと見、攻撃的で面白いサッカーをするチームだからだ。

 川崎は前任の風間監督時代から

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W杯に臨む森保Jが、中継ぎを惜しげもなくつぎ込む日本シリーズから学ぶこと

W杯に臨む森保Jが、中継ぎを惜しげもなくつぎ込む日本シリーズから学ぶこと

 前回のロシアW杯で、グループリーグの3試合と決勝トーナメント1回戦の計4試合を戦った日本。初戦のコロンビア戦と2戦目のセネガル戦の間隔だけが中4日で、残る2試合は中3日での戦いだった。それが今回のカタールW杯では、少なくともグループリーグの3試合はすべて中3日で行われる。

 西野監督はその1戦目と2戦目を同じスタメンで戦い、3戦目(ポーランド戦)はスタメンを大改造して臨むことになった。1戦目と

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苦戦のメカニズムとは。最近の2大番狂わせ、横浜FM対磐田、広島対甲府から森保Jが学ぶこと

苦戦のメカニズムとは。最近の2大番狂わせ、横浜FM対磐田、広島対甲府から森保Jが学ぶこと

 サンフレッチェ広島がヴァンフォーレ甲府に延長PKで敗れた天皇杯決勝。そして、首位を行く横浜F・マリノスが最下位のジュビロ磐田に0-1で敗れたJリーグ32節の一戦と、ここ最近、国内では大きな番狂わせが相次いで発生した。

 サッカーは結果に運が3割影響を及ぼすと言われるが、広島と横浜FMは運に恵まれなかったと言うより、攻めあぐんだ印象が勝る。惜しいチャンスはそれなりにあったが、いわゆる決定的なチャ

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