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地元を離れることにした日

 皆さんは、地元を離れたことはあるだろうか。幼い頃からあちこちに行っている人もいれば、地元ですっと暮らしてきた人もいることだろう。

私は過去に一度、仕事の都合で地元の仙台を離れ、埼玉の川口で暮らしたことがある。
私の仕事は、基本的に決められた自治体やエリア内での異動はあっても、県外へ異動することはない。つまり、転職でもしない限り、一生宮城県を出ることがないのだ。

私は人生で一度で良いから、都会に揉まれて生活するということにチャレンジしてみたかった。地元は大好きなのだが、見ず知らずの土地で人間関係も仕事もゼロの状態でスタートを切りたい、そんな思いがあったのだ。
もしかしたら、どこかで「上京物語」のようなものを演じてみたい自分もいたのかもしれない。そしてまだ、ミュージシャンとして生計を立ててみたいという思いが心の片隅にあった。関東に行けば、何とかチャンスはあるかもしれない! そんなことを思った。

しかしながら、東京で社会人をスタートすることには抵抗があったため、隣の埼玉県の就職試験を受け、何とか合格することができた。
それから、大学院を修了するまでの1年半は自分でも驚くほどあっという間に過ぎた。研究も頑張りつつ、思い出づくりにとにかく遊びまくった。
大学院を修了の1ヶ月前くらいには、西川口で月6万円のアパートを見つけ、入居が、決まった。

そして卒業式の日、私は仙台を出ることを決めたのだった。
2年間切磋琢磨した仲間たちは、式を終えると、そのまま国分町へ繰り出すという。
私は一人、ギターやスーツケースを抱えて反対方向の地下鉄に乗車し、仙台駅を目指した。

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