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GRAPEVINEが教えてくれた オトナの味

今年の4月、私は妻と初めてアラバキロックフェスに参戦した。以前から興味はあったものの、車を持っていなかったことや、何やかんや予定が入ってしまっていたことなどから、なかなか参戦することが出来なかった。
しかし、仙台に戻ってきたのと同時に車を購入したため、もうどこにでも行くことができる!私は、2日分の駐車券がついたチケットを購入した。

フェス初日当日、朝6時の国道286号線を妻と2人で進んでいた。途中までは快適に進んでいたものの、会場が近づくに連れて、進みがゆっくりになってきてしまった。駐車場にどうにかたどり着き、そこからシャトルバスを使って会場についたのは、開演ギリギリの時刻だった。最初に見ることにしたのはGRAPEVINE。サークルの友達などが好きでよく名前を口にしていたからだ。しかし、私はどんなバンドだか良く知らない。そんなバンドを色々とバイキングのように楽しめるのもフェスの魅力だ。
人の流れに沿って、奥の方にあるステージまで向かうと、すでにバンドのメンバーがステージに上っていた。赤いテレキャスターを持った爽やかな人がこのバンドのボーカルらしい。(後に田中さんだと分かった)

さあ、アラバキのトップバッター、どんな爆音が聴けるのか!?固唾を呑んで最初の音を待った。

すると、イントロはドラムのハイハットでもなければ轟音のギターでもない。ブルージーな管楽器のキーボードから始まった。そして続くはボーカルの艶めかしい歌声
「愛の〜歌はどの〜くら〜い」

ミドルテンポのメロディーをバンドが刻み始めた。そしてお客さんたちも音の波に乗るように左右に肩を揺らし始めた。ゆったりと会場が音楽の魔法に包まれていくようだった。

数曲終えた後、MCでボーカルの田中さんが発した第一声は、
「目ぇ覚めた?」
だった。

私は、なるほど〜と唸るような気持ちだった。
これまで私が見てきたバンドの多くは、1曲目といえば会場が縦ノリで盛り上がるような縦ノリのブチ上げソングを持ってくることが多かった。それに倣い、私も1曲目は勢いに任せて激しい曲を演奏することが多かった。

しかし、GRAPEVINEは、音楽の波で徐々に会場を温めていくようなステージをしていた。
東北の春は寒い。そして朝早いからまだ目が覚めきってないお客さんだって多いはずである。だからこそ、「少しずつ温めていく」ぐらいが丁度良いのである。
GRAPEVINEが作っていた空気は、私の知らないオトナの味だった。それでいてやみつきになる味だ。翌日辺りから、カーステレオでGRAPEVINEを聴くようになっていた。
いつか私もあのようなライブができる日が来るだろうか。


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